スカスカの絶景に陶酔中の旅人マリーシャ

キルギスの天山山脈への登山拠点となる町・カラコル

私が滞在していた宿は、新しくオシャレであるにも関わらず、お値段350ソム(約560円)と激安だった。宿仲間とも和気あいあいで思わず長居したくなったけれど、そろそろ次の場所へ行かなくてはならない。

まだ、まともに拝めていない“幻の湖”イシククル湖に後ろ髪をひかれながらも、私はキルギスのグランドキャニオンとも叫ばれる「スカスカ」という奇岩地帯を目指すことにした。

「Сказка(スカスカ)」とはロシア語で「おとぎ話」を意味し、英語では「Fairytale(フェアリーテイル)」と表記されている。その見た目は、まるでおとぎ話に出てくる城のようだそうで、これはこれは“岩フェチ”の私の心をくすぐる誘いであった。

出発の朝は、アメリカ人女子のジーナが「ほらよ! このカップケーキ、持っていきな! 腹が減ったら食べるんだよ!」と、サバサバしたキャラクターはジブリ映画に出てくる女のコみたいで、カラコル滞在は景色だけでなく最後までジブリっぽく送り出してくれた。

この素敵ホステルが一泊約560円なんて!

ジーナとは偶然ビシュケクでも会っていて、まさかの再会だった(これは偶然ビシュケクで撮っていた写真)

さよならカラコル

いざ、イシククル湖の東端カラコルから湖の南側を走り、西へ向かうバスに乗り約2時間。ウトウトしていると、いつの間にか車窓にコバルトブルーの水平線が広がっていた。

「おおー! イシククル湖! 青い! デカイ! ほぼ海じゃん!」

半ば諦めかけていた湖の景色は突然やってきて、思いがけず見れてしまうパターン(笑)。“なんとなくゴォール!”って感じの展開ですが、いいんです。苦労しないで見れる絶景、大好きです。

標高は1600m越えに位置するのに極寒の冬でも凍らず、その原因は不明という不思議な湖。水温は夏は20℃余り、冬は3℃近くで、古称では「熱海」(ねつかい)と呼ばれていたらしいけど、こうなったら「キルギスの熱海(あたみ)」と言ってしまいたい。

バスの車窓から見えたコバルトブルーのイシククル湖

ニョキニョキの奇岩群に萌え

飽きずに窓に張り付いていたら、ほどなくして「フェアリーテイル」と書かれた看板に到着した。バス停ではないが、スカスカを目指すために途中下車。

大きな湖の前にポツンと降ろされると、そこには人っ子ひとりおらずシーンとしていた。入口にある料金所であろう小屋は稼働しておらず、入口であろう踏切は開放されている。これがオフシーズン。なんだか寂しげだけれどもラッキーでもある。

「帰り道、またバスつかまえられるかな…」。そんな不安を少しだけ胸に、私は「ご自由にお入りください」状態のスカスカにズカズカと入り込んだ。

スカスカの看板と去り行くバス

入口を振り返った景色。小屋には誰もいない

ほぼ一本道にも関わらず、なぜか早速、道を間違えるというドジ話は置いといて…ここからバックパックを担いだままでのトレッキングです。

歩く距離は2kmほどと短いけれど、荷物の重さは10kgほどとなかなかズッシリ。草むらの影に荷物を置いて行っちゃおうかと思ったくらいであったが、少し頑張った。道中には車のタイヤの跡と犬よりは大きいだろう何かしらの動物の足跡があり、最近でも人間の行き来があることや動物が住んでいることが窺える。

スカスカキャニオンへの道のり

そして、しばらく歩くとすぐにスカスカキャニオンが現れた!

「キター! キャニオーン! ワオーン!」

私は喜びをあらわに、狼のマネのように雄叫びをあげた。そこには赤茶色をしたニョキニョキの岩群がドドーン! 奇岩と呼ばれるにふさわしい形をしている。

イシククル湖と天山山脈の絶景

そこにはもちろん誰もおらず、この惑星を独り占めした気分だった。規模はグランドキャニオンに比べたらあまりにも小さいけれど、そのサイズ感がちょうどいい!

手に届かないアイドルより、会いに行けるアイドルが人気なように、私はこのくらいのサイズのキャニオンに萌えた。柵などはなく、落ちたりしたら危険だけど、好きな所に登っていいし、誰にも邪魔されず探検できるのだ。

岩を登るマリーシャ

「頂上まで登って、絶景を見ながら、ジーナがくれたカップケーキを食べよう!」

岩を駆け上り、やっと頂上に登りつめると、そこにはなんらかの動物のウ〇コがあった。なんでよりによって目星をつけたポイントに…。仕方がない、とりあえずそれを背中に腰を下ろし遠くを見つめた。

イシククル湖と天山山脈

目の前に広がるキャニオンの奥にはイシククル湖が静かに広がり、その上には真っ白い雲が浮いている。と、思ったら、それは雲ではなく、湖の北側となる対岸にある天山山脈北部クンゴイアラトーだ。

白い山々が一直線に連なっているのを、ただウットリと眺めて過ごす。冷たい風を浴びながら、この絶景を独占状態の贅沢な時間。そしてふんわり漂う何者かのフンの香り…(笑)。

岩のピークに腰掛ける。背中側には何者かのフンが…

何時間でも見ていられそうな景色だったけど、帰り道のバスのことも心配だしそろそろ行かなくちゃ。それにカップケーキだけじゃ胃の中もスカスカだぞ!(こっちが本音) こうして腹時計に急かされた私は、大満足のスカスカをそそくさと退散することとなった。

ところで皆さん、そろそろ新年の準備も始まる頃と思いますが、スカスカおせちにはくれぐれも気を付けてね!

【This week’s BLUE】スカスカの岩の頂上で、「青く輝くイシククル湖x天山山脈xジーナにもらったカップケーキ」という作品でインスタ映えを狙う。

★旅人マリーシャの世界一周紀行:第168回「キルギスで禁断のヒッチハイク…そしてまたいつか地球のどこかで!」

●旅人マリーシャ平川真梨子。9月8日生まれ。東京出身。レースクイーンやダンサーなどの経験を経て、SサイズモデルとしてTVやwebなどで活動中。スカパーFOXテレビにてH.I.S.のCMに出演中! バックパックを背負う小さな世界旅行者。オフィシャルブログもチェック! http://ameblo.jp/marysha/ Twitter【marysha98】 instagram【marysha9898】