前回は『枯れない男になる30の習慣』の著者である平澤精一先生に、男性ホルモン=テストステロンが豊富でイキイキとした男でいるための食習慣や生活習慣を指南してもらった。
そこで完結編として、性生活でテストステロンを活性化するための意外な心がけ、さらにテストステロンに深く関連する男性更年期障害についても伺ってみた。
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―30の習慣の中でも意外とハードルが高いなと思ったのは、最低週2回、セックスしなさいという習慣…これは人によってはかなり無理な気がします。
平澤 もちろん、セックスにはパートナーの有無が関係することなので、パートナーがいないなら自己処理でもいいでしょう。しかし大事なのはAVのようなバーチャル的なもので興奮を促すよりも、好きな女性を思い出して自慰行為をするほうが、よりテストステロンの活性化に繋がると思います。
―えー、それはなぜですか? AVのカワイい女のコを見て興奮すれば、より刺激となりそうですが!?
平澤 しないよりはマシでしょうが、しかしそれではただの性欲発散の行為です。私が言いたいのは、自慰でテストステロンをより活性化したいなら、現実世界における女性をイメージしたほうが効果的だということです。
―それはなぜですか?
平澤 現実世界の女性、つまり好きな女性やリアルな女性を意識することは、その女性にいいところを見せたい、その女性のために頑張りたい、その女性とセックスするために口説きたいという意欲にも繋がります。そのような意識や意欲を持つことこそがテストステロンの活性化に繋がります。
―「いつかあの女を抱いてやる!」みたいな思いで興奮するほうがいいってわけですか。
平澤 そういうことです。仮に好きな女性がいなくても、女性と接したり女性を意識する環境さえあればいいと思います。
―そういう女性と接したりする環境がどう男性ホルモンに影響を与えるのでしょうか。
平澤 仮に、料理教室やカルチャースクールなどに通って「○○さん、すごい」とか「○○さん、ありがとう」などと女性から褒められるとします。女性から褒められるということは自分の存在価値が認められるということ。それだけでもテストステロンは増えるからです。
脳梗塞や認知症の原因にもなる男性更年期障害
―なるほど。ところで、先生のクリニックに来る患者さんの最近の傾向などはありますか?
平澤 最近はネットなどで自分で調べて「先生、自分は男性更年期障害なのではないでしょうか」と自らその症状を自覚していらっしゃる方が増えていますね。とくに40、50代の男性に多いです。
―男性更年期障害とは。
平澤 やる気が出ないとか、疲れが取れないとか、朝勃ちの減少などもその症状のひとつですが、男性の場合は女性の更年期障害のように閉経というわかりやすい目安がなく、緩やかに進行するものです。とにかく意欲が起きないことが男性ホルモン減少の目安となるので、少しでもおかしいと思ったら受診してみるといいでしょう。男性ホルモンを血液検査で測定することで明らかにすれば、なんらかの対策は練れます。
―まさか男性ホルモンの数値を測定できるとは驚きです。
平澤 男性更年期障害は様々な原因によって起こる一種の生活習慣病ですが、血液中のテストステロンの分泌量によって「テストステロンに依存しない更年期障害」と「テストステロンが減少して起こるLOH症候群による更年期障害」のふたつのどちらかに分類されます。
―LOH症候群とは!?
平澤 「Late-Onset Hypogonadism」の略で、日本語では「加齢男性性線機能低下症候群」と言います。LOH症候群では筋力が落ちたり疲労感やダルさを感じたり不眠や性欲がなくなるなどあらゆる症状が出ます。
―性欲がなくなるだけでなく勃起や射精もしにくくなるとか…。
平澤 そうですね、そのようなED症状のある方はかなりいますし、最悪の場合は動脈硬化が起こりやすく脳梗塞や心筋梗塞などの原因にもなります。さらには、脳の認知機能の衰えが招く認知症まで…やはり男性が男性らしく生きるにはテストステロンはかなり重要なのです。
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何歳になっても枯れない男でいるために、また男性更年期障害を防ぐために日々の少しの習慣を身につけることが大事なようだ!
(取材・文/河合桃子) ●平澤精一(ひらさわ・せいいち) 日本医科大学大学院医学研究科で医学博士号取得。大学病院等での勤務を経て、1992年新宿駅東口に「マイシティクリニック」を開業。2014年から東京医科大学地域医療指導教授として医学生の教育にも関わる。医師会関係では新宿区医師会副会長をはじめ東京都医師会、新宿区医歯薬会、新宿医療行政関連の委員、役員を兼任。所属学会・医学会は日本泌尿器科学会、日本性感染症学会、日本メンズヘルス医学会、日本抗加齢医学会等多数。著書に『枯れない男になる30の習慣』(幻冬舎)