「おうちでドック」では、真空採尿管を採用することで郵送では取り扱いが難しかった尿検査を可能にした 「おうちでドック」では、真空採尿管を採用することで郵送では取り扱いが難しかった尿検査を可能にした

トレーニングジムが増えるなど人々の健康志向が高まる一方で、近年は20代や30代でも若年性心筋梗塞や糖尿病など生活習慣病に起因する病気の発症が増えている。

自身の健康は気になるものの、わざわざ人間ドックを受けに行くのは面倒だという人も少なくないだろう。しかし、各種がんや生活習慣病の可能性を病院に行かずにチェックできるサービスがある。それが「おうちでドック」だ。

昨年11月からサービスを開始。送られてくるキットで血液と尿を採取し、検査機関に送付すると約2週間後に検査結果が届く。男性の場合は7種、女性は9種のがんと動脈硬化、糖尿病、肝臓疾患、腎疾患、痛風といった生活習慣病のリスクチェックが可能だ。血液を採取といっても、指先に極小の針を刺して数滴だけで痛みもない。

当然、自宅で行なうためレントゲンや胃カメラなどの映像検査はない。しかし、価格は19800円(税別)と安価で、一般的な健康診断よりもがんなど多くのリスク検査ができる。病院で受ける人間ドックは3~5万円かかるため費用の面で躊躇(ちゅうちょ)する人も多いが、これなら受診のハードルも下がる。

また、自分の好きなタイミングで行なえるため、病院に予約をしてわざわざ足を運ぶという面倒くささも解消される。

「弊社のターゲットは、専業主婦など病院で受診したくてもハードルが高くて定期的に人間ドックや健康診断を受けていない方々です。正社員はともかく、派遣企業の健康保険組合に入っている派遣社員の方々でも有給を取って検診に行くよりも別のことをしたいという声もよく聞きます。

それはフリーランスを含む自営業の方々もです。私の義理の親はふたりとも自営のサービス業ですが、義父ががんになっても『忙しいから』と義母は検診に行かないんです。そういった方々に価格も時間も負担なく受けてほしいということでサービスを展開しています」

そう話すのは、同キットを販売するハルメク・ベンチャーズの松尾尚英氏だ。

特に不調がなければ大丈夫…と油断している人は少なくない。「まあ、そのうち…」と大学卒業以来、フリーランスで10年間、健康診断を受診していない記者もそのクチだ。多少、体調が悪くても、家で休んでいれば治ると思っていたりする。

「問い合わせの中には『病気が見つかるのが怖い』という声もあって、検診を受けない理由は多種多様なんだなと思います。ちなみに購入者のうち、かなりの人数がまだ検査をしていないんですよ。せっかく購入いただいたので、是非、一時も早く検査をしていただきたいのですが…(苦笑)」

「買って満足」「やった気になる」タイプの人間にとっては共感できる話だ…。ただ他にも、病院が遠かったり、引きこもって家から出られないなど、様々な理由で健康診断が受けられない人が利用しているそうだ。

しかし、今までも郵送タイプの検査キットは存在した。そうした従来のものとは何が違うのか。

「従来は『生活習慣病』と『がん検査』が分かれていました。また尿検査も基本的に行なっていなかったというのが現状で、血液検査と一緒にできるのは弊社が日本初です。弊社のキットでは3つとも同時に行なうため手間が省け、詳しく検査できます」

 ハルメク・ベンチャーズの松尾尚英氏 ハルメク・ベンチャーズの松尾尚英氏

尿検査と血液検査が同時にできるのは初

これまで郵送では尿の取り扱いが難しかった。どうしても菌が空気と触れ合うことで増えてしまい、検査の精度に影響が出てしまうからだという。しかし、同社では真空採尿管を採用することで解決した。

「基本的に生活習慣病は血液検査だけでもある程度リスクはわかるんです。しかし、医師に聞くと『尿検査は絶対必要』という意見も根強いため、当社のキットでは血液と尿を組み合わせて検査しています。通常の採尿方法だと雑菌が尿の糖分に影響を及ぼして、実際よりも血糖値が低く出てしまうんです。そのため真空状態で採尿することで4日くらいであれば影響がでないようにしました」

ちなみに、採血キットは厚生省が認可したものを使用、また検査も日本やアメリカ、EUで特許を取っているなど、精度に関しては通常の人間ドックと遜色はないそう。

 採取した血液をろ過し、検査できる状態にする 採取した血液をろ過し、検査できる状態にする

さらに、大きな特徴はアフターサービスにある。「希望者への医師からの説明」と、がんが発覚した場合の「セカンドオピニオンの無料実施」だ。特に、医学の知識がないユーザーにとって、検査結果を見るだけよりも医師から説明されたほうが理解も深まる。

「郵送検査であり、電話での説明なので『診断』はできないですが、希望者には検査結果が悪いところに絞って15分ほど医師から説明やアドバイスを行なっています。医師が結果を見て、普段の生活習慣などを聞きながら、『こういう運動したほうがいい』『こんな食事を心がけてください』などその人に合わせて伝えています」

自分のタイミングで検査ができ、アドバイスまでくれる――「ここまでしてくれるなら、多少悪い結果が出てももう安心」と思ってしまうのが面倒くさがりの悪いところだ。少なくとも記者は「これだけ毎回受けておけばいいだろ」と思ってしまった。

しかし、松尾氏は「これはあくまで、きちんと病院で人間ドックを受けてもらうためのきっかけを作るもの」だと話す。

「キットでは画像検査もないですし、複合的な検査はできません。また、対面で問診を行なっておらず、悪い病気の予兆があっても原因まではわかりません。ただ、これが自分の体を見つめ直す適切なきっかけになって運動や食事を気にしたり、医療機関で人間ドックや詳細な検査、医師の指導や治療を受けていただきたいというのが弊社のスタンスです」

お金や時間を理由に健康診断や人間ドックを受けていない人だけでなく、もしそういった人が周りにいればプレゼントという形で渡すのもひとつ。気になる人は試してみて損はないはずだ。

★後編⇒10年間、健診をサボっていたアラサーが郵送“人間ドック”を体験。その意外な結果とは…?

(取材・文/鯨井隆正)

■おうちでドック https://dock.ouchide.biz/

 おうちでドックの検査キット おうちでドックの検査キット