『幽☆遊☆白書』はもちろん、全冨樫作品を愛する野田クリスタル。『HUNTER×HUNTER』の連載が再開されると、ラジオではその話題で持ちきりに 『幽☆遊☆白書』はもちろん、全冨樫作品を愛する野田クリスタル。『HUNTER×HUNTER』の連載が再開されると、ラジオではその話題で持ちきりに

あの『幽☆遊☆白書』が、Netflixで2023年12月14日から実写ドラマになって帰ってくる! 大興奮のインタビュー前編に引き続き、冨樫義博作品をこよなく愛するマヂカルラブリーの野田クリスタルに、実写ドラマの第1話を先行視聴した感想や『幽白』との出会いについても語っていただく。

***

飛影は? 蔵馬は? 戸愚呂兄弟はどうなる!?

飛影(本郷奏多) 飛影(本郷奏多)

――1話から飛影(本郷奏多)と蔵馬(志尊淳)の姿も出てきました。

野田 飛影と蔵馬とあの鬼(剛鬼)が雑魚相手に戦ってましたけど、早くあの戦いをもっと見たいな~。僕は実写映画版の『るろうに剣心』が好きなんですけど、飛影のアクションとか描写は『るろ剣』に通ずる部分があるんじゃないかと思いましたね。それくらいめちゃくちゃカッコよかった。

――今回『幽☆遊☆白書』でアクション監督を務めた大内貴仁さんは、映画『るろうに剣心』シリーズで殺陣を考案されたスタッフでもあります。

野田 そうなんですよね。どうりで飛影が超強そうなわけですよ。めっちゃ速くて、めっちゃカッコよくて。

そして蔵馬は志尊淳さんが演じてて、それだけでもうすでにカッコよかったですけど、妖狐になったらどうなるのか。それも早く見たいですね。きっと女子歓喜ですよ。蔵馬の、本気出したら超怖いヤツっていう独特の雰囲気がたまらないですよね。あのふたりが最初は幽助たちの敵として立ちはだかるわけですからね。今後の展開を知っていても、どうなるのか気になりますね。

蔵馬(志尊淳) 蔵馬(志尊淳)

――そして1話では登場していませんが、すでに公開済みの予告編では梶芽衣子さん演じる幻海の登場も話題になりました。

野田 相当話題になってましたね。幻海の弟子試験もやるのかな、やるのか(笑)。飛影・蔵馬・あとあの鬼(剛鬼)との3つの秘宝を巡る戦いがあって、幻海の弟子試験があって。予告編の時点で戸愚呂兄弟まで出てきたから、「ストーリーをどこまでやるんだろう」というのもめちゃくちゃ気になってますね。

戸愚呂兄弟(兄・滝藤賢一/弟・綾野剛)はどう表現されるんだろう。特に兄の方は絶対CG使わないと表現できないじゃないですか。しかも滝藤賢一さんですよ。剣になったり盾になったりする滝藤さん、全く想像できないな(笑)。弟も一撃で闘技場に穴が開くような強さですからね。1話目からアクションがすごすぎたので、今後がどうなるのか心配になるぐらいでした。

幻海(梶芽衣子) 幻海(梶芽衣子)

戸愚呂弟(綾野剛) 戸愚呂弟(綾野剛)

戸愚呂兄(滝藤賢一) 戸愚呂兄(滝藤賢一)


『幽☆遊☆白書』の斬新さ

――『幽☆遊☆白書』という作品自体についてもお話を伺いたいのですが、野田さんにとって『幽白』の一番重要な要素ってなんだと思いますか?

野田 『幽白』って、まず事件のデカさとか敵キャラの強さが最初に出てきて、その敵たちも毎回魅力的なキャラがいっぱい出てきますよね。そしてその事件や敵を幽助たちが超えていく。この軸さえきちんとブレていなければ、実写化するにあたってどうアレンジされていても僕はいいと思うんです。と同時に、その王道の構図を実写でどう描くのか、そこが一番期待しているところでもありますよね。

今後の展開も知ってはいますけど、実写化するにあたって「どこを取るか」「どこを捨てるか」っていうのが1話目からすごく考えられて作られたということが伝わってきたので、いったん僕は制作陣を全部信用してみようかなと思いました。だって「あれ?」とか思うところが1個もなかったから。僕もかなり『幽白』は読みましたけど、その100倍読んで作られてる感じはしたので。

――野田さんが原作を読んでいた当時の作品に対する印象は?

野田 3~4つ上の兄貴が持ってた単行本を読んだのが最初でしたけど、これぞジャンプの王道作品だと思いましたね。最初の出会いが『てんで性悪キューピッド』だったらマズかったでしょうけど(笑)。

ジャンプの王道といえば、例えば『ドラゴンボール』とか『るろうに剣心』とかもそうですけど、そういったもののひとつが『幽白』で、アニメ、ゲーム、おもちゃ、いろんなところに『幽白』が紛れていました。だからひとつの作品というよりも、子供の頃から気付いたら周りにあった『アンパンマン』とか『ドラえもん』のように、周囲にあふれているもののひとつという感じでした。文房具とかもあったし、ゲーム(スーパーファミコン)はめちゃくちゃハマりましたね。

霊丸やショットガンのポーズも流行ったし、「100%中の100%」とか、「邪王炎殺黒龍波」をトイレットペーパーでやったりとかもしてました(笑)。

実写ドラマ『幽☆遊☆白書』メイキング写真 実写ドラマ『幽☆遊☆白書』メイキング写真

――(笑)。幼いながらも「王道さ」は感じていたんですね。

野田 そうですね。修行して強くなる。仲間が死んで、ブチ切れて、真の力を発揮する。今だと当たり前になりすぎてるかもしれないですけど、これが「ザ・ジャンプマンガ」なんですよ。真っすぐ「ジャンプ」らしくあるから、ガッカリしないし、読んでいて熱が冷めない。主人公はいつだって最強だし、でもそんな主人公が負けそうになるくらい強いライバルが出てきて。

そして本当に悪いやつは100%悪役で、ちゃんとやられる。まあ垂金権造ははたしてそんなに悪かったのか?っていうくらいの雑な殺され方をしますけど(笑)。

ただ、『幽☆遊☆白書』という大きいストーリーの中でも、序盤、中盤、終盤でだいぶ話の内容は変わりますよね。前半は1話完結の推理探偵モノで、中盤からはバトル路線が始まり、さっきも言った「ザ・ジャンプマンガ」になっていく。でも、後半からはただ強い者が勝つわけではなく、「『あつい』って言っちゃダメ」ゲーム(海藤優の能力「禁句(タブー)」)のように能力の要素が入ってくるわけです。あそこは今みなさんが知ってる『HUNTER×HUNTER』の冨樫先生に近付いてきた感がありますよね。

でも、最終盤の魔界編は冨樫先生の良さ丸出しというか、「ジャンプマンガ」を超えて「冨樫マンガ」になっていくんです。僕はあの冨樫先生色が色濃く出ている魔界編が特に好きなんですけど、そういう意味で『幽白』は冨樫先生の作風の変遷が見えるから全編好きですし、先生の作品の中でも特に重要な作品だと思いますね。


浦飯幽助の魅力

――当時も不良が主人公のマンガはあったと思いますが、幽助は「不良なのにいいやつ」の中でも独特の性格を持っていますよね。

野田 そもそも幽助はいいやつなのかな?と思いますよ(笑)。たぶん幽助は、気に食わないやつらを殴ってるだけで、その気に食わないやつらがたまたま悪いやつだったっていうだけなんですよね。弱いやつを助けたいとかそんなことよりも、腹が立つから殴る。あんまり複雑なことは考えてないんですよ。それくらい真っすぐなやつだと思います。

それの最たる例が「右ストレートでぶっとばす」っていう名シーンですよね。頭の中を読まれても勝てる。それくらい何も考えてない、そこが幽助の魅力なんだと思います。

だから今回実写ドラマで北村匠海さんが演じる幽助を観ていて、あんなやつリアルにいたら、何しでかすか分からないし超怖いなって実感がありました(笑)。でも、結果的にこの世界をいい方向に持っていく、そういう星のもとに生まれたというか、そういう天才なんでしょうね。

原作で一番好きなエピソードは、だいぶ後半になりますけど、幽助が魔界トーナメントを開催しますよね。あそこで小難しい政治的な話とかパワーバランスとか抜きに、幽助はただナンバーワンを決めようとする。それで結果的に魔界も変えてしまうという、あのキャラクター性が幽助であり、ジャンプの王道たるゆえんだなと思うんですよね。

それと、『幽白』は幽助以外にもとにかくキャラがカッコいい。冨樫先生は男性だけじゃなく女性も好きになるようなキャラを描くし、すごく器用だなと思います。バトルマンガで熱い展開をするのに、蔵馬とか飛影みたいなキャラをカッコよく描けるっていう漫画家の先生はあまりいないですよね。逆に戸愚呂弟みたいなキャラもむちゃくちゃな強さも描けるし。戸愚呂チームの初登場シーンなんてゾクゾクしませんでした?

――しましたしました。今回の実写版でも登場が予告されている、戸愚呂兄弟に鴉(からす)と武威(ぶい)ですね。

鴉

武威 武威

野田 「何あの鎧つけたヤツとマスクのヤツ!?」って。しかもその強さの表現の仕方がすごくて、妖狐に戻った蔵馬が鴉に対して「支配者級(クエストクラス)にあえたのはうれしいが...」って言うんですよ。その一言だけで「あ、鴉って支配者級の強さだったんだ......」「戸愚呂チームって一人一人がラスボスクラスの強さなのか......」って分かる。しかも、どこかで戸愚呂VS鴉の戦いもあったんだろうな、とか妄想が膨らむじゃないですか。実はアニメでは描かれてたんですけど。たったひとつの「支配者級(クエストクラス)」っていう言葉だけで、これだけイメージが膨らむっていうのが、冨樫先生のすごいところですよね。

それでいて武威はあっさりやられるんだもんな(笑)。で、勝った飛影が寝ちゃうんですけど、子供のような寝顔のかわいらしさに女子が心をつかまれちゃうんですよね(笑)。その辺も、今回実写ドラマでどう描かれるのかすごく気になりますね。

『幽白』愛がありすぎて話が止まらない野田クリスタル 『幽白』愛がありすぎて話が止まらない野田クリスタル


お笑いやゲーム制作に与えた影響

――野田さんはお笑いの他にゲーム制作にも力を入れていますが、冨樫作品から受けた影響ってありますか?

野田 さっき言った「禁句(タブー)」とか、『HUNTER×HUNTER』の「グリードアイランド」とかもそうですけど、冨樫先生ってたぶんゲームがめちゃくちゃ好きな人ですよね。マンガでは使われないルールや裏設定まで考えている。そういう細かいところまでずっと妄想をしてる方なんだろうなと思っていて、そういうところは影響を受けていると思いますね。土台とか世界観を徹底的に作り上げて、「もうここに入っちゃってください」みたいに読者を引き込む。ああいうところはお笑いにおいてもゲーム制作においても憧れますね。

週刊連載をされていた時は、それこそ読者アンケートとか編集者の意見に時には振り回されそうなこともあったと思うんです。でも、見えない設定だろうがちょっとした脇役の過去だろうが、いろんな細部まできちんと組み立てているから、ストーリーの軸がブレないと思うんですよね。

それから、何事においてもカロリーを使うということはすごく大事だと思っていて、僕も常にカロリーを使うことを考えています。やっぱりね、何でもその場限りでやり過ごそうとするとお客さんに見えてしまうんですよ。熱量があることをさらっとやる。僕もそうありたいと思ってますね。

――今回、実写版『幽☆遊☆白書』が全世界で同時配信されるわけですが、日本以外のみなさんにも『幽白』は受け入れてもらえそうでしょうか?

野田 日本の、それも一昔前の不良文化が全盛の時代で、かつ妖怪や霊界が出てくるわけで、どうなんだろう......と思うところもありますけど、お化けでも悪魔でもない妖怪の怖さとかって観ていて楽しいものでもあるじゃないですか。それに、今回第1話を観てアクションやバトルは素晴らしい出来だったし、それぞれのキャラのカッコよさはすでに世界で通用しているから言わずもがなだと思うんです。だから文化圏の違いはあっても、この面白さは意外と伝わりやすいんじゃないかなと思いますね。

――原作とは異なる設定もあって、実写ドラマ化となると必ず賛否どちらの意見も起こりますが、総じて野田さん的にはいかがでしたでしょうか?

野田 実写化に対して嫌悪感を抱く人がいるのも分かります。やっぱりこれまでの蓄積があって、「あー、こうなっちゃたか......」って思う作品もありましたよね。でも、僕はここ最近の実写化はどれもすごいところまで来ていると思うし、特に今回の『幽☆遊☆白書』に関しては、原作の設定を超えるような、さすがにここまでやられちゃうと認めざるを得ないというクオリティーまで仕上がっていると思います。

だから、むしろこれからのマンガはみんなが「実写化してほしい」って望むような時代になるんじゃないかって思うくらいですね。「あの作品も実写化できるんじゃね?」「これも実写で観たくね?」みたいに、マンガを実写化すること自体に夢がある。『幽☆遊☆白書』はそんな作品の1作目になったんじゃないかなと思いますね。

実写ドラマ『幽☆遊☆白書』メイキング写真 実写ドラマ『幽☆遊☆白書』メイキング写真

***

■野田クリスタル(のだ・クリスタル)
お笑いコンビ・マヂカルラブリーのボケ担当。コンビでは「M-1グランプリ2020」チャンピオン。個人では「R-1ぐらんぷり2020」チャンピオン。お笑いのほか筋トレやゲーム制作にも力を入れている。ラジオやYouTube、書籍では『HUNTER×HUNTER』をはじめとする冨樫義博作品への愛をたびたび発言している。

■Netflixシリーズ「幽☆遊☆白書」 
原作:冨樫義博「幽☆遊☆白書」(ジャンプ・コミックス刊) 
出演:北村匠海、志尊淳、本郷奏多、上杉柊平、
白石聖、古川琴音、見上愛、清水尋也、
町田啓太、梶芽衣子、滝藤賢一、
稲垣吾郎、綾野 剛 

監督:月川翔 
脚本:三嶋龍朗 
VFXスーパーバイザー:坂口亮(Scanline VFX) 
エグゼクティブ・プロデューサー:坂本和隆(Netflix) 
プロデューサー:森井輝 
制作協力:THE SEVEN 
制作プロダクション:ROBOT 
企画・製作:Netflix配信:12月14日(木)よりNetflixにて世界独占配信 

©Y.T.90-94

酒井優考

酒井優考さかい・まさたか

週刊少年ジャンプのライター、音楽ナタリーの記者、タワーレコード「bounce」「TOWER PLUS」「Mikiki」の編集者などを経て、現在はフリーのライター・編集者。

酒井優考の記事一覧