毎年、多くの熱狂的ファンが待ちわびる激辛カップ麺が今年も発売された。寿がきや食品の冬の風物詩「辛辛魚らーめん」(以下、辛辛魚)だ。
この「辛辛魚」は、東京練馬区の石神井公園にある人気ラーメン店『麺処 井の庄』で出されているメニューを同店の監修によってカップ麺で再現した商品。毎年1月末から数ヵ月限定で発売されるのが通例となっている。
ただ辛いだけのラーメンと違い「辛さ」と「魚介や豚骨の旨み」が共存する非常にクセになる味が特徴的で、魅了されたファンが多数。中毒性の高さから、中には消費期限を過ぎてもと1年分を買いだめして次のシーズンまでしのぐという猛者も!
また、このカップ麺の特徴のひとつに“毎年、味が改良される”ということがある。そのため、ネット上では「今年は当たり年!」「辛さと旨みのバランスが絶妙」と賞賛されることもあれば「味が落ちた」「今年はただ辛いだけ」等と苦言を呈されることも…。そんな毎年の味の変化までファンは賛否含めて楽しんでいるようだ。
そんな「辛辛魚」がここまでファンに支持されるようになった理由を探るため、寿がきや食品開発担当者・岡田氏に「開発秘話」や「販売戦略」などを聞いた!
―まず、辛辛魚を開発するに至ったきっかけを教えてください!
岡田 9年ほど前の話になります。うちの会社はインスタント麺業界の中では小さな会社なので、大手競合メーカーと戦うために“何か武器が欲しい”ということを考えていました。そこで勝てる商材を考えた時、「激辛」みたいに何か振り切ってしまった商品のほうが勝算があるんじゃないかと漠然と思いまして。当時は今と違い激辛のカップ麺はほとんどなかったですし。
そんな中、いろいろな店を食べ歩いていたら「井の庄」さんの辛辛魚に出会ったんです。ひと口食べた瞬間に「これだ!」と思い、再現して商品化しようと決めました。
―具体的にはどういったところに魅かれたんですか?
岡田 大抵の辛い物って、唇がマヒしたり、痛かったりと、刺激が強いだけの中、辛辛魚は美味しさを感じられるんです。魚の旨みだとか豚骨の厚みだとか。美味しさがガッときて、いつの間にか汗がダラダラ出てる感覚ですね。これは他の激辛メニューにはない魅力だと、ひと口食べて感じました。
―再現する際に重視したことはなんですか?
岡田 うちはスープ屋からスタートしたもんですから、麺の再現よりは本店のスープを再現することに重点を置いてました。
お客様の声も反映させて来年はこういう味にしようと
―では、毎年リニューアルされるのは、どんどん本店の味に寄せていっているということでしょうか?
岡田 んー、寄せてはないですね。ひとり歩き的にはなってますけど、お客様が飽きないように少しずつ変えています。辛さを足したり、豚骨の濃さを変えたりだとか、少しずつ毎年変えていますね。
―ネット上などでは「当たり年!」「去年よりもうまい!」なんて評価もあれば、反対に「味が落ちた」「さすがに辛すぎ!」といった賛否のコメントが毎年多く見受けられます。そうしたお客様の意見を反映したりも?
岡田 ありますね。マイナスの意見が多ければ変えますし、狙い通りの時もあります。何も反応がないと逆に飽きられちゃったのかなと心配になりますし。ですので、お客様の声も反映させて来年はこういう味にしようと参考にしています。
―ちなみに、今年はどういった味にしようと?
岡田 正直、去年と味はあまり変えていないんです。変わった点は、魚の旨みをあえて落として、辛さがシャープに出るところですかね。あとは、一昨年以来の全粒粉入りの麺を採用しました。そうすることで麺自体の味が強くなり、麺をすすって食べた時の全体的な味の濃さがアップします。
―商品開発において「井の庄」さんとの協力体制はどのような感じなのですか?
岡田 9年間もお世話になっていますので、全面協力していただいています。開発自体はうちが担ってはいますが、試食してもらい、コメントをいただいて参考にしてます。9年前の初年度には、厨房の中に入らせてもらってレシピも教えていただきました!
―さすが、そこまで!? 実は先日、本店に食べに行ってきたのですが、ひとつの特徴である、生っぽいカツオ荒節の風味はもう完コピですね!
岡田 ありがとうございます。やはり私たちとしても、原価、技術的に本店ほどのドロッとした濃度はまだ難しいなと思っていますが、我ながら即席麺商品の中でも完成度は高いと自負しております。
●後編⇒毎年の改良も話題になる激辛カップ麺『辛辛魚』。開発者に聞く「ズバリ今年の出来は?」
(取材・文/清藤亮佑)