常に記入済みの婚姻届を持ち歩き結婚の準備は万全。予備もしっかり用意している記者だが… 常に記入済みの婚姻届を持ち歩き結婚の準備は万全。予備もしっかり用意している記者だが…

結婚したい――あまりに結婚できる気配がなく、「出会って5秒で結婚」を目標に(半分は冗談だが)婚姻届けを普段から持ち歩く記者にとって、素晴らしい出会いがあった。それが『とりあえず結婚するという生き方 いま独身女性に考えてほしい50のこと。』だ。

この本で女性に伝えているのは「将来のことをいろいろと考えて躊躇(ちゅうちょ)するよりも、とりあえず結婚してみてみよう」ということ。そんな女性が増えてくれれば、世の中の結婚したい男にとって、いいこと間違いナシ!

とはいえ、そんな簡単に結婚を考えられる人は実際そういないのが現実だ。出会って5秒で結婚を申し込んだ50人以上の女性に聞くと、口を揃(そろ)えて「結婚はしたいけど、付き合ってる相手がいても慎重になる」という。

それが当たり前の考えだと思うが、なぜ「とりあえず結婚=“とり婚”」を提案しているのか。著者で夫婦・家族問題評論家の池内ひろ美氏に聞いてみた。

■結婚したい若者は減少…も“未婚の先輩”の多くが後悔

「今まで結婚に関して3万7千人以上の相談をお受けしていますが、60~70代の独身者の多くが後悔しているんですね。それも『周りが背中を押してくれなかった』と人のせいにするんですよ。だからこそ、『結婚願望がない』『まだ結婚しなくていい』と言っている場合じゃないんです。本は女性向けですが、男性も同じことが言えます」

国立青少年教育振興機構が11月に全国の20代・30代男女に調査したところ、男性未婚者の21.7%が「結婚したくない」と回答していることがわかった。また、クリエイティブサーベイ株式会社が今年2月に行なった「結婚観に関する意識調査」では、40%の男性が「結婚願望がない」と回答。明治安田生命が今年6月に行なった「20~40代の恋愛と結婚」をテーマにした調査でも、結婚願望のある男性が39%と4割を切った。

数値はまちまちだが、結婚願望の減少が浮き彫りになった結果に池内氏は危惧しているという。そして、そこには親の影響があると指摘する。

「結婚願望や恋愛願望がないのは、彼らが悪いんじゃなくて、彼らの親の育て方だと思います。幼少期に危ないから目の前の石をどけてあげる、そうすると失敗を恐れる子になってしまうんですよ。人間関係も同じで、今の男性は失敗して傷つくことを恐れて、浅い付き合いしかしないんです。恋愛で振られることなんて失敗でもないんですけどね」

確かに、先の明治安田生活福祉研究所の調査では、彼女がいる男性は20代が22.3%、30代が18.0%。08年調査からいずれも半減した。さらに20代未婚男性の交際経験がない割合は53%と恋愛自体が減っている。

しかし、“とりあえず”でなくてもいいのでは?

「“とりあえず”と言うと軽く聞こえますが、元々の意味は『何をさておき』『第1に』という意味です。人生を考えたら結婚して幸せな生活の優先順位を上げていきましょうということなんです。そして、突き詰めて考えずに積極的に動きましょうという提案の意味なんです。今は離婚も普通の時代で、失敗ではなく、経験でしかないんですから」

「独身でいい」という考えは“非常に浅はか”

ただ実際、前出の国立青少年教育振興機構の調査では、交際相手がいる人の結婚していない代表的な理由は「経済的に難しい」ことだ。お金に関して、既婚者から不満を聞くことも少なくないはず。

「それは頭でっかちな考えで、お金があったらあったらの生活、なかったらなかったらの生活をすればいいし、今の時代、共働きも普通です。お金や生活に対して大部分の既婚者は愚痴ることが多いですが、でも、結局それってノロケなんですよ」

池内氏は「本当に苦しかったら人は情けなくて言えない」と続ける。

「大変だろうと離婚しないのは、それでも幸せな部分が大きいからであって、未婚者は額面通り受け取って、それがわからないんじゃないでしょうか。だから若い人の想像力のなさで“俺は独身でいい”っていうのは、非常に浅はかですよね」

楽天ウェディングが7月、20歳から49歳までの男女500人に聞いた結婚・恋愛事情の調査では、約8割が「今のパートナーと結婚してよかったと思う」と回答。結局、既婚者の多くは幸せであって、ネガティブなイメージを持つ必要はないのか?

また、ネット上では「突き詰めて考えず結婚して生まれた子供は可哀想」だという批判があるが、それに関しても池内氏はこう否定する。

「人間にとって、生まれてきたことが幸せだと思うんですよ。病気やライフスタイルなど個々の事情を除けば、子供を作ることは本能としてごく当たり前のこと。親の結婚の経緯が問題なのではなく、愛情を持って育てれば、子供も不幸ではないでしょう」

あくまで結婚と子育ては別。いくら愛し合って結婚し子供が生まれても、離婚することだってある。そして前述した通り、あくまで“とり婚”は結婚にネガティブなイメージを持たず、積極的に捉えて前向きに考えようということ。好意のない相手と結婚しろという意味ではない。

「何よりも、自分のためだけに生きていないっていう誇りを持って大人になれる」(池内氏)という結婚。未知の世界に対して、傷つくことを恐れず、ポジティブに考えてみては?

●後編⇒今こそ“お見合い結婚”が理想的? 離婚率が低い理由と「選り好みする人間の常套句」

■池内ひろ美 1961年岡山市生まれ。20年以上、夫婦や家族関係をテーマに講演や悩み相談を行なってきた家族問題評論家、家族問題コンサルタント。近著は『とりあえず結婚するという生き方』(ヨシモトブックス)などがある。

(取材・文/鯨井隆正)