引き続き「#おうちたび」と言うことで、昨年の旅の続きをお届けしたいと思います。
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いよいよ念願のアイスランドの旅がスタートした。旅のメンバーは、日本から来てくれたナオミちゃんと、現地調達した旅メンバー、ちょっとやんちゃな英国男子・イドリス(19歳)、超真面目なインド男子学生・クマ(26歳)と私の4人。
出発の朝、まずレンタカー屋へ向かうと、ナオミちゃんが手配してくれた車はうっかりマニュアル車。無事AT車に交換してもらえたけれど、ハンドルが日本と逆だったり、彼女が普段乗っている車と仕様が違うので最初の操作がやり辛かった様子。アクセルを踏むと右に寄りすぎたり、ハンドブレーキの操作を誤ったりして、イドリスは不安を隠せなかった。
「ナオミ! 運転は俺がやるから後ろに座ってろ!」
ナオミちゃんは19歳の少年に完全に舐められ、旅が始まって5分で空のペットボトルで頭を小突かれるような素敵な関係を築いた。
「イドリス、完全に私のこと信用してないね。おかげで運転しなくて済んだけど!」
おおらかでのんびりしている性格のナオミちゃんと、ひとり旅じゃないことで気が緩んでいる私は、今回の旅ではわりとヘラヘラしていて相性が良かった。イドリスはやれやれといった様子でため息をつき、クマは時間がないから早く行動したいと焦り始めていた。
「ほら! みんな時間がないんだから! まずは大型スーパーBONUSで食料調達だ! アイスランドでコスパの良いところといったらここさ。僕はいつもここで買い物してるんだ」
この街で学生生活を送っているクマの現地生活情報はありがたい。旅中にはまたどこかで何か食べるかもしれないので、私たちは最低限の食料を買い込んだ。
この旅の目的はまず「ゴールデンサークル」。アイスランド南西部で、大陸プレートの割れ目や間欠泉、滝など、アイスランドを代表する観光名所がまとまっており、首都レイキャヴィークからもアクセスが良く必見のエリアだ。
私たちはアイスランドをぐるりと一周する国道1号線を走り出した。そして、ひとつ目の名所「大陸の裂け目」として知られている「シンクヴェトリル国立公園(世界遺産)」に到着。
そこは大西洋中央海嶺が地上に露出している珍しい場所だ。ユーラシア大陸プレートと北米大陸プレートの境目であり、「ギャオ」と呼ばれる大地の裂け目を見ることができる。
そこは、かつてヴァイキングたちがアイスランドに定住し、アルシングと呼ばれる民主議会が生まれた重要な地でもあり、議会開催地と推測される場所にはアイスランド国旗が掲げられている。
まるで地球が割れたようにそり立つ岩壁の景色は、ここがアイスランドの民主主義や大陸移動の原点と思うと感慨深い。
勉強熱心なクマはそんな歴史深い場所に興味津々で、脇目も振らずトレイルコースを前進して行く。そしてみんなが気が付いた時には姿が見当たらなくなっていた。早速の個人行動だ。
真面目がゆえに、カメラを覗いたまま、周りが見えなくなってしまったか。旅の楽しみはメンツで決まるとはよく言ったものだけど、今回はそれぞれが「先が思いやられる」と思っている......(笑)? なんだか面白くなりそうだっ。
次に私たちが向かったのが、「ゲイシール間欠泉」。アイスランドには数多くの間欠泉があるが、ここはアイスランド最大の規模で、英語の「Geysir(間欠泉)」の語源ともなっている。70~80mほどの高さまで熱湯を噴出することもある迫力の間欠泉であるが、現在は1日に1、2回噴出する程度で、ほぼ活動していない。
代わりに少し小規模にはなるが、「ストロックル間欠泉」が約10分おきに最大25~35mほどの高さまで噴出させている。
ということで我々はその瞬間を見計らった。シャッターチャンスを狙いカメラを構えて待機するも、フツフツと揺れる水面はフェイントを繰り返し、長く焦らされた後に気を抜いたとたん、そこで噴出というあるあるなケースが続く。やっと動画に収めると、クマが少しヒス。
「ねぇ! もう何回も噴出するとこ見たでしょ! 早く次行こうよっ!」
そしてゴールデンサークル3つ目の目的地「グトルフォス(黄金の滝)」へ。吹き付ける風とその風に乗った水しぶきが激寒(げきさむ)であるが、やはり滝というものはマイナスイオンを感じ、身も心もシャキっとする。最大幅は約70m、最大落差は約15~30m。アイスランド随一の規模を誇る代表的な観光スポットである。
私はこれまでの旅で間欠泉や滝などの絶景はたくさん見てきたので、正直そのひとつひとつが新鮮だった訳ではないが、大自然の見所が集中しているという意味では、旅先としてだいぶ"お得"ではないだろうか。そう思うと、アイスランドは物価は高いけれど、実はコスパの良い国かもしれない(笑)。
そういえば、宿は探したけれどハイシーズンでどこも満員。私たち"宿無し"だったんだ......。
力尽きた私たちは、とりあえず車の中でディナータイムにすることにした。スーパーで購入した一番安いクラッカーは質素で、なんだかダンボールをかじっているみたいだった。疲労からか車の中はシーンとしている。
そしてそのまま各々のまぶたが閉じかける中、私は免税店で買ってあったワインをこっそり嗜んだ。アイスランド、車で周遊の旅、1日目が終了。
★旅人マリーシャの世界一周紀行:第280回「アイスランド、氷河湖の不思議なブルーに魅せられて」
●旅人マリーシャ(旅人まりーしゃ)
平川真梨子。旅のコラムニスト。バックパッカー歴12年、125ヵ国訪問。地球5周分くらいの旅。コラム連載は5年間半を超える。Twitter【marysha98】 instagram【marysha9898】
女子2人組ユニット「地球ワクワク探検隊」としても活動。YouTube配信や国内外各地のPR活動、旅先のお酒やお話を提供するイベント「旅するスナック」を月2回、東京・虎ノ門で開催。【https://www.youtube.com/channel/UCJnaZGs8hyfttN9Q2HtVJdg】