ホタテを付けて一体どこへ行くの? ホタテを付けて一体どこへ行くの?

今週も「#おうちたび」ということで、昨年のスペイン旅をお届けしたいと思います。

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スペイン北部にある街パンプローナ。宿泊したホステルは無料の朝食付きで、私は朝、共同キッチンに入るとトースト2枚にジャムを塗り、シリアルにミルクを注ぎ、丸々としたオレンジ1個を掴んでおまけにクッキー2枚をテーブルに運んだ。飲み物はオレンジジュースにコーヒーと、安宿の朝食としては充実の内容である。

ホステルの無料朝食。安宿の朝食としては充実した内容 ホステルの無料朝食。安宿の朝食としては充実した内容

それらを食べながら宿泊客たちの様子をぼんやり観察していると、何か違和感を感じた。

「バックパックにみんなお揃いの何かを付けている......。なんだろう? ホタテ(笑)?

それは白い貝殻のようなものだった。この街の有名なお土産だろうか。いや、ここは海岸沿いでも港町でもないし、特に有名なものといったら牛追い祭りのはずだが......。

みんなの荷物に付いていたホタテ みんなの荷物に付いていたホタテ

私の目の前では、昨夜友達になった韓国人女子のジヒョンもパッキングをしていて、彼女のバックパックにもホタテが付いていた。

彼女のバックパックは私のものと同様、わりと小ぶりのサイズで、荷物がたくさん入るような感じではない。彼女は私に、買いすぎたクスクスをこの宿で消費していきたいから一緒に食べないかと誘ってくれた。そのタイミングで私はホタテについてたずねた。

「これ有名なお土産か何か?」

「ああ、これ? カミーノのシンボルよ。カミーノ・デ・サンティアゴ。聖地へ続く道を歩く巡礼の印よ!

ホステルで友達になった韓国人女子のジヒョン ホステルで友達になった韓国人女子のジヒョン

ジヒョンが作ってくれたクスクスサラダ ジヒョンが作ってくれたクスクスサラダ

カミーノ(カミーノ・デ・サンティアゴ=「サンティアゴまでの道」という意味)とは、日本で言う「お遍路」のようなもので、スペイン北西部ガリシア地方に位置するキリスト教の聖地サンティアゴ・デ・コンポステーラを目指す巡礼のこと。サンティアゴには聖ヤコブの墓があり、ローマ(バチカン市国)、エルサレムと並ぶ、キリスト教三大聖地のひとつである。

巡礼路は「ポルトガルの道」「北の道」など様々なルートがあり、中でも人気なのが世界遺産に登録されている「フランス人の道」。フランスとの国境からピレネー山脈を越えてスペイン北部を横断する約800kmの王道ルートである。

アルベルゲ(巡礼者用の宿泊施設)や標識なども完備され、主要都市や歴史的な見所も多いことから巡礼者に最適なのだ。

パンプローナはスタート地点から65kmに位置し、まだまだ先は長い。1日に20~30km歩いてゴールまで約1ヵ月かかるため、夏休みの時期を狙う人が多いのだそう。

巡礼者は宗教的または精神的な理由で旅をしている人が多く、公式サイト(https://oficinadelperegrino.com/en/)では巡礼者の年間の統計を出している。2019年の約35万人の巡礼者は、スペイン人が圧倒的に多く半数近くを占め、次に周辺諸国やアメリカ。アジアで一番多いのが韓国で8位。日本は27位だった。

韓国ではメディアの影響でグッと巡礼者人口が上がったそうであるが、クリスチャンが多いことも理由のひとつだろう。

そして日本人の旅友の間では、スペイン巡礼は旅の一環として話に出ることがあったが、宗教的な理由よりも「自分探しの旅」や「達成感を得るため」というほうが近いような印象を受けた。

私の場合、「スペイン旅のひとつ」として挑戦してみたい気もするが......、重い荷物背負って約800kmは、ちょっと自信ないなぁ(笑)。

右がホタテの付いたジヒョンのバックパック。左が私のバックパック、てゆうか、ほぼデイパック 右がホタテの付いたジヒョンのバックパック。左が私のバックパック、てゆうか、ほぼデイパック

荷物はもちろん軽いほうが良いに決まっている。カミーノの荷物は自分の体重の10分の1が目安と言われているが(4~6kgぐらい?)、それでも毎日担いで歩くにはかなりしんどいだろう。

ちなみに私の普段の旅の荷物の重さは11Kgぐらい。バックパッカー界ではだいぶコンパクトだとは思うが、身長152cmの私が数時間も背負っていれば肩と背中と足腰は悲鳴をあげる。巡礼するにはかなりヘヴィーか、あるいは不可能であろう。

するとそこに、自転車にホタテを付けた日本人女性が現れた!

「え! 巡礼って自転車もOKなの? 歩くこと自体を指すんだと思ってた!」

実はカミーノは自転車で参加することも可能。現地でのレンタルもある。彼女は自転車の先頭にはGoProを付けていて巡礼の様子を撮影しながら旅をしているのだそう。

自転車とはいえ、それもそれでまた大変な面もあると思うが(砂利道とか途中でパンクとか!)、スペインの大地を風切って駆け抜けるのは気持ち良さそうだ。これはやってみたい。

自転車で出発するようこさんを見送る 自転車で出発するようこさんを見送る

他にも、キッチンで会ったロシア人女子のケイトも巡礼途中の宿泊で、歩きすぎて足が痛いからもう1泊していくと言っていたり、気付けば周りは巡礼者だらけ! 数日後、別の街で彼女と奇跡的に再会した時は、私はバス移動なのに彼女はここまで歩いて来たのかと感動した。

現在は新型コロナウイルスの感染拡大によりアルベルゲが営業停止。私がマドリードで知り合ったトムも巡礼に挑戦していたが、先日無情にも中断せざるをえなかったのは残念でならない。

コロナが収束してからの話にはなるが、私はいつかこのカミーノに旅として挑戦したいと思っている。しかし約800kmはちょっと......。えっと一番短いコースは何kmかしら......? 途中からじゃダメ?(笑)。

と、ひよっていたら朗報。サンティアゴまでの最後の区間を、徒歩なら100km、自転車なら200km完遂で巡礼証明書をもらえるんだとか。好きな場所から始められ、中止も再開も自由だし、複数回に分けて歩くことも可能なんだって! 希望が湧いてきたぞ!

それから、気になるホタテの理由は諸説あるが、「正確な起源はまったくわからない」そうだ。

恥ずかしがり屋で一緒に写真を撮れなかったケイト(ピンクの服) 恥ずかしがり屋で一緒に写真を撮れなかったケイト(ピンクの服)

★旅人マリーシャの世界一周紀行:第268回「スペインの小さな街で暮らす日本人と『ミニ牛追い祭り』」

●旅人マリーシャ(旅人まりーしゃ)
平川真梨子。旅のコラムニスト。バックパッカー歴12年、125ヵ国訪問。地球5周分くらいの旅。コラム連載は5年間半を超える。Twitter【marysha98】 instagram【marysha9898】
女子2人組ユニット「地球ワクワク探検隊」としても活動。Youtube配信や国内外各地のPR活動、旅先のお酒やお話を提供するイベント「旅するスナック」を月2回、東京・虎ノ門で開催。
【https://www.youtube.com/channel/UCJnaZGs8hyfttN9Q2HtVJdg】

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