初代『ウルトラマン』(1966~1967)の放送以降、国民的な人気を誇るウルトラマンシリーズ。その最新作『ウルトラマンデッカー』が話題だ。8月8日に発売された「週刊プレイボーイ」34・35合併号では「ウルトラマンヒロイン大集合!」と題し、歴代のウルトラマン美女たちが登場した。最新水着グラビアだけでなくインタビューなども収録し、それぞれがシリーズへの愛を披露してくれている。

その特集より、歴代ヒロイン4名のインタビューを、4日間連続で週プレNEWSにて再掲載。その2回目は『ウルトラマンマックス』(2005~06年)でコイシカワ・ミズキ役を演じた長谷部瞳さんが登場。コイシカワ・ミズキは、対怪獣防衛チームDASHのエースパイロット。強い使命感を抱き、前線へ飛び出す男勝りな性格を持つ。主人公のトウマ・カイトに仲間を超えた異性として次第に思いを寄せていく。作品について、出演時の心境、そしてウルトラマンシリーズの魅力を語る。

長谷部瞳さんが演じたコイシカワ・ミズキ

――『ウルトラマンマックス』にはどんな経緯で出演が決まったのでしょう?

長谷部 オーディションです。当時、いろいろなものを受けていて、その中でご縁がありました。覚えているのは多数いる候補者をグループに分けて審査する形式だったこと。ひとつのグループに女のコが5人いて、関係者30人くらいを前にお芝居するんですけど、緊張しちゃって。でもその日、結膜炎でコンタクトレンズを外していたんです。そのおかげで周囲が見えず、堂々とお芝居できました(笑)。

――コイシカワ・ミズキ隊員はDASHのエースパイロット。男勝りな性格の女性ですが、長谷部さんご自身と似ています?

長谷部 ミズキは何事に対しても自ら先陣を切っていくタイプですけど、私はついていくタイプ。真逆の女性ですね。

――では役作りの面で苦労されたのでは?

長谷部 いえいえ。『マックス』は私にとって初のシリーズドラマ。すべてが未知の世界で、苦労を感じる余裕はなかったです。特にメイン監督・八木毅さんが「役を作り上げるのは役者さんだから」との方針で、経歴以外の細かな設定はなかったんです。なので、とにかく台本を読み倒して、「気が強そう」とか「プライドが高い」とか彼女のイメージを膨らませて手探りで作っていきました。あとは、DASHメンバーとの関係の中で作り上げていった感じです。中でもヒジカタ隊長役の宍戸開さんの言葉は大きかったです。

――どんな言葉でした?

長谷部 『マックス』にはいろんな監督さんが参加し、それぞれ演出なさっているのですが、「役を一本の線でつなげるのは自分たちだ」って。シリーズを通して人間として成長させ、その役を守る責任は自分たちにあると。それを心に留めていたので、ブレることなく演じられました。

――撮影で一番の思い出は?

長谷部 やっぱりアクションシーンですね。私は大の運動音痴なんですよ(笑)。なので、相手からの攻撃を避け、前転して銃を撃つ動作などキレイにできなくて。あと、戦闘機を操縦するシーンもひと苦労でした。コクピットに入り、助監督さんが手に持ったミニチュアを目で追いながら操縦桿を(そうじゅうかん)動かし、全身でお芝居をする。それが難しくて。体の動きだけでなく、想像力が存分に鍛えられました。

――ウルトラマンは一年間のシリーズ。かなりハードだったのでは?

長谷部 思っていた以上に大変でした。何より撮影中に新しい台本が届くので、並行してお芝居を考えきゃいけない。それが大変で。特にコメディタッチなものにシリアスなものなど、作風の違うものがあると、パニックになりました(笑)。

――監督からの厳しい指導はありました?

長谷部 ありました。結構、怒られましたね。ワンカット撮った後、モニターのそばに座らされて「お前、どう思う?」とか。悔しくて泣いたこともかなりあります。

――え? そんなに!? 初耳です。

長谷部 特にミズキはエースパイロットだから堂々としていなきゃいけないのに、自分がNGを重ねることで、ミズキの表情にまで不安が浮かんだり、自信なさそうに見せてしまった時はよく言われました。でも基本的にはお芝居を楽しんでいましたよ。たとえヘコんでも、DASHのみんなが元気づけてくれたし、あと純粋に台本が面白いので。次はどんな怪獣が登場するのかなとか予想のつかない展開も多く、ワクワクしました。

――ファンの声も気になりました?

長谷部 すごく気になりました。いまだから明かしますけど、まだ今のようにSNSが普及していなかった当時、2ちゃんねるの実況chをオンエア時にテレビと一緒に眺めていました。それで「ミズキ、演技ヘタ!」とか書かれていると「今にみてろ!」って発奮したり(笑)。いつもファンの方からは力をいただいてました。

――特に印象的だったエピソードはありますか?

長谷部 それ、よく聞かれるんですけど、なかなか選べないんです。色鉛筆みたく、各エピソードに色があるので。強いて言えば、第8話の「DASH壊滅!?」です。基地内に怪獣が潜入し、ビームで隊員が次々倒されていく話なんですけど、初めて隊員全員で一話を演じきったんです。撮影前には、それぞれこういうことを意識して役作りをしているんだってことをディスカッションして。「みんなこれだけ頑張ってるんだから絶対、大丈夫!」って安心感と一体感が生まれ、いい作品になると確信しましたね。

――『マックス』は、最終話で主人公・カイトとミズキが結婚したことが描かれています。本編ではオフの時にデートをするなど、二人がお互いに心を寄せていくシーンも随所にあり、二人のラブストーリーとしても見ることができます。これは最初から想定されていたんでしょうか?

長谷部 いえ、なかったです。自分でもまさかカイトと結ばれるだなんて想像もしていなくて(笑)。ただ八木監督からは割と早い時点で「『マックス』は"ボーイミーツガール"なんだよ」と言われていたので、ストーリーが進行するにつれ、二人の絆が深まっていくのかなとは思っていました。

――そこで徐々にカイトへの思いを作り込んでいったと。

長谷部 それこそ開さんが言うように、彼女の人生は一本で繋がっているんです。実際、カイトもミズキも「いかに敵を倒すか」と自分のことしか考えていないところから始まり、お互いのために何かしたいという気持ちが沸いて、最終話では死が間近に迫る状況で改めて大切な存在だったことに気づき、相手を守りたいと思う。それに沿って、演じていきました。

――それは長谷部さん自信の成長でもあったわけですよね。泣くほどに怒られていた長谷部さんが、ドラマの終盤には男女の機微を表現できるようになっていったわけで。

長谷部 そうなっていればいいですね(笑)。言ってみれば、ウルトラシリーズは登場人物全員に人間味があるから面白いと思うんです。ただ怪獣を倒すだけの話じゃない。その意味では気持ちを常に大事にしていました。カイトへの思いもそうだし、地球を守れず苦しむミズキの葛藤もそう。特に後者は芝居に悩む自分の葛藤とうまくシンクロし、満足のいく芝居ができた時は大きな手応えを感じました。

――なお長谷部さんはマックス終了後、『ウルトラマンジード』(2017)に出演。ウルトラマンゼロ・伊賀栗レイトの愛しい妻・ルミナ役を演じました。

長谷部 ウルトラマンシリーズで、自分はミズキだって意識が強かったので、最初はお断りするつもりでいたんです。でもシリーズ内で別の役をやっている方はいますし、自分でないとできないこともあるのかなと思って。結果的にお引き受けしましたが、よかったです!

――それはどの辺りが?

長谷部 「お帰り!」って言われている感じがしたんです。ファンの方から「嬉しい」って熱いメッセージをいただいたり、現場でも『マックス』の時、サード(助監督)だった方が監督になっていたり。あと『ジード』をきっかけに『マックス』を観ますって方もたくさんいました。『マックス』の頃はファンの方の反応に一喜一憂してたんですけど、すべてが温かい感じがしたんですよね。

――最後に『マックス』に出た後、自分の周りが大きく変わったなと感じたことは?

長谷部 いろんな現場に行くようになりましたし、お芝居もそうだし、変わったことばかりなんですけど、だからこそ変わらないでいようと思っていたんです。

――変わらないでいようと?

長谷部 はい。『マックス』が私の原点なんだと思うんです。あの時のフレッシュな気持ちを忘れないようにしようって。私は一生、ミズキでいられたらなと思います。

(©円谷プロ)

●長谷部 瞳(はせべ・ひとみ)
1985年4月27日生まれ 神奈川県出身 身長168cm 
○2001年に芸能界デビュー。2017年に『ウルトラマンジード』にレギュラー出演し、ファンを歓喜させた。現在はカウンセラーとしても活動。