毎年恒例となっている栃木県宇都宮市と静岡県浜松市による一世帯当たりの年間ギョーザ購入額争い。2017年は宇都宮に軍配が上がった。
だが、注目すべきはいつものライバル争いではなく、その下。3位に入った大阪府堺市だ。堺でギョーザがよく食べられているとは、今の今まで聞いたことがなかったが…果たして、現地のギョーザシーンはどんな盛り上がりを見せているのか!?
全国3位の原動力は? 前回配信記事に続き、4つの仮説を検証!
【仮説1】人気の持ち帰り専門店の存在
「持ち帰り用生ギョーザ専門の『龍華山』という店が市内に4店舗あり、なかなか好評のようですよ」(人気のギョーザ専門サイト『東京餃子通信』の大阪特派員・本家氏)
というわけで、龍華山の宿院店に伺うと、統括マネジャーの武田健吾氏が迎えてくれた。
「うちの『生餃子』のコンセプトは、『ご飯に合う餃子』。ご飯が進むよう、パンチのある味つけであると同時に、ギョーザ自体もモリモリ食べてもらえるよう、食後感はあっさり。餡(あん)の主な材料はキャベツ、豚肉、ネギ、ニンニクとオーソドックスなんですが、素材の質と配合にはこだわってます。店舗をふたつ増やしたこともあり、この2年ほどで製造量は以前の3~5倍に増えました。もう毎日、てんてこ舞いです」(武田氏)
とすると、堺の全国3位躍進に龍華山の貢献は大?
「もちろん、貢献した可能性はあります。ただ、堺市民なら誰もが龍華山のギョーザを知っているわけではないのも事実。全国3位になるには、もっと幅広い層に影響力がある事象が存在しているように思いますね」(本家氏)
【仮説2】「餃子の王将」「大阪王将」が密集!?
「堺には、街の規模を考えれば『餃子の王将』『大阪王将』の両チェーンの店舗がやけに多い印象があります。これらの店舗の利用は今回の家計調査に含まれてはいませんが、日常生活で目にする、利用する機会が多ければ、堺市民の意識下にギョーザという食べ物が強烈にすり込まれることになります」(本家氏)
両チェーンは共にギョーザがイチ推しメニュー。そして今回の堺取材でも、複数の市民から「王将チェーンの店が、ほかの関西の街より多い気がする」との声を聞いた。
調べると、堺市内には餃子の王将が12店舗、大阪王将が8店舗存在することが判明。確かにそれなりの数だ。
とはいえ、家計調査の対象となったほかの関西の政令指定都市である大阪市、神戸市、京都市より、人口比で突出して両チェーンの店舗が密集しているわけでもない。つまり、生活のなかで市民が両チェーンに触れる頻度は、大阪などとほぼ同じ。やはりこの仮説も、全国3位の絶対的な原動力ではないようで…。
高級品よりも、お買い得なものが好まれる?
【仮説3】大手スーパーのPB(プライベートブランド)ギョーザ
「関西からほぼ撤退している(現在大阪府に5店舗、兵庫県に3店舗のみ)イトーヨーカドーが、堺市内には2店舗も残っています。さらにイオンが3店舗。これは少なくない数です。堺は庶民的な土地柄で、高級品よりも、お買い得なものが好まれます。ということは、全国区の二大スーパーが誇る割安な『セブンプレミアム』『トップバリュ』ブランドのギョーザが、ほかの街より売れているのかもしれない。だとすると、龍華山のギョーザとは桁が違う数でしょうから、大きな原因のひとつになりえます」(本家氏)
早速、市内のヨーカドーとイオンをしらみつぶしに視察。だが、いずれの売り場も、特にPBギョーザを推している感じはない。一番目立っていたのはむしろ、関西人には激安でおなじみの珉珉(ミンミン)食品「せみ餃子」だった。
念のため、両スーパー本部の広報にも問い合わせてみたが、いずれも「堺の店舗で他地域よりよくギョーザが売れているというデータはありませんし、堺ではPBギョーザの売り上げの割合が特に多いといったこともないですね」との答え。せみ餃子については、関西のほかのスーパーの本部にも尋ねたものの、回答はそろって「チルドギョーザの中では断トツに売れているが、それは関西全域で言えることで、堺だけでせみ餃子が特別に売れているわけではない」だった。これまた空振り…。
【仮説4】「タマノイ酢」のお膝元
「ギョーザを食べる上で欠かせないのが、タレに使うお酢。全国区の酢メーカー『タマノイ酢』の本社は、堺にあります。以前タマノイ酢が、自社のお酢でギョーザを楽しみましょうというキャンペーンを打っていたことがあって、それが市民の記憶に残っているのかも」(本家氏)
タマノイ酢へ電話する。ギョーザ2トップの一角、浜松市出身だという同社広報担当者いわく「残念ながらそういったキャンペーンは、過去も今も展開していないんです」
というわけで、ギョーザ購入額全国3位の謎は、現地でも解明できずじまい。だが、これだけは言えよう。謎が謎を呼ぶ堺のギョーザシーンから今後も目が離せない、と。