「『今はやっているおいしさ』の最大公約数を 見つけるには、チェーン店に行くのが一番」と語るリュウジ 「『今はやっているおいしさ』の最大公約数を 見つけるには、チェーン店に行くのが一番」と語るリュウジ

ひろゆきがゲストとディープ討論する『週刊プレイボーイ』の連載「この件について」。料理研究家のリュウジさんを迎えての3回目は、先週の話の流れから、「サイゼリヤ」はなぜおいしいのか?という話に始まり、ミシュランの星獲得店でオススメの店についてや、ファストフード店についても語っていただきます。


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ひろゆき(以下、ひろ) 前回の対談では「きちんと稼げて、ちゃんと手の込んだ飲食店をやるなら『フレンチ、イタリアン、サイゼリヤ』という3択になってしまう」というオチで終わりました(笑)。

リュウジ(以下、リュウ) サイゼリヤは「初デートでありか? なしか?」みたいな論争にされがちですけど、こだわりはハンパないですよ。

ひろ 安さのせいで不当に扱われている感がありますよね。

リュウ プロシュート(豚もも肉のハム)は本場イタリア・パルマ産を使っていますし、切りたての香りを損なわない工夫をしている。あと、ティラミスはイタリアから直輸入していますからね。

ひろ あ、そうなんですね。

リュウ 僕は「イタリアの有名なホテルで、本場のティラミスの作り方を習う」というツアーに参加したことがあるんですけど、僕が習った味とサイゼリヤのティラミスの味が一緒なんです。

ひろ 知り合いのイタリア人が「日本で一番うまいエスカルゴを出す店はサイゼリヤだ」と言うんですよ。普通のイタリアンレストランではエスカルゴはあまり注文されない。そこで廃棄リスクが少ない缶詰ものを使いがちなんです。でも、サイゼリアは自社生産ものを使っているようです。だから、ヘタなイタリアンレストランよりもおいしいらしいです。

リュウ あとはワインのラインナップもいいですよね。僕が好きな『ランブルスコ』(微発泡ワイン)も置いているんですよ。

ひろ シャンパンより安いですし、おいしいですよね。

リュウ ランブルスコは「生ハムを食べるためのワイン」といわれているんですよ。ランブルスコのロゼを飲むと、まるで本場にいるような気分に浸れます。

ひろ サイゼリヤはコスパが最強レベルですが、逆にミシュランの星を獲得しているようなめちゃくちゃ高い店だと、どの店がオススメですか?

リュウ やはり『ガストロノミー 〝ジョエル・ロブション〟』(東京・恵比寿)ですかね。超王道中の王道ですけど。

ひろ 『ミシュランガイド東京』で17年連続三つ星獲得。『食べログ』の点数も4・31と高評価の言わずと知れた名店ですよね。

リュウ 僕はひねくれた人間なので、基本的に王道は嫌いなんです。でも、こういう仕事をしているからには最高峰を味わっておかなければいけない。そして、あわよくば最高峰の名店のアラを探そうとしたんです。でも、アラがひとつもなかった。「ぐうの音も出ません! 本当にすみませんでした!」と心の中でずっと土下座しながら食べてましたよ(笑)。

ひろ ロブションってクロウトも唸らせちゃうんですね。日本のロブションって、宅配ピザの「ピザーラ」を手がける「フォーシーズ」が運営しているんですよ。大衆向けのピザーラと最高級のフレンチ、その両方をわかっている会社が運営している。

リュウ なるほど、ロブションを食べたときに抜群においしいんですけど、どこか〝大衆向け〟の要素を感じたんですよ。普通、あのクラスのお店だと細かな味の違いを探させるイメージがあるじゃないですか。

ひろ 「かすかにチョコレートを彷彿とさせる豊潤な香りが鼻に抜ける」みたいなやつですね(笑)。

リュウ ええ。そんな味つけをイメージしていたので、味のトーンがすごく大衆向けだったことに驚きました。もちろん〝味を探させる系〟のお店も大好きですよ。ただ、そういうお店は一緒に行く人を選ぶんですよね。

ひろ 細かな違いがわかる人とわからない人では、同じものを食べても共有できる感動の量が違いますもんね。

リュウ 僕は味を探すことも好きなので、「この料理には、あの食材を使っているな」とか「なるほど、あえてこういうエッセンスを加えているんだ」という発見と感動の連続があると楽しいんです。でも、「おいしいか、おいしくないか」「好きか、嫌いか」みたいな人もいるじゃないですか。

ひろ しかも、料理の値段って、そういったほんのわずかな違いで桁が変わってくる。それを「おいしい」とか「こんなの初めて」くらいの感想だけだと、「連れてきた甲斐」がなくなりますよね(笑)。

リュウ その点、ロブションのようなお店は味を探さなくてもいいし、誰にとっても超おいしいと思えるんですよね。

ひろ ちなみに、リュウジさんはファストフードは食べるんですか? おいしいメシを自分で作れるし、高級店にも気兼ねなく行けるわけじゃないですか。

リュウ チェーン店には行きます。仕事柄、「いま流行っているおいしさ」の最大公約数を見つける必要があるんです。そのためには流行っているチェーン店に行くのが一番だからです。

ひろ 研究以外では行かない?

リュウ そんなことないです。例えばハンバーガーは大好きです。

ひろ やっぱり、マクドナルドですか?

リュウ いや、僕は「マック=月見バーガーを食べに行く店」です(笑)。普段はバーガーキング派ですね。

ひろ なんでまた?

リュウ デカくて「俺、今、バーガーを食っているんだ!」感がすごいからです(笑)。

ひろ ハンバーガーって間食としても人気ですけど、デカいバーガーをわしわし食うことで、その背徳感まで含めておいしいというのはありますもんね。

リュウ そうなんですよ。僕がハンバーガー店に行くときには「よし、今日はハンバーガーを食うぞ!」と覚悟を決めて行くので〝ザ・ハンバーガー〟といえるバーガーキングになるんです。

ひろ ほかのファストフードは?

リュウ 牛丼チェーン店には相当お世話になっていますね。僕は「すき家」派です。

ひろ へえ、意外ですね。味や肉質的に「吉野家」を推す人は多いじゃないですか。

リュウ これは悪口ではないし、誤解されると困るんですが、すき屋って〝ジャンクな味〟がするんですよ。で、あれが堪らない。

ひろ あはは(笑)。

リュウ だから「よし、牛丼を食べるぞ」と思ったときは、やっぱりすき家になります。吉野家はちょっと上品すぎる感じがします。

ひろ 松屋は?

リュウ 松屋では牛丼を食べなくて、もっぱら牛カルビ焼肉定食を食べに行きますね。

ひろ 松屋で牛丼を食べない理由は?

リュウ 松屋は定食がめちゃくちゃうまいんです。松屋の牛カルビ焼肉定食は、他の追随を許さないレベルですよ。

ひろ では、松屋は「牛カルビ焼肉定食店」になるんですね(笑)。

リュウ しかも、ポン酢だれとかバーベキューだれとかも自由にかけられますからね。味変も濃さも自由自在。ご飯がめちゃくちゃ進むんです。

ひろ リュウジさんの解説を聞いて、今、話に出てきたお店に改めて行ってみたいと思いました。

リュウ ぜひ!

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■西村博之(Hiroyuki NISHIMURA) 
元『2ちゃんねる』管理人。近著に『生か、死か、お金か』(共著、集英社インターナショナル)など 

■リュウジ(RYUJI) 
1986年生まれ、千葉県出身。料理研究家。近著に『虚無レシピ』(サンクチュアリ出版)など。公式X【@ore825】、公式Instagram【@ryuji_foodlabo】、公式YouTubeチャンネル『料理研究家リュウジのバズレシピ』

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