『週刊プレイボーイ』でコラム「呂布カルマのフリースタイル人生論」を連載している呂布カルマ 『週刊プレイボーイ』でコラム「呂布カルマのフリースタイル人生論」を連載している呂布カルマ
ラッパーとしてはもとより、グラビアディガー、テレビのコメンテーターなど、多岐にわたって異彩を放っている呂布(りょふ)カルマ。『週刊プレイボーイ』の連載コラム「呂布カルマのフリースタイル人生論」では「メンタル」について語った。

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★今週のひと言「強靱なメンタルを保てる理由。おごらず油断せず冷めたままで」

「鋼鉄の心臓」とはよく言ったもんで(自称)、俺のメンタルはおよそ人間のものとは思えないほどの強さを誇る(自賛)。とはいえ、そんなもんは他人との比較でやっと自覚できる程度のもんで、振り返ってみれば今まで特別落ち込んだり、つらい思いをしたことがなかった。

病むだの落ちるだの、みんな簡単に使いたがるが、本当か? 私は今弱ってます、食らってます、そんなことを自ら発信してなんになるんだろう。弱り目につけ込まれることを危惧しないのか。本来弱点は極力、内に秘めるもんだと思うが、それ以上にそこをさらすことによって同情や心配をもらいたい欲が勝るのか。そして実際緩く、表面上の優しい言葉をかけ合い、傷を舐め合うのだろう。

もともと大した傷でもないところに塗りたくられるインスタントな優しさの麻酔は、本来生存や危機管理のために必要な感覚までまひさせ、極端に言えば雨が降ったぐらいで家を出られなくなるぐらい心を脆(もろ)くする。そして常に優しさの供給がなければ生きられない、優しさ中毒に陥る。

死ぬこと以外かすり傷、なんて言葉があるが、昨今ではかすり傷程度で死んでしまう人も多いのではないだろうか。勘違いしてほしくないが、優しさ自体を非難しているわけではない。

名前は伏せるが、優しいSNSとかいって、鬱々としたイラストが添えられたアプリなんかはまさにそういう層をターゲットにしているんだろう。どれぐらいはやってんのか知らないが、俺のリアルの友人の携帯にそんなもんのアイコンを見つけようもんなら強制的にアンインストールしてやる。

俺は自分で言うのもおかしいが、冷めている。こういう言い方をすると熱を失ったような印象を受けるが、そうではない。もともと、ずっと冷めている。

俺の4枚目のアルバム『The Cool Core』はハードコアとの対比で芯から冷めている様をタイトルとした。その次のアルバムは『SUPERSALT』で、当時アイドル文化などを発祥とし、いつの間にかラッパーにまで求められるようになっていた神対応の真逆、超塩対応という意味だ。

そして最新アルバムのタイトルは『Be kenja』。常に賢者タイムのように冷めていたい、というタイトルだ。われながら一貫している。

俺は一時の熱や欲を信用しない。目標や夢を設定して、それに向かって己を奮い立たせるようなマネもしない。冷めたままで、同じように継続可能なことを無理せず続けている。

よく急に売れて忙しくなったり金を持ち始めたりした途端、いろいろと具合を悪くしてしまう有名人の話を聞くが、それは熱や欲に任せて無理をした証拠だ。

熱くなりすぎればオーバーヒートするし、欲もキャパを超えればあふれ出る。俺はおかげさまで売れてそこそこ金も手に入ったが、今のところその心配はない。幸か不幸か売れるのが遅かったおかげで、名古屋で家庭を築き、ささやかながら安定した生活のスタイルを確立できた。

それでもベテランラッパーとして地元のぬるま湯に漬かり続けていたら腐っていたかもしれないが、今はそこに軸足を置きつつも、さまざまな別ジャンルのプロフェッショナルとの仕事を体験させてもらい、日々刺激を受けている。この生活で調子に乗るのは不可能だ。

しかしすべては結果論で、俺がたまたまラッキーだっただけかもしれないし、この先どうなるかもわからない。

おごらず、油断せず、冷めたままで。

★『呂布カルマのフリースタイル人生論』は毎週木曜日更新!★