引き続き「#おうちたび」ということで、昨年の旅の続きをお届けしたいと思います。
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弾丸パリ20時間のトランジットを終え、次に向かうのはベラルーシ。初めて訪れる国である。気付けば124ヵ国目。これだけ周っても未知の国に行く時はやっぱりドキドキする。
ベラルーシ共和国は東ヨーロッパに位置し、ロシア、ウクライナ、ポーランド、リトアニア、ラトビアの5ヵ国に囲まれる内陸国。大きさは日本の約半分で、人口約950万人。国家語はベラルーシ語とロシア語であるが、主にロシア語が使われている。日本語では「白(はく)ロシア」と呼ばれることもあるそうだ。
1986年、チェルノブイリ原発事故により被害を受けたことは比較的知られているであろうか。かつてはロシア帝国やソ連、ほかにもポーランド、リトアニアの領土になったことがあり、ソ連崩壊後の91年に独立。
94年から26年間も大統領を務めるルカシェンコ氏は「欧州最後の独裁者」と呼ばれ、最近のコロナ禍では「ウイルスにはウォッカやサウナが効く」「アイスホッケーをしよう」などの異色な発言で注目を集めた。
5月にはコロナ感染者数2万人超の中、戦勝75周年の軍事パレードを決行。しかもマスクなし! 来月8月9日に控えた大統領選の行方が気になるところである。
さて、私が同国を訪れたのは去年の夏。
パリから乗り込んだのは、ベラヴィア航空の小型航空機「EW-400PO」、「エンブラエル195」シリーズ(約110席)。
飛行機は少し遅延し、首都ミンスクに着いたのは22時頃。以前は入国が厳しかったが、2017年から日本を含む74ヵ国はビザなしで30日滞在が可能となった。入国審査では虫眼鏡でパスポートをジロジロと見られたものの、すんなり入国。
その夜は、事前にカウチサーフィンで連絡を取っていたトルヤという男の家にステイする予定だった。これまでの旅でも何度か利用しているが、カウチサーフィンは旅人と現地の人のつながりや、主に宿泊を提供し合うコミュニティアプリ。
私はそのおかげでスペインにたくさんの現地の友人ができ、今回も彼のレビューをチェックした上で泊めてもらう判断をしたのだが、よくよく考えたら"初対面で家に泊まる"のは初めてだ。今さら少し不安......。
どちらにしろ到着の連絡をしなければならないが、空港でWi-Fiゲットならず。とりあえず20ユーロだけ両替して急いで街の中心部に出ることにした。
中心駅に到着するが、深夜のためマクドナルドとKFCが開いているのが唯一の救いといった様子。フリーWi-Fiもつながらないし、SIMカードを買えるようなところもない。
治安の読めない夜の街をウロウロもできないし、降り始めた雨も土砂降りに。なんだかもう最高に困っていると、駅のキヨスクがなんと野良Wi-Fiを飛ばしていた! 助かった!
なんとかトルヤに連絡がつくと、もう24時を過ぎていたがすぐに車で迎えにきれくれた。ジャークイ(ベラルーシ語でありがとう)!
その時はすでに、初対面の不安よりも真っ暗な知らない国で、ひとりポツンとしていることのほうが不安だったため、私はもはやお父さんが迎えにきてくれた子供のような気持ちで彼の車に飛び乗った。
トルヤは家族がモスクワにいる間、ここでひとりで暮らしていて、私のような旅人に空いている子供部屋を貸しているそう。年齢は30代くらいの優しいお父さんといった感じで、穏やかで物静かな雰囲気であった。
この日は遅かったので、遅れたお詫びと初めましての挨拶をして、ベラルーシの伝統織物柄のクッキーをかじり眠りについた。翌朝は朝食を用意してくれ、仕事に出るついでに車で私を街中へ送ってくれた。
「見所はスタジアムと図書館くらいかなぁ。日本に比べたら大したことないと思うけど(笑)。さあ、ミンスクを観光しておいで!」
トルヤはそう言って、「ベラルーシ国立図書館」の前に私を降ろした。旧ソ連圏独特の四角い集合住宅が並ぶ中、斜方立方八面体の建築は目立っていて、展望デッキからは街並みが見られるらしい。
しかし、天気も悪かったので、私は隣の大型ショッピングモールに行き、SIMを手に入れ、地下のスーパーで買い物をした。お菓子のパッケージがオシャレだったので、プロテインバーやスナックを爆買い。
実はミンスクには会いたい人がいた。以前ドバイのユースホステルに宿泊した時、宿スタッフをしていたジェニャというベラルーシ女子で、私の唯一のベラルーシ人の知人である。
当時、宿スタッフと客の関係だったので、すごく仲が良い旅友というわけではなかったが、ほんの1時間程度なら会えると笑顔で私を迎えてくれた。
ベラルーシは美人輩出国としても有名だが、彼女もご多分にもれずそうであった。オレンジ色の髪と青い瞳。腕にはベラルーシの伝統文様のタトゥーが彫られていて愛国心を感じる。
「ドバイでは働いてたホステルと同じビルに住んでいたのよ。生活費はほんと少しで、個人で英語の先生をしてお金を貯めて、帰国の前に彼氏とパナマ、南米、中米と旅をしたわ。
でもブラジルでお金の話で喧嘩になって、彼が怒りでクレジットカードを折ったことが致命的で破局したってワケ!」
国を超えてもガールズトークで盛り上がるのは恋バナで、私も元彼との忌まわしい過去を話すと仲間意識が強くなり、彼女とここで再会したのも何かの縁のように感じる。今年の4月に日本で会おうと約束したが、残念ながらそれは叶わず。
ミンスクの街をしばらく歩くも特にインパクトはなかったが、緑が美しく穏やかで、治安も良く、すれ違う女性はやはり美人が多いように感じた。引き続き、もう少しこの街を旅してみようと思う。
★次回更新予定は7月30日(木)です。
●旅人マリーシャ(旅人まりーしゃ)
平川真梨子。旅のコラムニスト。バックパッカー歴12年、125ヵ国訪問。地球5周分くらいの旅。コラム連載は5年間半を超える。Twitter【marysha98】 instagram【marysha9898】
女子2人組ユニット「地球ワクワク探検隊」としても活動。YouTube配信や国内外各地のPR活動、旅先のお酒やお話を提供するイベント「旅するスナック」を月2回、東京・虎ノ門で開催。
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