世界で5番目に小さい国。天空の城塞都市サンマリノ。

皆さんボンジョルノ! コメスタイ?(イタリア語で、「こんにちは! 元気?」)

知人の誘いでナポリを目指している私ですが、イタリアに来た理由はもうひとつある。それはイタリアの中に存在する、世界で5番目に小さい国であり、かつ世界最古の共和国へ行くため。

イタリアの中には独立した国がふたつあり、ひとつはローマから行ける世界最小国バチカン市国。そしてもうひとつが今回行くサンマリノ共和国である。

面積は約61平方キロメートル、東京は世田谷区と同じくらいの大きさで人口は約33000人。建国は西暦301年、マリーノという石工がキリスト教徒迫害を逃れるためこの地にたてこもり共同体を作ったという伝説が残されている。

国の中に国があるってなんだか不思議。もしも世田谷区がひとつの国だったら......って想像してみてください。

サンマリノ行きバスの車窓。ティターノ山を登って行くサンマリノ到着。何を訴えているのだろうか

拠点となる街、リミニからはバスで約50分。特にパスポートチェックがあるわけでもなく、気付いたらいつのまにか国境を越えていた。

首都サンマリノは標高700m以上のティターノ山にあり、中世の街並みが残る石造りの城塞都市。城壁から見下ろす街並みはオレンジ屋根が並び、ヨーロッパで何度も見てきたジブリの世界のよう。城内はイタリア国内外からの観光客にあふれ、まるでテーマパークの映画セットのような街中は、とても"国家"には見えない。

目的もなく歩き出すと、お土産屋ばかり並ぶ中まず目に入ってきたのは、OMEGAの時計店やオシャレなブティックなど高級感のあるお店だった。なんでもサンマリノは消費税がなく、買物のためにやってくるイタリア国民も多いんだとか。

それから、目に飛び込んできたのは、イケメンの並んだ写真! と思ったらサッカーチームの写真とグッズ。こんな小さい国なのに、サッカーチームもあるなんて、さすがイタリア......らへん!(あくまでもイタリアではない)

中世の街並みが残る石造りの城塞都市サンマリノのサッカークラブチーム「サンマリノ・カルチョ」。イケメン選手多っ!

もちろん絵葉書やマグネット、ピンバッジや記念切手、コインの類も多かったが、なぜか日本刀が売られているのが目を引く。中世の世界や要塞というところで、騎士を連想する武器の類はやはり人気土産なのだろうか。おもちゃの弓を放つ少年を多く見かけたが、日本刀を振り回す者にはさすがに出会わなかった。

なぜか日本刀が売られている

なかなかリッチな観光地という感じのサンマリノは、GDPの半分以上が観光収入。しかし、実はあまり観光資源がなく見所は3つの砦。国旗にもそれらが描かれていて、国のシンボルとなっている。

最も古い第1の砦グアイタは1975年まで牢獄だったそうで、第2の砦チェスタは現在中世の武器博物館になっている。砦から砦をつなぐ道のりは、小規模な万里の長城みたいな石段(行ったことないけど)で、そこを歩くと私の頭の中に『ドラクエ』のBGMが流れ始めた。

第1の砦のグアイタは11世紀に造られた最も古い砦第2の砦チェスタへの道のり断崖絶壁に存在する砦を見て、スリランカの天空宮殿シーギリアロックを思い出した

そして第3の塔モンターレまでの道のりはトレッキングコースのようになっていて、草木のトンネルはまるで『不思議の国のアリス』の世界観。吸い込まれるように先へ進んで行くと、人混みが消えてゆく。

私は、現実世界から引き離され"不思議の国"へ誘われるような気分を心地良く感じた。そしてたまに人とすれ違う度に、現実を避けるようにコースを外れ寄り道を繰り返した。

「今はひとりになりたいの......」

ガヤガヤとした観光地のサンマリノではなく、誰にも邪魔されないサンマリノを感じたい。私は誰もいない静かな木々の影に隠れ、腰かけることにした。

寄り道で見つけた絶景

その場所からは遠く砦が見え、青空の下に――

「アレはなんだ? 鳥だ、飛行機だ......、いや人間だ!

強風が心配であったが、そんなことはよそに鳥のように優雅に空を舞うパラグライダー。

「人って飛べるんだぁ......!」

そんな気持ちでしばし見惚れていると、風に乗って彼らの会話が聞こえてくるではないか!

「わ、なんかスゴイ現象!」

と、本気で思っていたらそれは近くを歩く人たちの会話だった。(エヘヘ)

あまりにも優雅に空を舞うパラグライダー

しかし、そこは太陽が降り注ぐ音さえ聞こえそうな静寂な空間で、風の音、草木がすれる音、鳥の声など、普段は気にもとめぬような音たちが私の耳に気持ちよく響いた。

よし、ここでひとりランチにしよう。ランチと言っても、宿の無料朝食からテイクした黄色い桃である。ガブリとかぶりつくと、CMのような軽快な音を立てて果汁がしぶきをあげた。

咀嚼(そしゃく)音が脳に響き渡り、ひときわ美味しく感じる。ひとりランチ、寂しくはなかった。むしろ、五感が研ぎ澄まされた状態で「食べる」という行為が気持ち良くて仕方なかった。

第3の砦モンターレを見ながらひとりランチ

その様子を動画に撮っていたのだが、後で見たら思いがけず、最近流行りのASMR動画の撮影に成功していた。食べ物をクチャクチャ食べるクチャラーは嫌いだけど、潔い咀嚼音というのはこんなにも心地良い音なのか。

※ASMRとは、聴覚や視覚への刺激によって感じる心地良い感覚。正式な日本語訳は今のところ存在しない。

リフレッシュした私は第3の砦モンターレを見届け、再び観光客のあふれる街中へ戻る。歩き疲れて街の中心リベルタ広場で腰かけ、鞄からバジルを取り出すと、まだ五感が研ぎ澄まされた状態なのか、緑の香りが強烈に鼻を突き刺した。

そしてそれを食べると口の中に新鮮なバジルの風味が広がる。ムシャムシャという咀嚼音がこれまた気持ちが良い。ただの草なのに、まるで『ドラクエ』の薬草のように体力が回復した。

こうして私は世界で5番目に小さい国で、思いがけず五感を刺激されるASMR体験をすることとなった。イタリアの中に浮かぶ不思議な独立国の絶景がそうさせたのか、小さな国で感じた大きな収穫だった。

第3の砦モンターレは、見張り塔のよう街の中心リベルタ広場でバジルを食べる

【This week's BLUE】
城塞でできた額縁に絵画のようにおさまる少女

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●旅人マリーシャ
平川真梨子。9月8日生まれ。東京出身。レースクイーンやダンサーなどの経験を経て、SサイズモデルとしてTVやwebなどで活動中。スカパーFOXテレビにてH.I.S.のCMに出演中! バックパックを背負う小さな世界旅行者。オフィシャルブログもチェック! http://ameblo.jp/marysha/ Twitter【marysha98】 instagram【marysha9898】

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