メルハバ!(トルコ語で「こんにちわ」)
ロシアからトルコの最大都市イスタンブール(首都はアンカラ)に移動すると、スターバックスの文字はキリル文字ではなくローマ字に戻っていたので安心した。
トルコの公用語はトルコ語だけれど、英語もかなり通じるし、それどころか日本語が上手な人が本当に多い。親日家が多いのも理由のひとつかもしれないが、日本語ペラペラなのは観光客狙いのビジネスのためでもあるらしい。
いつも通り、ダマされないようにと警戒しながら歩いていると、ホラきた。
「ワタシの名前はアリ。三鷹に行きたくてニホンゴを勉強してます。ニホンゴいっぱい話したいだから、ホントに何も心配しないで。トルコをいろいろ紹介したい。せっかくだから」
なぜ三鷹(笑)? それに“せっかくだから”なんてフレーズ、誰が教えたんだろうか。
客引きだろうなと思いながらも、あまりに上手な日本語を喋るトルコ人が面白かったし、口調は穏やかで攻撃的なタイプでもなさそうだったので、少しだけ一緒に街を歩いた。
すると案の定、途中からツアーオフィスを紹介したいという話になるのだが、彼の口からはまさかの言葉が飛び出した。
「ダイジョブです。ニホンジンはお金がないの知ってるから! 予算限られてるでしょ?」と…。これには思わず耳を疑った。
普段はどこの国でも“日本人=お金持ち”と思われていたのに、まさかトルコでは“日本人=お金がない”と思われている? そして彼は続けてこう言った。
「サウジアラビアの人たちはとってもいっぱいお金を使いますけどね、ニホンジンは予算というものがあるから。わかってますよ(ウィンク)」
ほほう、そういうことか。トルコには、ほど近いサウジアラビアからの観光客が多い。サウジの油田持ちと比べたら、我々日本人は、ええ、もちろん予算の都合もありますよ、そりゃあ。
でも、このイメージがついたのって、日本人観光客は勧誘を断る時になんとなく「お金ないから」という決まり文句を使うからなんじゃないかなとも思った。
激甘トルコ菓子がやめられない
アリは優しかったし、決してしつこいタイプではなかった。ツアーオフィスはごめんねと言って、オススメのレストランだけ紹介してもらうことにすると、彼は他にもこんなことを教えてくれた。
「トルココーヒーで相手をもてなすと40年の思い出として友情が結ばれるんですよ。それからコーヒー占いというのをやる人もいますよ」
アリにはいろいろ教えてもらったからコーヒーくらいごちそうしようと思ったら、彼の分はツケなのかタダなのか知らないがお会計にはなかったので、私たちが40年の友情として結ばれることにはならなかった。
それからコーヒーよりももっと飲まれているのが、「チャイ」という紅茶。チャイは小さなグラスにつがれ、トルコ人は1日に20杯も30杯も飲んでいるんだそう。
そして、このチャイにピッタリなのがトルコの激甘なお菓子たち。
代表的なのは、パイ生地を薄くしたようなフィロ生地にナッツを挟み、ミルフィーユ状に何層にも重ねてハチミツやシロップ漬けにしたデザートの女王「バクラヴァ」。
それから、「ターキッシュデライト(ロクム)」。
グニャっとした食感でフルーツやナッツなどが入っていて、言うなれば日本の「グミ」「お餅」「ボンタン飴」「胡桃ゆべし」みたいな感じ。
映画『ナルニア国物語』にも登場したこのお菓子、日本では有名でないため原作の翻訳では「プリン」と訳されているそうです(笑)。
グランバザールのお菓子店で働くメティンさんは、過去に東京・小金井に4年住んでいて日本の某有名企業の社食で働いていたため日本語ペラペラ。
「せっかくだから、食べてってよ」とターキッシュデライトをたくさん試食させてくれたので、せっかくだから何種類か購入。塩気のあるゴマのついたホワイトチョコ味やピスタチオとミルクチョコ味など、だんだんこのお菓子にハマり、もっと食べたいと体が叫んでいる。
「太りそぉ~」と心配してたら「砂糖使ってないから大丈夫」と言っていたけど、それはないだろと思った(笑)。
イスタンブール名物「濡れバーガー」の味は…?
こんな調子で食べ歩きしていると、日本語の歌が聞こえてきた。
「大きな栗の木の下で~♪」
栗屋台です。
イスタンブールは栗屋台だらけで、食べやすく殻のむかれた大ぶりの栗がキレイに陳列されている。激甘のトルコ菓子とは反対に、ほんのりと控えめの優しい甘味もこれまたおいしい。
なんだか日本を思い出していると、今度は焼き魚のニオイ…。何かと思えば、鯖(さば)じゃないですか!
新市街と旧市街を結ぶガラタ橋のたもとは多くの人々で賑わい、船型の調理場では鯖がジュウジュウと音をたて湯気をあげている。客に運ばれていくのは、そう、有名なトルコのB級グルメ「バルックエクメーイ」、通称「鯖サンド」!
焼き鯖とレタスと玉ねぎをパンに挟んだだけのシンプルなサンドウィッチで、イメージでは全然おいしそうじゃなかったんだけど、実際口にしてみると焼きたての鯖がまるまる半身入っていて、ジューシーな鯖の油がパンに染み込み、とってもおいしいのだ。
それにしてもイスタンブールの人口は1480万人(16年)と、東京並みに多い。これだけの人たちが鯖サンドに群がったら、鯖が足りなくなるのでは? と思ったが、心配ご無用。ガラタ橋を見上げれば、そこには釣り師がズラリと並び大量に鯖を釣り上げているのだ。
釣り立てホヤホヤの鯖がダイレクトに運ばれて調理されてるなんて、超フレッシュ!
もう満腹ですが、最後にもうひとつ紹介しておきたいイスタンブール名物と言えばコレ!
「ウスラックブルゲル」、通称「濡れバーガー」!
パンをソースでビシャビシャに浸したハンバーガーで、中には薄いお肉がチマっと挟まっているだけの、安さならではの超B級グルメ。
新市街のタクシム広場周辺にはズラリとお店が並んでいて、店秘伝と言うべきか、それぞれ少しずつスパイスソースの味やにんにくを使い、パンの濡れ具合が違う。ソースに濡れて、もっちりヌチっとしたパンとお肉が意外とマッチしていて悪くない。(ちなみに、2015年にモスバーガーで「濡れバーガー」が数量限定販売されていたようだけれど、日本でウケるのかは謎)
トルコと言えばケバブのイメージばかりだったけれど、まさかこんなにユニークなB級グルメにあふれていたとは。本気で体重増加が心配だけど、ついつい味比べで4つも食べてしまいました。
せっかくだから!
【This week’s BLUE】 昨年1月にテロ事件があったとは思えないほど静かなスルタンアフメット広場。ブルーモスクの対面に美しく佇むのはアヤソフィア博物館(左) ●旅人マリーシャ 平川真梨子。9月8日生まれ。東京出身。レースクイーンやダンサーなどの経験を経て、SサイズモデルとしてTVやwebなどで活動中。バックパックを背負う小さな世界旅行者。オフィシャルブログもチェック! http://ameblo.jp/marysha/ Twitter【marysha98】 instagram【marysha9898】