ミンスクの観光名所!?「世界一インパクトのあるKFC」

引き続き「#おうちたび」ということで、昨年の旅の続きをお届けしたいと思います。

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"ヨーロッパ最後の独裁国"と呼ばれるベラルーシ共和国。旅人の心をくすぐる未知の国だが、2018年よりビザが緩和され、私はついに入国した。

首都ミンスクで、私はカウチサーフィンで知り合った現地人、トルヤにお世話になっていた。ある日の夕方、彼が仕事終わりに街案内をしてくれるということで、街中のKFC(ケンタッキーフライドチキン)で待ち合わせ。

到着すると、そのKFCがすごい。建物の上部いっぱいに旧ソビエト時代の石の彫刻がドドーン! 20人ほどの無表情の人物像がこちらに向かってくるような迫力あるデザインだ。

彫刻は1960年代に作られた作品で、その名も『Solidarity(連帯)』。旧ソ時代に人気があった社会主義リアリズムのスタイルだそう。

ベラルーシにKFCがやってきたのは2015年なので、元々あったこの建築にKFCが後から入ったわけだが、旅人の間では「世界一インパクトのあるKFC」と言われ、名所となっている。

地下鉄ネミガ駅の近くの交差点に面した「世界一インパクトのあるKFC」

彫刻家アナトール・ヤフィモビッチ・アルシモビッチによる作品『Solidarity(連帯)』

荘厳な彫刻と、その下で微笑むカーネルおじさんとのギャップにまんまと圧倒されたところで、トルヤと合流。ここからは彼のミンスク街歩きツアーの始まりだ。

ベラルーシは1991年にソ連から独立した国で、先ほどのKFCをはじめ、街には「十月広場」「レーニン像」など、旧ソの歴史が色濃く残る見所がたくさんある。一方で、独立後に建てられた近代的な建築物や、新しい息吹を感じさせるスポットも誕生しているそうだ。

私たちはまずスヴィスラチ川沿いの小高い丘の上に登り、歴史ある「聖霊大聖堂」を眺めつつ、周辺のベラルーシ料理店に腰を下ろした。

緑屋根の聖霊大聖堂。1633年にカトリック教会の修道院として建てられ、1852年にロシア正教の教会になった

丘の上から見たミンスクの街の景色

「ミンスク名物のドラニキは食べたかい?」

ドラニキとは、ベラルーシの郷土料理ですりおろしたジャガイモを焼いたパンケーキのようなもの。ベラルーシの主要農産物はジャガイモで、"第2のパン"と言われるほど。

私はベラルーシのビールと、トルヤのおすすめでサーモンの乗ったドラニキを頼んだ。揚げ焼きしたハッシュドポテトのような軽い食感で、ハーブの混ざったサワークリームと合わせるのが"旧ソ飯"ぽくて、なかなか気に入った。

ベラルーシの郷土料理ドラニキ

腹ごしらえの後は、いよいよトルヤのイチ推し(?)「ディナモ・スタジアム」へ。1934年に完成し、1980年モスクワオリンピックではサッカー競技会場として使用され、現在はFCディナモ・ミンスクの本拠地となっている。

2012年より改修工事され、再オープンしたスタジアムは旧ソ感あふれる街並みからは想像もつかない近未来的な作りとなっている。偶然、従業員らしき人を見かけたので、中を見学して良いか聞くと快く入れてくれた。

トルヤも物静かで穏やかな人物だが、総じてベラルーシの人々は優しい印象だ。

近未来的なディナモ・スタジアム。収容人数は約2万2千人

ラッキーなことに内部も見せてもらえた! 左はお世話になっているトルヤ

門にはオリンピック五輪のデザイン

スタジアムからさらに歩いて行くと、古い倉庫街の一角をリノベーションしたエリアにたどり着いた。カストリチニツカヤ通り(オクチャブリスカヤ通りとも言う)沿いに、壁に描かれた巨大なストリートアートが壮観だ!

2014年、ブラジル大使館主催のストリートアートフェスティバルをきっかけに、このエリアは青空ギャラリーに生まれ変わったそう。

四角く平らな旧ソ連の建物は、確かにキャンバスにピッタリだ。絵の大きさには圧倒されるが、屋外でありながらもとても静かで、隠れた美術館のような雰囲気であった。

「この辺はITを勉強する学生たちが集まるエリアなんだよ。ベラルーシは実はIT産業が盛んでね。ITエンジニアは人気の職業になっていて、給与相場は1600米ドル。

この国の平均月収は良くても500米ドルで、先生や販売員とかフレッシュマンだと300米ドルだから、それに比べてとても高収入だよね。それから、この辺の道にはプログラマーの名前が付いていたりするんだ......」

トルヤの静かなるガイドを聞きながら、私はそのエリアを散策した。周辺にはベラルーシ初のイベントスペース兼コワーキングスペース「SPACE」が2014年に設立。

他にもギャラリー、流行に敏感なカフェや雑貨店、ジムやヨガスタジオがあったり、フードトラックが並び、夜はレイブパーティーも開催される。ミンスクの中でも、最先端で注目すべきエリアだと感じた。

工場エリアは屋外アートの宝庫! これは『地平線』という作品

『フリーダカーロとゴッホの愛』ブラジル人アーティストRogerio Fernandes作

鹿とバイソンなどベラルーシの絶滅危惧動物をコラージュした作品。ブラジル人アーティストRamon Martins作

19世紀と20世紀の変わり目にミンスクの首長として活躍したカロルヤンチャプスキーの肖像画。ベラルーシ人アーティストSergej Izum作
ソビエトモデルの街はどこも道路が広く歩き疲れたが、夜は夜で活気のあるエリア、バーが密集することで有名なジビツカヤ通りへ。

レストランの明かりやバーのネオンが灯る中、路上にはサルサを踊る集団がいた。スペインでも私はこれに参加したので、トルヤに踊らないかと聞くと、シャイなのか苦笑いで断られた。

路上でサルサを踊る人々

それから私たちはバー「エルプシュカ」へ。メキシコ移民がオープンしたバーで、年間晴れの日が少ないベラルーシで南国をテーマにした陽気な雰囲気が人気の理由だとか。

私はおとなしいキャラのトルヤに半強制的にソンブレロ(メキシコのつばの広い帽子)をかぶらせ、音楽に体を揺らしながら、お酒数杯と最後にサングリータ(テキーラとトマトジュースのショット)を乾杯。ほろ酔いで家路に着いた。

トルヤにソンブレロをかぶらせてみたよ!

ソンブレロをかぶる私。トルヤとの温度差...

ベラルーシは一見とてもソビエト感満載だが、内側には元気で若くて新しい活気ある街作りが潜んでいる。

今回、トルヤのおかげで地元に密着した"新ミンスク"の姿を垣間見ることができ大満足であった。最終日の帰る直前、私はもう一度ドラニキを味わい、ベラルーシの旅を終えたのだった。

ベラルーシ郷土料理のチェーン店「ヴァシリキ(Vasilki)」のドラニキ

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●旅人マリーシャ(旅人まりーしゃ)
平川真梨子。旅のコラムニスト。バックパッカー歴12年、125ヵ国訪問。地球5周分くらいの旅。コラム連載は5年間半を超える。Twitter【marysha98】 instagram【marysha9898】
女子2人組ユニット「地球ワクワク探検隊」としても活動。YouTube配信や国内外各地のPR活動、旅先のお酒やお話を提供するイベント「旅するスナック」を月2回、東京・虎ノ門で開催。【https://www.youtube.com/channel/UCJnaZGs8hyfttN9Q2HtVJdg】

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