『週刊プレイボーイ』でコラム「呂布カルマのフリースタイル人生論」を連載している呂布カルマ 『週刊プレイボーイ』でコラム「呂布カルマのフリースタイル人生論」を連載している呂布カルマ
ラッパーとしてはもとより、グラビアディガー、テレビのコメンテーターなど、多岐にわたって異彩を放っている呂布(りょふ)カルマ。『週刊プレイボーイ』の連載コラム「呂布カルマのフリースタイル人生論」では『大学生活』について語った。

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★今週のひと言「自主退学決意からの急展開。童貞大学生の芸大ライフ③」

漫画家志望の童貞芸大生が1年生の必修単位である年度末の作品展示を知らなかったという理由でスルーしてしまい、泣きの特別個人展示のチャンスをもらうも、それをもすっぽかしてしまった前回からの続き。

最悪というのは、最悪のタイミングで起こるから最悪なのである。

みんなからどう見えているかわからないが、俺は意外と寝坊や取り返しのつかないような遅刻をしたりしないタイプなのだ。

しかし、本当にどういうわけか、その特別個人展示当日、目が覚めるとすでに展示が終わる時間だった。

大学に行くまでの1時間半ほどの生きた心地のしない道のりは、いまだに脳裏にこびりついている。

温情を受けたにもかかわらず、大遅刻をしてノコノコ現れた俺に残された道は、2年生からのコース分けで定員割れしているようなニッチなコースへの進級だった。

そもそもが夢だった漫画家になるための画力向上を目的として芸大に通っていた俺は、2日間ほど悩んだ末に自主退学を決意した。

これから3年間、絵以外のことをやる気にはなれなかったのだ。

何日後だったか覚えていないが、自主退学の旨を伝えるために学生課に行くと、そこにたまたま居合わせたのは俺がもともと希望していたイラストコースの先生。

ほぼ初対面だったものの、どういうわけかその先生はこれまでの経緯を知っていて、度重なる作品展示のすっぽかしや体たらくぶりを激しく叱責した。

そして先生はこう言った。

「おまえみたいなハンパなヤツはどうせ通用しないだろうが、仕方ないから俺のコースで拾ってやる」

俺は自主退学を伝えに来たのに、まさかの展開。面食らって困惑したが、さらに先生は続ける。

「俺のコースでもそんなハンパを続けるようなら、2階の窓から蹴り落としてやるからな(愛)」

一瞬迷ったが、ワラにもすがる思いで自主退学は引っ込めた。

こうして首の皮一枚つながった状態で2年生となったはいいものの、イラストコースの初日は憂鬱(ゆううつ)だった。

何しろ通用しないだの、窓から蹴り落とす(愛)などと脅されているのである。

俺は緊張からか、初日の先生によるイラストコースの説明の間、資料として配られたプリントに一心不乱に落書きをしていた。

すると先生が説明を中断して、「三嶋(俺の本名)を見ろ」と。

しまった、さっそく窓から蹴り落とされるのか......。そう思って身構えると、「絵描きになりたければ、どんなときも手を動かせ。三嶋を見習え」。

え??? 

俺は小学生の頃から現在に至るまで、ペンを持つと無意識になんにでも落書きをしてしまうクセがあって、学校では先生たちに常にそれをとがめられてきた。

それが一転、イラストコースでは褒められたのである。ここに来て良かったと心底思えた瞬間だった。

先生は最初こそ、だらしない俺に一発カマシを入れたものの、今考えると俺を買ってくれていたのだろう。

自分で言うのもなんだが、俺の画力はその時点でも同級生たちより抜きんでていたからだ。

先生は基本的にみんなに厳しかったが、俺はあれ以来、卒業まで一度も怒られることはなく、伸び伸びとやりたい放題やらせてもらえたのだった。

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