不妊治療において年齢はすごく重要 ※写真はイメージです

不妊? オトコには関係ない。オンナの問題でしょ…。もし、そんなふうに思っているなら大間違いだ。

今、日本の6組にひと組の夫婦が不妊に悩んでいるという。そして、その原因が男性側にあるケースも実に多い。誰でも30歳を過ぎれば、精子がどんどん“悪く”なるからだ。

前編記事「人ごとではない男の不妊治療」に続き、男性不妊の種類、治療法、費用など、その実態の最前線に迫る!

■睾丸を切り開いて精子を探す手術も

医学における不妊の定義とは「避妊をせずに定期的に性交渉をしているにもかかわらず、1年たっても妊娠しない」である。しばらくの期間、パートナーと妊活に励んだのに子宝に恵まれないのであれば、その時点で不妊治療を行なう必要に迫られていると考えていい。

その第一歩となるのが精液検査。産婦人科や泌尿器科へ行けば、初診料込みで1千円から2千円程度で検査を受けられる。子供がいつまでたってもできないと悩んでいる人はもちろんのこと、まだ結婚していなくても、将来子供が欲しいという願望がある人は、ここから始めてみるといいだろう。

「精液量、精子濃度、運動率などを数値化し、精液が射精されない『無精液症』、精液中に精子が少ない『乏(ぼう)精子症』、精子がまったくいない『無精子症』、運動率が低い『精子無力症』などの異常があるかどうかを調べられます。正常な数値だったとしても、体調などによって、精子の総数や濃度の数値にバラつきが出ることがあるので、時期を変えて再検査するとなおいいです」(国立成育医療研究センターの不妊療科医長・齋藤英和氏)

病院へ行くのが面倒なら、専用キットとスマホアプリを使って自分でチェックできるサービスなどを利用するのも手だ。

では、万が一、検査で「異常アリ」と判断されてしまった場合、どういった治療法があるのだろうか。

よく「人工授精」「体外受精」「顕微授精」といった言葉を耳にするが、これらの違いについて、男性不妊治療を専門とするリプロダクションクリニック大阪の山口耕平医師に聞いた。

「無精子症ではなくても、精子が少なかったり、運動率が低い場合は、射精した精液を人工的に女性の子宮に注入して授精させる『人工授精』を行ないます。精子の状態がさらに悪ければ、射精した精子に女性から採取した卵子をつけて受精させる『体外受精』や、採取した1匹の精子を特殊な注入器で卵子に送り込んで授精させる『顕微授精』となります。

無精子症と診断された場合などでも、睾丸を切開して精巣にわずかに存在する精子を採取する『TESE(テセ)』という手術を行ない、顕微授精をするわけです」

つまり、人工授精→体外受精→顕微授精、そしてTESE+顕微授精という順に大がかりになっていくのだ。

お金と身体的&精神的負担をかけても成功率は決して高くない

気になる手術費用は、人工授精が1回約2万円程度と比較的安価だが、体外受精と顕微授精は、50万~100万円と高額。さらにTESEの手術を行なうと、これにプラスして10万~60万円がかかる。そして入院をする必要がないとはいえ、人工授精は約1ヵ月、体外受精と顕微授精は採取から移植まで1~3ヵ月ほどの期間を要する。

だが、残念ながら、これだけのお金と身体的&精神的負担をかけても成功率は決して高くない。前出の齊藤氏が語る。

「人工授精の成功率でいえば、男性が35歳までで9%弱、40代前半で3.5%と、やはり年齢が高くなると確率は下がります。体外受精にいたっては、20代でもだいたい2割強、32歳くらいで確率は下がりはじめ、40歳になると10%を割り、45歳になると1%にまで下がる。不妊治療においても、やはり年齢はものすごく重要なんです」

子づくりも不妊治療も、男女ともに若ければ若いほどいい。少しでも悩んだら医師に相談することをオススメするが、2度もクリニックを変えた前出のCさんのようなケースもある。病院選びについて、前出の山口氏はこう話す。

「特に、男性不妊に関しては専門的な知識が必要なので、生殖医療専門医を選ぶといいでしょう。さらに、それぞれの施設での男性不妊手術の年間実績や口コミなどから総合的に判断してください」

そして、何より「自分は大丈夫」と過信しないこと。

「子供ができないからといってパートナーのせいにせず、男性も積極的に精液検査を受けてください。たとえ独身でも、結婚したら子供をつくれるのかを確認するために、30歳を超えたら人間ドック感覚で一度検査をしてもらうといいでしょう」(山口氏)

自分の精子は大丈夫!?と気になる男性は、まず始めてみては?