リヤカーを引きながら徒歩で旅を続け、これまで歩いた総距離は4万7千km以上と、実に地球一周分以上の永瀬忠志さん リヤカーを引きながら徒歩で旅を続け、これまで歩いた総距離は4万7千km以上と、実に地球一周分以上の永瀬忠志さん

『クレイジージャーニー』に出演して一躍有名になった永瀬忠志さんは、“リヤカーマン”と呼ばれる男だ。

現在61歳で、リヤカーを引きながら徒歩で旅を続け、2005年には創造的な勇気ある行動をした人に贈られる植村直己冒険賞を受賞。アフリカ大陸~サハラ砂漠横断(1万1100km:フルマラソン225回分!)、南アメリカ大陸縦断(8800km)など…これまで歩いた総距離は4万7千km以上と、実に地球一周分以上!

そんなレジェンドと、週プレNEWSの連載でもお馴染み、3年前からバックパッカーとして世界一周を続けているマリーシャの対談が実現! 珍道中を語った前編「住民に会っても、走って逃げられることが多い(笑)」に続き、その後編をお送りする

永瀬さんのアバウトさ(笑)=豪快さに驚き続けるマリーシャ、都会での旅はしないのか?と聞いたところ…。

永瀬 パリは車道と歩道の段差があって、リヤカーを何度も引っ張り上げたり下ろしたりしなきゃいけなくて。それにジロジロ見られますからね。カフェでコーヒー飲んでる人たちに一斉に注目されるから、もう恥ずかしくて(笑)。

マリーシャ あっ、そういう感情はあるんですね(笑)!?

永瀬 ありますよ(笑)。だからリヤカーを1回置いて5mぐらい離れて、みんなと一緒に眺めて「なんでしょうねえ?」って、知らん顔をしたことがありますね。

マリーシャ 絶対にバレてますよ(笑)! 私は旅に出ると世界遺産を必ず押さえるようにしているんですけど、たくさんご覧になりました?

永瀬 たまたまあれば見ますけど…。南アメリカに行った時も、せっかくだからベネズエラの「エンジェルフォール」に行きたいとも思ったんですが、200kmも寄り道してまた戻るのがイヤで「また今度来よう」と。とにかく早く終わりたいんですよ。

マリーシャ えーっ! 世界遺産は素通りですか!? やっぱりゴールが最優先なんですね(笑)!

永瀬 はい。最短距離で行きたいから! アッハッハッ(笑)。

マリーシャ 旅にはどれぐらいお金がかかるんですか?

永瀬 アフリカに1年間行った時は準備費を含めて200万円。持って行ったのは140万円ぐらいで、旅行者用の小切手(トラベラーズチェック)と現金と半々で、何ヵ所かに分けてリヤカーに積んでました。あとは貴重品袋にパスポートと帰りの航空券、もしもの時のために300ドルぐらい挟んでおいて。

マリーシャ このリヤカー、実は金庫みたいに大金が入ってるんですね! でも、ナイジェリアでリヤカーを盗まれたんですよね?

永瀬 そうなんです。50万円ぐらいリヤカーの底に入れていたんですけど盗まれちゃって。でも、いつもは貴重品袋もリヤカーに積んでいるんですけど、その時、たまたま手に持っていたお陰で帰って来られました。成田空港に着いた時、残っていたのは5千円ぐらいでしたね(笑)。

マリーシャ でも帰国できてよかったですね(笑)。なぜその時はたまたま貴重品袋を持っていたんですか?

永瀬 アフリカを1年間歩いた時は10ヵ所だけ、大使館とか日本から連絡を取れる拠点を決めていて、その日は郵便局留めの手紙があったら受け取ろうと寄ったんです。手紙を受け取るのに本人かどうかパスポートで確認されるので、貴重品袋を持って行って。

そこまでは200mぐらい距離があって、リヤカーを持って行くのは面倒なので置いて行ったんです。結局、閉まってたんですけど、そのままホテルを探して帰ってみたらリヤカーが消えていて。

マリーシャ カギはかけてなかったんですか!?

永瀬 その手間が面倒で(笑)。

マリーシャ 普通はかけますよ! でも、面倒だとかイヤだとかおっしゃって、普通の人はすごく不安になることを全然気にしないって、やっぱり豪快っていうか冒険家ですね…!

永瀬 ええ、できるだけ省略したくて(笑)。でも、リヤカーがなくなった時は「やったー! これで明日は歩かなくていい」と嬉しい気持ちが湧いて抑えられないぐらいで(笑)。探す時も「ありませんように!」と思いながら、もしあったら知らんぷりして通り過ぎようかとも思ってましたね。

それは完全にドMですね(笑)!

マリーシャ もう旅するのがイヤになっちゃってるじゃないですか(笑)。それでも過酷な旅をするのは、もしかして「M」ですか…?

永瀬 もう倒れる直前まで、ギリギリまで行っちゃいますね(笑)。

マリーシャ それは完全にドMですね(笑)! 辛いのが好きなんですか?

永瀬 うーん、やっぱり旅が終わった時に心に残るのはキツかった所なんですよ。楽に淡々と進んだ所って、ただ時間が過ぎていくだけで心に残らないんです。

マリーシャ じゃあ行き先も「危ないか」「過酷か」で選んだり?

永瀬 そうです!

マリーシャ 即答(笑)! 「楽しそう」とかで選ばないということはよくわかりました! じゃあ今まで行った中で一番、心に残った場所はどこですか?

永瀬 場所で言うならサハラ砂漠ですね。

マリーシャ 灼熱でノドが乾いて、砂に脚を取られて、過酷なイメージありますもんね。

永瀬 そうですね(笑)。サハラ砂漠ではリヤカーの下に板を敷きながらちょっとずつ進んで約600km歩きました。東京から姫路ぐらいの距離になるんでしょうか。砂も硬かったり柔らかかったりで歩きにくくて、もう何日かかったか覚えてないですね。

マリーシャ それってもう修行です!

永瀬 あとジャングルも道がドロドロで、突然、深いぬかるみがあったりしてリヤカーが動かなくなるんですよ。もうぬかるみがあると全く進まなくてね、ハッハッハ!

マリーシャ なぜかツラい話をする時ほど表情が輝くんですけど(笑)。

永瀬 やってる時は「なんでこんな事を」とか「面白くもなんともない」と思うんですけど、その途中で嬉しい事もあるんです。いつも1日の終わりには食事をして、最後にお湯を沸かしてココアを飲むんですけど、サハラ砂漠でココアを飲んでいたら綺麗な夕日が沈んでいって、やがてパァーッと満天の星が広がったりする。

「途中で止めてたらこれは見られなかったのか」と思うと、ただ今ここにいることが嬉しくて、来てよかったなと実感します。

マリーシャ ずっと続けていられるのは、1日が終わった時の達成感のためですか?

永瀬 アマゾンを歩きながら「達成感ってなんだろう」と考えたことがあるんです。歩いていると、強い心と弱い心のどちらかが大きくなったりするんですけど、弱い心のほうが大きくなっていると、リヤカーがなくなったら「やったー!」って(笑)。きっとそんな弱い心に負けなかった自分が嬉しいんだろう、それが達成感なんだろうと思いましたね。

マリーシャ 今でこそ『クレイジージャーニー』で有名ですけど、旅を始めた当時ってまだ無名で、しかもリヤカーを引いている謎の若者だったんですよね?

永瀬 ええ、花売りなどの行商人に間違えられたり、不審者だと警察に通報されたり、廃品回収業と間違えられて「これ持っていってくれ~」と言われたり。

「旅に出る」ということは「歩く」ということ

マリーシャ TVに出たら生活は変わったりしました?

永瀬 変わらないですけど、全然知らないおじさんに「おっ、リヤカーマン」って言われたりはしますね(笑)。アマゾンを歩いている時も、船を借りるようなリッチな釣り旅行に来ている旅行者のおじさんに「キミはどこへ行くんだ?」と話しかけられ、「歩いて向こうのほうへ」と言うと「ハァ!?」って理解不能な顔をしてましたよ(笑)。

マリーシャ 旅の目的が違いすぎて噛み合ってないですね(笑)。各地でそんな珍問答が起こるんですか?

永瀬 なぜそんなことをしているのか、なぜ歩くんだとはよく聞かれます。

マリーシャ 新婚旅行で行ったインドでも、奥さんと別行動してまで歩いたそうですね!

永瀬 ただただ歩きたかったので(笑)。あの時は妻が先回りしてホテルを取ってくれたので助かりました。

マリーシャ なぜそこまで「歩き」にこだわるんですか?

永瀬 まあ、私の中で「旅に出る」ということは「歩く」ということなので…。

マリーシャ 歩くといえば、現在は高校で講師をされていますが、生徒と一緒に国内をリヤカーで旅されていましたね!

永瀬 今、講師をやっている大阪の高校では溶接を教えてるんですよ。そこで鉄パイプを使ってリヤカーを作って、ちゃんと使えるか試すために三重県の伊勢神宮まで5日かけて歩いたんです。それを毎年やっていて、今年で8回目になりますかね。今の生徒に「一緒に行くか?」と聞くと、大抵「イヤです」って(涙)。

マリーシャ (笑)。

永瀬 でも今までに2回、生徒が「僕も一緒に行っていいですか?」ってことがあって、3年前と去年は一緒に行きました。自分の荷物は全部持たせて、僕は後ろから歩いてたんですけど、伊勢神宮の200m前ぐらいから前を歩く生徒の肩が揺れている。どうしたんだろうと思ったら、泣きながら歩いてて(笑)。着いてから5分間ぐらいは泣きじゃくってましたね。

マリーシャ そんな経験をしたら一生、心に残りますよね…! 永瀬さんは61歳になる今も旅を続けていますが、そもそもここまで旅を続けることになったきっかけは?

永瀬 小学4年生の時、6年生と一緒に自転車で20kmぐらい走ったんですよ。その時はまだそんなに遠くまで行ったことがなくて「途中で帰れなくなったらどうしよう」と不安だったんだけど、いざ出発して走って帰ったら楽しくて。初めて見る風景、暮らす人たち…そういうものに出会うのが楽しくて、よく自転車で出かけるようになったんです。

それがだんだん遠くへ行くようになって、大学生だった18歳の時には自転車で日本一周しました。その後、日本の真ん中はまだ通ってないなと北海道から九州までの縦断計画を立てたんですが、日本一周だと7500kmだったのが日本縦断だと3200kmぐらいで距離が短いんですよ。自転車ならもう十分に行ける自信があって、でも歩けるかどうかはわかんなくて…。じゃあ歩いてみようかなって!

安定すると心が落ち着かない…

マリーシャ やっぱりチャレンジ精神なんですね!

永瀬 できるかどうかわかんないことをやってみたいと思ったんですよ。できるってわかってたら面白くないし。

マリーシャ そうして続けている旅と、日本での日常とどちらが永瀬さんの人生なんですか?

永瀬 ああ、それはもう旅(笑)。

マリーシャ 外国では“よそから来た人”とアウトサイダーとして扱われ、一方、日本にいる間も仮の姿だと自覚しているんですよね。つまり生涯、アウトサイダーとして移動し続けるのが人生ということ?

永瀬 そのほうが心が落ち着きます。安定すると心が落ち着かない。「ここじゃない、自分の居場所は」ってなっちゃって…。

マリーシャ そこに住みたいわけじゃないんですよね?

永瀬 はい。住むとなると、よっぽどの決断がないとダメですね(笑)。

マリーシャ ちなみに、何型ですか?

永瀬 B型です。

マリーシャ ああ、遊牧民タイプですね! 私もB型で、やっぱり1ヵ所にはいられないんです。ようやく共通点があった(笑)! 次はどんな旅をしようと思われていますか?

永瀬 できたら砂漠、ジャングルに行きたいですね。

マリーシャ またリヤカーが進まない所じゃないですか。

永瀬 はい(笑)。

マリーシャ やっぱり気候とか観光より、過酷な所がいいんですね。

永瀬 よくはないんですけどね。行ったらまた「なんでこんなこと、また始めたんだろう」って思うんでしょうね(笑)。

マリーシャ (爆笑)

(取材・文/明知真理子 撮影/松井秀樹)

永瀬忠志(ながせ ただし) 1956年2月15日生まれ 島根県出身。その旅のスタイルからリヤカーマンと呼ばれ、これまでに歩いた総距離は4万7千km以上。2005年に植村直己冒険賞受賞。〇永瀬さんが登場する、2016年ギャラクシー賞5月度月間賞受賞した回を収録した『クレイジージャーニーVol.4』(DVD)が絶賛発売中!

マリーシャ 9月8日生まれ。東京都出身。レースクイーンやダンサーなどの経験を経て、SサイズモデルとしてTVやwebなどで活動中。バックパックを背負う小さな世界旅行者。オフィシャルブログもチェック! http://ameblo.jp/marysha/ Twitter【marysha98】 instagram【marysha9898】