バレエの「カンブレ」という動きを応用したストレッチ。デスクワークの疲労回復に最適だ バレエの「カンブレ」という動きを応用したストレッチ。デスクワークの疲労回復に最適だ

しっかり睡眠時間を確保してもとれない疲れ。その原因に脳の疲れが関係しているというのは、“美尻王子”としてメディアにも登場するバレエダンサーの竹田純氏だ。

竹田氏は昨年、関西福祉科学大学・倉恒弘彦教授の監修の下、『疲れとりストレッチ バレックス』を上梓。脳が疲労し自律神経のバランスが崩れることで睡眠中に副交感神経が働かず、疲れがとれないことを言及している。

そこで竹田氏が発案したのが、前編でも紹介した「バレックス」だ。バレエダンサーは踊るために肉体を酷使するだけでなく、振付を覚えたり表現を考えたりと脳もフル稼働。彼らのボディメンテナンスをベースに、脳と身体の疲れをとるリラックスストレッチとなっている。今回はその具体的な実践法を紹介する。

まず、ストレッチの前に知ってもらいたいのが呼吸法。腹式呼吸などはよく知られているがバレエダンサーの“肋骨(ろっこつ)呼吸”はまた特別だ。

「バレエってお腹を引っ込めたまま踊るので、腹式呼吸ができないんです。だからどこを使うかっていうと肋骨。横隔膜を動かす感じで肋間筋っていう筋肉を張ったまま呼吸するんです。腹式呼吸よりもダイレクトに横隔膜や広背筋を刺激するので自律神経のバランスも良くなります

やり方は、お腹になるべく空気を入れないように呼吸し、肋骨の横に手を添えて膨らむ感触があればOK。これを3秒で吸って、3秒で吐くようにする。疲れていると浅い呼吸になりがちだが、深ければいいというわけではない。深すぎる呼吸は交感神経を刺激し、かえって脳を疲れさせてしまう。最初はできないかもしれないが、意識して何度か繰り返せばできるようになるはずだ。

 【1】両手を肋骨にあて、肋骨が中央に寄って狭まるのを確認しながら頭から息を吐くイメージ 【1】両手を肋骨にあて、肋骨が中央に寄って狭まるのを確認しながら頭から息を吐くイメージ

 【2】肋骨と胸が横に広がるのを感じながら吸い込む。1と2を3秒ずつ、数回繰り返す 【2】肋骨と胸が横に広がるのを感じながら吸い込む。1と2を3秒ずつ、数回繰り返す

質の良い睡眠がとれる股関節周りのストレッチ

そして、疲れをとるための睡眠をよりよくするために欠かせないのが、股関節周りのストレッチだ。「あんなに股関節を動かすものはない」というほどバレエは股関節を大事にする。

「骨盤が大事というのはよく言われているじゃないですか。普通の人はあまり気にしないだろうけど、でも股関節の動きが悪いと骨盤周りの動きが悪くなっちゃう。だから、ここを柔らかくしとかないとダメなんです」

股関節の柔軟といっても開脚ではない。四つん這いになり、片方の膝を胸に引きつけ、そこから後ろに大きく回すだけ。これを片脚ずつ5回繰り返す。それだけで股関節やふくらはぎの筋肉がほぐれ、血流が良くなることで自律神経も整うため、質のいい睡眠がとれる。股関節の“開放”は欠かせないのだ。

 【1】四つん這いになり、膝は肩幅に開く。頭が下がらないよう、首は真っ直ぐ、視線は斜め下に 【1】四つん這いになり、膝は肩幅に開く。頭が下がらないよう、首は真っ直ぐ、視線は斜め下に

 【2】脚を股関節から動かすように意識しながら、右膝を胸に近づけるように引き寄せる 【2】脚を股関節から動かすように意識しながら、右膝を胸に近づけるように引き寄せる

 【3】膝をゆっくり大きく外側に開く 【3】膝をゆっくり大きく外側に開く

 【4】脚を後ろに回し込むように大きく回す。1~4を5回ずつ片脚ずつ行なう 【4】脚を後ろに回し込むように大きく回す。1~4を5回ずつ片脚ずつ行なう

そして、先にも出てきた骨盤周りのストレッチも疲労を解消するのに効果的だ。骨盤周りには腸腰筋など上半身と下半身をつなぐ、様々な筋肉が集約されている。ここが緊張した状態だと姿勢も悪くなり、骨盤が歪(ゆが)みやすくなるのだ。

骨盤って副交感神経が作用していると自然と開くんですよ。でも歪んじゃってると、これができなくなって自律神経のバランスも崩れますし、ボディラインもおかしくなる。だから、歪まないように周りの筋肉をほぐさないとダメなの」

骨盤周りをほぐすには、まず脚を深く組み、片方の膝を床に着けて両膝が体の中心で合わさるように座る。そして背筋を伸ばしたまま上半身を前に倒すだけだ。ただ、骨盤周りの筋肉が硬いと両足のつま先が一直線にならなかったり、上半身を倒す時に膝同士が離れてしまったりするので、日々ストレッチをしておくことが大事だ。

 【1】膝を体の中心で合わせるように脚を深く組んで背筋を伸ばして座る 【1】膝を体の中心で合わせるように脚を深く組んで背筋を伸ばして座る

 【2】背筋を伸ばしたまま、状態を前に倒す。反対側も同様に行なう 【2】背筋を伸ばしたまま、状態を前に倒す。反対側も同様に行なう

 脚が深く組めない場合は、このような形でOK 脚が深く組めない場合は、このような形でOK

仕事中に椅子に座ってできるストレッチ

また、四つん這いで二の腕を床につけ動かす腕のストレッチや、仰向けで両脚を交差して足のむくみをとるストレッチも自律神経のバランスを整えるためには有効だ。寝る前にそれぞれ行なうことで、より快適な睡眠がとれて日々の疲れも解消できるはず。

最後に、特にデスクワークの多いサラリーマンのために仕事中でもできるバレックスを紹介しておこう。NASAの研究でも「1時間座り続けると寿命が22分縮む」とあるように座りっぱなしは厳禁。座っていると横隔膜と肺が圧迫され、呼吸も浅くなる。その横隔膜と肺の緊張を解くのに必要なストレッチだ。

やり方はまずは背筋を伸ばして浅く椅子に腰かける。そのまま片手を天井に向けて上げ、上げた手と反対に倒れて脇腹を伸ばす。これを左右、5回ずつ行なうだけだ。夕方、仕事の疲れが溜まった頃に行なえば、終業まで疲労を気にせず仕事に励めるはず。

 【1】背筋を伸ばして浅く椅子に腰かける。頭はまっすぐ正面に 【1】背筋を伸ばして浅く椅子に腰かける。頭はまっすぐ正面に

 【2】息を吸って右腕を上げる 【2】息を吸って右腕を上げる

 【3】息を吐きながら、右の脇腹を伸ばすように腕を左下に移動する。左右5回ずつ 【3】息を吐きながら、右の脇腹を伸ばすように腕を左下に移動する。左右5回ずつ

毎日働く社会人にとって、身体を休め、疲れをとることは大事。しかし、脳をリラックスさせられるように自律神経を整えておかないと本当の疲労回復にはならない。普段からバレックスを行なうことで、脳も身体も休められるようにしよう。

(取材・文/鯨井隆正 撮影/下城英悟)

●竹田純(たけだ・じゅん) バレエダンサー。17歳の時にバレエを始める。18歳で東京バレエ団に所属。2003年にフランスに単身留学。国立バレエ学校で学び、リモージュ歌劇場、スロバキア国立劇場、オランダ国立劇場など数々のバレエ団で研鑽を積む。その後、健康や美容につながるメソッドの他、床に寝ながら行なうバレエ式エクササイズの「床バレエ」を考案。

■『疲れとりストレッチ バレックス』(世界文化社、1,380円+税) 竹田純著、倉恒弘彦監修(関西福祉科学大学健康福祉学部 医学博士)