ターコイズ色に輝く「若い男女の霊の行く湖」と、奥に見えるのが赤と言われているが実際は深緑だった「罪人の霊の行く湖」

インドネシアの朝食はバナナパンケーキ。秘境バジャワの安宿でも相変わらずそうであったが、作り手によってスタイルが異なり、宿主のマルセリーノが作るそれは生地が少しカリっとしてとても美味しかった。

マルセリーノ宅のバナナパンケーキ。フレッシュジュース付きは豪華。うれしい!

さて、先日はラブアンバジョからバジャワまで飛行機でスっと飛んできたが、今回は久々のバスで7時間の陸路移動だ。

次の目的地はフローレス島中央部にあるモニという小さな田舎町。そこを拠点に、青、緑、赤と"色の異なる3つの湖"がある「クリムトゥ山」を目指すのだ。

これからしばらくマークとルイーザと旅をすることにした私は、彼らと一緒に早朝バスを待った。

「ハレルヤって名前のバスが来るからね~」

バスは番号などではなく、まるでペットか何かのように名前が付けられているようだったが、ハレルヤは約束の時間に来ず。しばらくすると派手なスプレー画で装飾された別のバスがやって来て、ハレルヤは来ないからこれに乗って途中のエンデという街で乗り換えるよう指示された。

計画通りにはいかないが、こんなの旅の日常茶飯事なので何も慌てることはない。

バスに乗ってモニまで7時間くらい

その後もバスは客が集まるまで同じ町の中をグルグルと何周もし、なかなか先へ進まない。でも、窓から入ってくる南国の風が心地良く、「まあいいか」なんて思ってしまう。

やっと出発すると、車窓にはヤシの木がバンバン茂り、ライス畑は太陽の光を浴びて輝いている。

車内で流れるレゲエミュージックの音量が大きくうるさいのだが、それが妙に「ああ、私は今インドネシアにいる。異国を旅してる」と、旅情を盛り上げてくれるから不思議である。

乗り換え地のエンデに到着すると、今度はネイマールのスプレー画が描かれたバスで、ドアにはスポンジボブのステッカーが貼られていた。

今度の曲は現地の歌謡曲らしく、これを運転手の独断で大音量でかけるセンスが理解できないが、私たちのバス旅のBGMは彼に託された。やれやれと思いながらチラっと隣を見たら、マークもルイーザも自分のイヤホンで別の曲を聴いていた。

ネイマールのスプレー画が派手。イタ車の部類って言っても良い感じ?(笑)

しばらくするとマークはどうしても空腹に我慢がならないようで、この辺に食べ物を買えるところはないかと騒ぎ出す。

かなりイライラしていて、同時に節約家でもある彼はとにかく安くてすぐに食べられるものをと、インドネシア人を困らせるイギリス人(笑)。仲間的には「なんかすみません」と思ったけれど、私もお腹空いてたし......、彼のおかげで(?)バスはローカルのパダン料理のワルンに向かい、乗客全員がここで食事をすることとなった。

自由だな(笑)。

パダン料理はスマトラ島の郷土料理の総称で、バリでもよく見かけるインドネシアでは有名な伝統料理。ディスプレイされた何種類ものおかずの中から好きなものを選び、それによって値段が決まる。

鶏肉や臓物系、魚の揚げ物のようなものが多く並んでいたが、どれも茶色いので選びきれず、私はベジタリアンのルイーザと全く同じものにしてみた。

白いご飯の上にカレーのようなものがかけられ、テンペ(インドネシアの納豆)、タフ(豆腐)、揚げたゆで玉子、それにキュウリの薄切りとサンバル(辛味調味料)。別の小皿にシンコンというキャッサバの葉をココナッツミルクで調理した副菜をもらって、しめて1万5千ルピア(120円)とコスパ抜群。

パダン料理屋のおやじ。右に並ぶ皿から好きなものを選ぶ

パダン料理。テンペ(インドネシアの納豆と言われるもの)とタフ(豆腐)と揚げたゆで玉子。結局茶色い(笑)

マークも満足したのか、「ああ暑い暑い。早く宿のシャワーで頭シャンプーしなきゃ~!」と、髪の生えてない頭をさすりながら、持ちネタをかましていた。(もしかしてシャンプー代節約のための坊主だったりして!)

そして満腹でウトウトしてるうちに、やっとモニに到着。

モニの子供たち。カメラを向けると顔を隠したり、シャイなのがかわいい

暇そうにしているモニの少年たち。ジっとこっちを見ている

ルイーザはバス移動に疲れたのか宿で休むと言い、私はマークと散歩に出かけた。小さな町を歩いていると広々とした田んぼで農作物に水やりをしている女性がいたり、売店やレストランがポツポツと数軒。

他に何か売られているとしたら無人のガソリンばかりで、ペットボトルに入って1万ルピア(約80円)か1万5千(約120円)の2択っぽかった。

水やり作業をする女性

無人で売られているペットボトルガソリン
宿から2kmほどの所にある滝を見た後は田舎すぎて特にやることもなく、辺りが暗くなってきた帰り道で1万ルピア(約80円)バクソをすするだけ。

「バクソ」とは肉とタピオカで作られたミートボールのことだが、スープにビーフンなどの麺が入ってニンニクの味が効いているので、私の中ではラーメン的な認識。

途中で店が停電になり真っ暗になったのもおかまいなしで完食し、真っ暗の山道をスマホでライトを照らしながら帰り、翌朝のクリムトゥ山のサンライズに備える。

マークと滝へお散歩。これといって特別な滝にも見えない

バクソ屋。女性がいるところがキッチン「バクソ」はミートボールのことだが、いつも麺類が入っているので私の中ではラーメン的認識

朝4時に起床し真っ暗な中、宿主の運転で私たちは出発。標高約1640mのクリムトゥ山の中腹で、1人15万ルピア(約1200円)とインドネシアにしたら随分高い外国人価格の入場料を払う。

そこからはライトを照らしながら20分かけて湖を目指すが、あまりの暗さに一歩前を歩くルイーザの背中しか見えない。私はその背中をビデオカメラに撮りながら、昔流行った映画『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』を思い出した。

目の前にはルイーザの背中の白いロゴが浮き上がるだけ

20分くらいでビューポイントに着くと、そこにはサンライズ待ちの欧米人や撮影班が陣取り、地元のおばちゃんたちがコーヒーやお菓子、カップ麺などを売っている。

ついに朝日が昇り空が明るくなると、ぼんやりと湖が見えてきた......。

火山ガスの活動によって水中の鉱物が化学反応を起こし、湖の色が変化すると考えられていているが、時期や光によっても色が変わるそう。

地元ではこの湖が祖先の魂が帰る場所だと信じられているそうで、3つの湖はそれぞれ「若い男女の霊の行く湖」が青、「罪人の霊の行く湖」が赤、「老人の霊の行く湖」が緑と言われていたが、実際私が見たものは、ターコイズ、深緑、黒であった。

ターコイズ色に関してはバスクリンのようなキレイな色ではあり、3つの色が異なるのはミステリアスであるが、残念ながら今回私たちが見たものは特別驚くほどの色ではなかった。

湖にモヤモヤと動く霧をまるで死者の魂かのように空想すればそれなりに雰囲気もあるが......、ご飯の10倍の入場料に少しモヤモヤしてしまう我々であった。

ターコイズ色の「若い男女の霊の行く湖」から魂が太陽に向かっているかのよう

深緑色の湖と言われている「老人の霊の行く湖」の方が実際は黒っぽく、周辺には野生の猿がいた

【This week's BLUE】
バスの途中で寄った青い小屋。ナイス睨みのオレンジ屋さんでした。

★旅人マリーシャの世界一周紀行:第235回「インドネシアの秘境で新種発見? 美脚の妖精が飛んできた!」

●旅人マリーシャ
平川真梨子。9月8日生まれ。東京出身。レースクイーンやダンサーなどの経験を経て、SサイズモデルとしてTVやwebなどで活動中。スカパーFOXテレビにてH.I.S.のCMに出演中! バックパックを背負う小さな世界旅行者。オフィシャルブログもチェック! http://ameblo.jp/marysha/ Twitter【marysha98】 instagram【marysha9898】

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