歯の模型を使って、小方先生が実際に見せてくれた“バス法”。歯ブラシを45度の角度で歯に当てる。その際、歯ブラシは鉛筆を持つような感じで 歯の模型を使って、小方先生が実際に見せてくれた“バス法”。歯ブラシを45度の角度で歯に当てる。その際、歯ブラシは鉛筆を持つような感じで

歯が悪いと健康に悪影響を与えるのはなんとなく想像できる。きちんと噛まないと胃腸にも負担がかかりそうだからだ。しかし、それでも普通、ケアしているのは虫歯ぐらいでは? そうでなければ、なかなか歯科医に行かないのが現状。

そこで、前編に続き、さまざまな病気の原因にもなりうる実は怖い病気「歯周病」について、日本大学松戸歯学部歯周治療学講座教授で、日本歯周病学会の副理事長でもある小方頼昌(おがた・よりまさ)先生に聞いた。

■歯周病がさらに重度な病気の原因にも

歯周病専門医がいる歯科医院では、万が一、重度な歯周病にかかっていても、ひと昔前のように“手っ取り早く抜歯してしまう”という少々荒っぽい治療は、ほぼ行なわれなくなっているという。

まだ初期の段階の歯肉炎であれば、正しい歯のブラッシング法の指導や簡単な治療を受ければ治る確率が高いし、また、歯周炎にまで進行してしまい、歯茎や歯の土台となる骨が溶けてしまっていても、最新技術の“再生治療”を受ければ、ある程度まで元の状態に戻せるという。

「なかでも最新の治療法は『リグロス(歯周組織再生剤)』という薬を患部に塗ること。すると失った歯の周囲の歯根膜や骨を再生することができます。昨年からやっと保険が利くようになり、再生手術に使用することができるようになりました。骨を再生するには手術が必要でしたがこの方法であれば治療時間も約1、2時間で済みます」

ただし、重度な歯周炎にまで病状が悪化してしまうと、完全に元の状態に戻すことは難しいという。それだけに歯周病にかかってしまったら、早めの治療が大事なのだ。

「歯周病などの病気は、さらにED、糖尿病、脳梗塞、アルツハイマー病、認知症などの病気や合併症を引き起こす原因になる可能性も高いのです。そのひとつの原因はやはり、プラーク。口の中から血管や呼吸器に進入し、全身に回ってしまうことがあるのです。

炎症歯肉で作られた炎症性サイトカインが血糖値を下げるホルモンの働きを邪魔し、結果的に糖尿病を引き起こす可能性があるわけです」

■食べカスの除去だけが歯磨きではない

すでに歯周病の兆候がある場合は早く専門医の診断を受けるとして、まだ軽度の場合や予防するためにはどうすればいいだろう。

「理想は歯科医で年に2、3回の検診を受けること。しかし、それも現実的にはなかなか難しいでしょうから、正しい歯磨き(ブラッシング法)を覚えることが重要になります」

電動歯ブラシに頼りきりはよくない

歯磨きといえば、普通は“食べ物の残りカスを取り除くこと”、もしくは“口臭予防”のためというイメージだが、小方先生は、「それだけではなく、プラークを落とすことが重要です」という。歯周病の原因がプラークなのだから当然の話なのだが、その知識がなければ、それをイメージするのは困難だ。

「歯と歯肉の境い目に歯ブラシを45度の角度で当て、歯周ポケットに毛先が入ることを意識しながら、1mmぐらいの幅で横に小刻みに振動させ、歯茎を磨きます。これは“バス法”と呼ばれる磨き方で、鉛筆を持つように歯ブラシを握ると磨きやすいはずです」

歯ブラシのオススメはライオンの歯科医院用「デントイーエックスシステマ」。

「私たち歯科医が推奨している歯ブラシで、非常にブラシの目が細く、やわらかいことが特徴です。そのため、歯周ポケットの中までブラシが入りやすく、歯肉に与えるダメージも少なくて済みます。主に歯科医院などで買うことができます。

もし、これが入手しづらければ、近所のドラッグストアやスーパーマーケットでも購入できるタイプの『デンターシステマ』でもよいでしょう。“ふつう”か“やわらかめ”タイプを選んでください」

また、小方先生によれば、「それでも食べカスやプラークは必ず残ってしまう」から、糸のようなもので歯間を掃除する“デンタルフロス”や“歯間ブラシ”を併用すると、さらに効果的だとか。歯間ブラシは、歯と歯の間に広く隙間ができている人用で、ブラシの大きさもいろいろ。自分に合ったサイズのものを使うとよいそうだ。

また、電動歯ブラシは手で動かすより細かく振動するので、「これを使えば完璧」などと思いがちだが、どうしても磨き残しが出てしまうため、頼りきりにするのはよくないのだとか。お口クチュクチュする系の“洗口液”も補助にはなるが、完璧な予防にはならない。やはり万全を期すにはいくつか組み合わせるのがいいだろう。

歯がないと「死亡率が高くなる」というデータもあるという。もし歯周病になってしまったら、たとえ生活に支障はなくても早めの治療が必要だ。

(取材・文/井出尚志[リーゼント] 鈴木晴美)

●小方頼昌(おがた・よりまさ) 日本歯周病学会の副理事長にして、日本大学松戸歯学部では歯周治療学講座を担当する教授。歯周病学会の専門医であり、指導医でもある