ヨークルスアゥルロゥン氷河湖で、右手に流氷、左手にコーヒーの旅人

引き続き「#おうちたび」と言うことで、昨年の旅の続きをお届けしたいと思います。

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怒涛のスタートとなったアイスランドの旅1日目、宿無しの私たち4人(私、ナオミちゃん、イドリス、クマ)は、車中泊で夜を越した。

翌朝は太陽の光と体の痛みで目覚め、コンディションは悪い。ひとまずトイレを探し、そこでササっと顔を水洗いし歯を磨き、旅を再開した。みんなの口数は少ない。

静かなる大自然の澄んだ空気とは反対に、私たちの車内には二酸化炭素と疲労が充満していた。

しかしながら、私は久々にバックパッカー的な旅を実感し、辛いながらもそれはそれで懐かしい気もしたが、他の3人はバックパッカーでもなく貴重な数日間の夏休みの旅。特に日本から遠路はるばるスーツケースで来てくれたナオミちゃんが心配になって、私は尋ねた。

「こういう旅、大丈夫?(笑)」

「マリーシャがいつもしてる旅見てみたかったし面白いよ! 私はパフィンさえ見れればそれで満足! 会えるかなー!」

ナオミちゃんは不便な旅に不満も言わず、笑顔で楽観的。フットワークも軽いのでありがたい。そして、動物好きの彼女のアイスランドの第1目的はパフィンだった。

パフィンとは、黒と白の体とオレンジ色のくちばしを持つ「ニシツノメドリ」という渡り鳥だ。アイスランドといえばオーロラが有名だが、それは冬の話。夏は白夜とパフィンが代表的である。

街中のお土産屋はパフィングッズであふれ、さながら"アイスランドのアイドル"。私たちも初日におそろいでパフィン柄のマフラーを購入したほど、"パフィン熱"が入っている。会えますように......!

おそろいのパフィンマフラーを着けて、パフィンとの出会いに気合い十分!

今回メンバー全員が目的としていたゴールデンサークルは前日無事に見届けたので、少し気持ちには余裕がある......のは、私とナオミちゃんだけか。

私たちがボーイズの希望を尊重している(任せっきりな)こともあって、彼らの立てた旅プランが優先で、パフィンは後回し。というか相手は野生動物なので会える保証もない。私たちは旅の折り返し地点となる、ヨークルスアゥルロゥン(氷河の川の湖)へ車を走らせた。

裏見の滝「セリャラントスフォス」へ寄り道。滝の裏側に行かなかったことを後悔

車窓から見えた氷河の景色と羊たち

氷河はアルゼンチンで訪れた以来である。ヨークルスアゥルロゥン氷河湖に到着すると、そこにはガリガリ君のようなブルー(氷河といえば鉄板の表現)の流氷が浮かんでいた。

ここはアイスランド最大の氷河湖であり、『007』や『トゥームレイダー』のロケ地としても知られている。また、氷河クルーズの出発地点で観光客が集まっていた。売店もあったので、私たちはホットコーヒーをすすりながら思い思いに氷河湖の岸辺を歩いた。

ヨークルスアゥルロゥン氷河湖に到着

アイスランドの国土の約11%は氷河で覆われているのだそう

透明に光る流氷にウットリ

しばらく氷河湖を眺めていると、遠くから流氷がどんぶらこどんぶらこ。水面には時々黒くて丸い頭のアザラシがひょっこりはん。まるで物語のような光景にほっこりする。

氷河湖のすぐ近くにはアイスビーチ(ダイヤモンドビーチ)と呼ばれる砂浜もあり、打ち上げられた流氷は大きな宝石のよう。透き通る氷は薄い水色だったり、中心に向かってグラデーションになっているものもあり、氷の世界は人々を魅了する不思議なブルーにあふれていた。

氷河湖付近にあるアイスビーチ(ダイヤモンドビーチ)

青い宝石のような流氷

アイスランドらしい絶景にメンバーは大満足。しかし、旅の残り時間は少なくなってきた。私たちは急ぎ足で復路にある最南端の街ヴィークへと車を走らせた。しばらくすると、

「あ! やばい! 売店にクレジットカード忘れてきた! ごめーん!」

ナオミちゃんのてへぺろに、イドリスが呆れ顔でスピードを上げ引き返す。

「まったく! ナオミは忘れ物もするし、ケーキのカスをボロボロ車に落とすし......」

クマは時間通りに旅が進まないことに焦り、

「時間ロスしたからさ、車もっとスピードあげてよ! 次の目的地へ急ごう!」

私とナオミちゃんは大自然にはもう満足し呑気。

「うちらはとりま、パフィン見れればいいから、パフィンのいるポイント行きたいな~」

すると、

「はぁ、ガールズはパフィン、パフィン。パフィンの何がそんなに見たいんだい......?

ボーイズは私たちのパフィンコールに嫌気がさしていた。が、これまで全部ボーイズの行きたいところは通ってきたんだから、1ヵ所くらい私たちの希望を主張したっていいじゃないか!

車内に少し不穏(?)な空気が流れた。今回のメンバーはみんな平和人間でコミュ力も高いことに間違いないが、車中泊の疲れと初対面から24時間以上の時間の共有、それぞれの主張や優先順位、物事が順当に進まない小さな出来事に、疲労を感じていた頃ではあった。

しばらく車内は沈黙......。

癒し度満点のはずのアイスランドだったが、ついにお約束の"旅あるある"発生。ああ、ここでパフィンが空でも飛んできてくれたら一発解決、かつドラマチックなのになぁ! 私は窓の外を眺め心の中で叫んだ。

「パフィン様! 出てきて~!」

アイスランドのお土産屋にはパフィングッズがいっぱいあったよ

★旅人マリーシャの世界一周紀行:第281回「アイスランド、白夜に舞うアイドル鳥『パフィン』を求めて」

●旅人マリーシャ(旅人まりーしゃ)
平川真梨子。旅のコラムニスト。バックパッカー歴12年、125ヵ国訪問。地球5周分くらいの旅。コラム連載は5年間半を超える。Twitter【marysha98】 instagram【marysha9898】女子2人組ユニット「地球ワクワク探検隊」としても活動。YouTube配信や国内外各地のPR活動、旅先のお酒やお話を提供するイベント「旅するスナック」を月2回、東京・虎ノ門で開催。【https://www.youtube.com/channel/UCJnaZGs8hyfttN9Q2HtVJdg】

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