旧ソ連軍の帽子やコートだろうか。マニアにはたまらないだろうなー! それにしてもコート重っ!

ウクライナのリヴネにある恋人の聖地「愛のトンネル」にひとりで行き、まんまと蚊に愛されまくった私。いつか恋人とリベンジしようと心に決めて、次の街へ移動することにした。

宿で出会った日本人男子の阿部さんと駅へ向かう途中、芝生の上で地元の人が雑貨などを売っているのを見つける。列車出発まで少々時間があったのでしゃがみ込むと、そこには古いピンバッジが並んでいた。

ヴィンテージというべきか、どうやら旧ソ連時代のものであろう。阿部さんは元々軍艦デザインのピンバッジを集めているそうで、船の絵柄に見入っている。私はこういった類のものに全く興味がなく、ガラクタのようにしか見えなかったのだが、

「ほらこれ、ロシアの革命家レーニンだよ」

イワンと名乗る売り手のオヤジがそう言って見せてくれる。軽い気持ちでピンバッジを受け取ると、「私を買って!」......そんな風に聞こえてくるではないか。

ひとつ、10~20フリブニャ。約40~80円。激安である。

お買い上げだ。

イワンおじさんの売るピンバッジイワンおじさんと私

一度財布の口が開くと、普段禁欲しているからもあってか余計に買い物が止まらなくなる私。小雨が降り始めるのも気にならずに、いつのまにか手の中に16個のピンバッジを選んでいた。レーニンが何をした人かもよくわからないのに、いつのまにか虜。

ところで、正直こんな安くてイワンおじさんの生活が大丈夫なのか心配になる。ウクライナの平均月収3万円のうち、この日私たち旅人からの売り上げ1200円くらいが足しになれば良いのだが......。

そろそろ列車が発車する時間だ。

リヴネからリヴィウへの移動はこの列車で3時間ほどウクライナの物価はやっぱり激安で、私は6フリブニャ(約24円)の菓子パンを買って列車に乗り込んだ

リブネから3時間程度でリヴィウに到着し、鉄道駅から今度はトラムに乗って街の中心リノック広場へ。かつてこの広場の周辺は上流階級の人々の居住区であり、リヴィウの政治や経済の中心となっていたそう。

「何ここ、オシャレ。ウクライナにはこんなオシャレタウンが隠れていたのか」

ポーランドとの国境近くにあるリヴィウの歴史地区は、古い街並みが残っている古都であり世界遺産に登録されている。ウクライナ文化が残る、日本で言う京都のような場所で、「ウクライナに来たらリヴィウは絶対行きなよ!」と、地元の人がすすめる国内人気ナンバー1の街。

コンパクトな街の中心部には見所がまとまっていて周りやすく、カフェやレストラン、お土産屋などが並んでいて観光客で賑わっていた。ちなみに、旧市街のど真ん中にある私の泊まる安宿は1泊125フリブニャ(約500円)とリーズナブルで、旅人にとっても好感度が高すぎる街である。

リヴィウ歴史地区は1998年世界遺産に登録されているリヴィウの街中

見所には様々な博物館やオペラなどがあり、ハイソな様子でも拝もうかと思ったが、今の私たちの興味はハイソより旧ソ! きっとここにも珍しいピンバッジが売られているのではないかと、民芸マーケットを目指した。

すると、予想は当たっていて、量も種類も格段に多かった。革命家レーニンだけではなく詩人プーシキンなど著名人ものや、各都市の名前が入ったもの、オリンピック競技のもの、記念バッジなどいろいろ。

いつのまにかすっかりピンバッジにぞっこんになっていた私は、目を輝かせた。特に年号の刻まれたオリンピック競技のデザインが気に入り、夢中で手に取っていく。

ほかにも人工衛星やロケット打ち上げ記念、ウクライナで自分が訪れた土地、それからレーニンもさらに追加(笑)。阿部さんも相変わらず軍艦ものを増やしていく。

私たちはピンバッジを爆買いした。

リヴィウの民芸マーケットピンバッジ大量買い。私はどうやらオリンピックの記念バッジが好きみたい

それだけでは飽き足らず、別の民芸品マーケットもはしご。ミゲルおじさんのコレクションはあまりにも多く、しゃがむ姿勢では足がしびれてしまうので、地面に座り込んで吟味。

手の中のバッジは20個、40個......と増えていき、阿部さんと同じ物が欲しい場合はジャンケンで取り合った。私たちはふたりで合計100個を超えるピンバッジを手にしたのだった。

マーケットをはしごイワンおじさんの店手前の船の柄のものは阿部さんの軍艦コレクション

ピンバッジに満足すると、ついには切手にまで目が行くようになっていた。昔、父か母かの切手コレクションを見たことがあったが、子供心になぜ切手なんかコレクションするのだろうと思っていた。

しかし、そこにある切手はとても魅力的なデザインが多かった。またしてもオリンピック時のものや、カラフルな色づかいのベトナムやキューバのもの、チェコやプラハのおとぎ話の挿絵のようなかわいいデザインもあった。

それからリヴィウが過去にポーランド領だったことがあったのも理由だろうか、ポルスカ(ポーランドという意味)と書かれたものも多く見かけた。そしてわが日本の桃太郎が描かれたものまで! 小さな切手の中には歴史背景や、その国独特の文化や芸術が描かれていてとても趣があった。

「1枚2フリブニャ(約8円)。アルバムごと1冊なら500フリブニャ(約2000円)よ~」

世界の珍しい切手がコレクションされているアルバムを思わず買ってしまいそうになったが、重そうなのでやっぱ我慢! 私はまたしてもオリンピック競技ものを優先的に選び、厳選26枚を購入した。

美しいリヴィウの街は「埋もれた宝石」と呼ばれているそうだが、私はここで「埋もれた宝物」を見つけ、久々に買った世界の旅土産に満足したのだった。

「今度の東京オリンピックで記念ピンバッジと記念切手が出たら、買っておこうかな......」

厳選26枚の切手

★旅人マリーシャの世界一周紀行:第207回「ウクライナは『マゾ』発祥の地? 本場『マゾカフェ』裏メニューとは......」

【This week's BLUE】
コレクションの中から青いものだけピックアップ!
厳選26枚の切手

●旅人マリーシャ
平川真梨子。9月8日生まれ。東京出身。レースクイーンやダンサーなどの経験を経て、SサイズモデルとしてTVやwebなどで活動中。スカパーFOXテレビにてH.I.S.のCMに出演中! バックパックを背負う小さな世界旅行者。オフィシャルブログもチェック! http://ameblo.jp/marysha/ Twitter【marysha98】 instagram【marysha9898】

★『旅人マリーシャの世界一周紀行』は毎週木曜日更新! ★