ラッパーとしてはもとより、グラビアディガー、テレビのコメンテーターなど、多岐にわたって異彩を放っている呂布(りょふ)カルマ。『週刊プレイボーイ』の連載コラム「呂布カルマのフリースタイル人生論」では『ガンダムのプラモデル』について語った。
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★今週のひと言「最高のストレス発散方法。ガンプラ作りは写経と一緒」
俺はガンプラをたしなむ。これは読んで字のごとく、日本人中年のたしなみだ。
去年バンダイが手がけるプラモ系アイドルグループ「LINKL PLANET(リンクル プラネット)」と仕事でご一緒した際、たくさんのガンプラをお土産にいただいて以降、それは加速しているのだが、もともと俺にはストレス発散として発作的にガンプラを組むクセがあった。
ただ、俺のガンダムに関する知識といえば、世代的に幼少期にSDガンダムやガンダムカードなんかに触れていて、本当に基礎的な初期のモビルスーツ(MS)なら名前がわかって、ちょっと絵にも描けるぐらいのもの。謙遜でもなんでもなく「ガンダム好き」を公言できるレベルには達していない。
日本が世界に誇るIPコンテンツであるガンダムについていまさら俺が浅い知識で語るまでもないが、俺と同じくガンダムとアムロとジムとザクぐらいはわかるけどさ~ぐらいの人にとって、膨大な作品数を誇る『機動戦士ガンダム』シリーズはどこから手をつけたらいいかもわからず、逆にハードルの高いものになってしまってるのではないだろうか。
しかし、幼い男児が本能的に働く車や武器のおもちゃを手に取るように、われわれ日本人男子にはDNAレベルでMSを美しいと感じてしまう因子が含まれている。
連邦軍のMSには戦国武将のよろいかぶとの意匠が、ジオン軍のMSには工業機械や戦闘機や戦車の意匠がふんだんに組み込まれている。それは作品に対する理解は関係なく、立体物として、つまりガンプラを手にしたときの興奮が約束されているのだ。
なんだかんだいって男のコならみんな人生のうちに一度くらいはガンプラを組んだ経験があるだろうが、もしもまだ一度もその経験がなくて、なおかつ前述したような理由でハードルを感じているなら、その必要はない。
知ってても知らなくても、とにかくカッコいいと感じたものを買って帰って、説明書どおりに組み立ててみてほしい。こんな複雑な造形が、小さなパーツに分かれていて、接着剤やネジもなくハメ込みだけでめちゃめちゃカッコいいロボットが出来上がる。
それを自分の手で触って隅々まで観察できるのだ。その感動と達成感は大人にとってのストレス発散に最適だ。
外へ飲みに出かけたいけど、財布が寂しかったり、明日の予定があってそんなに酔っぱらうわけにはいかなかったり、家族の目があったり、そんなときはガンプラをひとつ組み上げてみるといい。
ガンプラは一般的なモデルでせいぜい2000~5000円程度だ。ひと晩のお供としてこんなに優秀なモノはない。
または頭や心の中が騒がしかったり、やることが山積みで何から手をつけていいかわからないときなんかも、ガンプラはオススメだ。一度すべてを放り投げて、今夜はガンプラを組んでみてほしい。それは写経とまったく同じ効果を持つ。俺は写経の経験はないが、たぶん同じはずだ。
説明書どおりにパーツを切り取り、ハメ込み、その細かい作業に没頭しているうちに精神は研ぎ澄まされ、本来自分のやるべきことが浮き彫りになってくる。ガンプラが組み上がった後はもう一度箱に収めるもよし、高い所に適当に並べておくもよし、肝心なのは組む作業と完成したときの達成感だ。
そして完成したガンプラをベストなアングルで撮影して、SNSなどに上げ、ガンプラ仲間同士のやる気を刺激し合うのだ。MSは紛れもない戦争の道具だが、こんなに文化的で平和な営みを俺はほかに知らない。