ワインとタパスも有名なログローニョのバルで唯一食べたのはシャンピニオン(マッシュルーム)!

引き続き「#おうちたび」と言うことで、昨年のスペイン旅をお届けしたいと思います。

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図らずもスペインの巡礼路上の街をなぞるように旅をしていた私。これまで数人の巡礼者とすれ違うことはあったが、特に巡礼路の特色を感じたことはなく。

しかし、"巡礼路の交差点"と言われる街・ログローニョに入ると、巡礼のシンボルであるホタテ貝のマークや巡礼の道筋を示す矢印を所々に見つけ、その色濃さを感じた。

路上で見つけた巡礼路のシンボルであるホタテ貝のマーク

ログローニョはスペイン北部のラ・リオハ州の州都。いくつかある巡礼路のルートの中でも人気の「フランス人の道」の通過点にある。

旧市街に入ると、「ワインツーリズム」と書かれた看板に迎えられ、そういえばリオハはスペインワインが有名だったなと気付かされる。エステーリャのような小さな村(街)より観光客が集まりそうであるが、人の姿は少なかった。

「ワインツーリズム」と書かれた少し観光地っぽい旧市街の入り口

街中には「アルベルゲ」という巡礼者用の安い宿泊施設がいくつもある。私が10ユーロという値段に惹かれてたまたま予約していた宿もアルベルゲであった。

入り口にはホタテ貝のマークがあり、「私、何キロも歩いてやってきた巡礼者じゃないけど大丈夫かな?」と、バスに乗ってきた自分を少し後ろめたく思いながら扉を開けた。

宿の入り口にも巡礼のシンボルであるホタテ貝のマーク

チェックイン時に巡礼手帳(巡礼を証明するスタンプ帳)を持っているかと尋ねられたが、持っていなくとも問題はなく中に通された。

アルベルゲには共同の食卓、シャワー室、大部屋には二段ベッドがズラリと並んでいる。巡礼者が寝るためだけに利用するというシンプルな感じ。高い天井で空間にゆとりはあるが、クーラーなどはなく夜の暑苦しさが想像できた。

ベッドには簡単なマットレスと枕にバスタオルが一枚。時にドミトリー宿は「まるで収容所のようだ」とたとえられるが、ベッド数がこう多いと理解できる。

これまでも何度か大部屋(最高40人部屋!)に泊まったことがあるので特に驚くこともなかったが、スペインでは安くて良い宿が続いていたのもあって、お世辞にも寝心地が良さそうとは言えない。

まさに寝るためだけのベッド。荷物を降ろし、一瞬だけ横になると、隣には裸の男が寝ていた。一泊だ、耐えよう......。

大部屋にズラリと並んだ二段ベッド

私のベッドの隣には裸の男が寝ていた
さて、荷物を置いたら街歩きだ。思えばエステーリャでは祭りに夢中だったし、ろくにご飯を食べていない。実はここログローニョ観光の人気ナンバーワンはバル巡り。早速行ってみっか!

大聖堂を過ぎ、バルが並ぶラウレル通りにたどり着くも、時間帯のせいかそこはガラーンとしていた。日中に開いてるお店は1、2軒で、そのカウンターには作ってからだいぶ時間が経過しているであろう乾いたピンチョスが並べられていた。

ログローニョの大聖堂

ログローニョの観光スポット人気ナンバーワンは、バルが集うラウレル通り! 昼間はガラーン(笑)

もうすぐ夕方だから店も開くだろうと、私はウロウロしながらお店のチェックをした。一番人気のマッシュルームのバルは残念ながら休暇中だったので、もうひとつの似たバルが開くのを待った。

夜が近くなりやっと開店したので、マッシュルームのタパスをひとつとカーニャ(グラスビール)を頼み、やっと食べ物にありついた。しかし、先にサンセバスチャンを経験した私には物足りず、また珍しく疲れ切っていたので、はしごする力もなく、スーパーのヨーグルトを路上のベンチでなめて宿へ帰ることにした。

たっぷりオイルとガーリックで調理されたシャンピニオン(マッシュルーム)

夜になるにつれ賑わい始めたラウレル通り

この地に来る人が渡る、ログローニョの玄関口である「ピエドラ橋」

特に何もなくログローニョの1日が終わった。宿の食卓は巡礼者であろうおじさんたちやノートを広げた小学生くらいのグループで賑わっていたが、特に絡みもなく、私は缶ビールを1本飲んでフラフラと寝床へ向かった。

すると、階段の途中で宿のセキュリティーらしき男に話しかけられる。

「この上の階が涼しいから、ついておいで......」

私は疲れていたせいか特に疑問も持たず、言われるがままに男の後をついていった。大部屋の上の階に当たる部屋の扉が開くと、そこにはベッドがふたつあった。

部屋は狭いロフトのようになっていて、真下にズラリと並んだ私たちのベッドを見下ろすことができた。彼は私の方へ扇風機を向けてこう言った。

「下は暑いがここは快適だろう? ひとつベッドが空いているから、ここで寝たらいいさ。特別だ。僕はまだ仕事があるから行ってくるね」

下から見上げたロフト

親切だろうか、疑うべきか。しかし一応、同じ空間の真下にはたくさんの巡礼者たちが寝ているので、声も届くし何かあるわけもないだろう。いざとなったら飛び降りよう。

私は判断力の鈍ったままそこで横になったが、数時間後男が戻ってくると落ち着かず、浅い眠りのまま数時間、朝になるまで待ち、まるで看守の目を盗み脱獄するように、抜き足差し足でその部屋を出てチェックアウトした。

親切だったのかもしれないが、妙に疲れた夜であった。寝不足のまま、街を出る時に足元を見ると、ブドウのデザインが施された道路が目に入った。あ、そういえばここはリオハ。ワインを飲むべきだったな......。そんな後悔を残し、次の街へ向かった。

旅には偶然面白いことがある時もあれば、何もなく過ぎる時もある。この街ではたまたま後者であった。

ふと足元に目を向けると、地面はブドウのモチーフ! さすがリオハ!

スペインワインと言えばリオハ!

★旅人マリーシャの世界一周紀行:第272回「ビルバオの地元カウチサーファーたちとローカル夜遊び」

●旅人マリーシャ(旅人まりーしゃ)
平川真梨子。旅のコラムニスト。バックパッカー歴12年、125ヵ国訪問。地球5周分くらいの旅。コラム連載は5年間半を超える。Twitter【marysha98】 instagram【marysha9898】
女子2人組ユニット「地球ワクワク探検隊」としても活動。Youtube配信や国内外各地のPR活動、旅先のお酒やお話を提供するイベント「旅するスナック」を月2回、東京・虎ノ門で開催。
【https://www.youtube.com/channel/UCJnaZGs8hyfttN9Q2HtVJdg】

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