白夜に浮かぶ幻想的な黒い砂浜で黄昏る旅人

引き続き「#おうちたび」と言うことで、昨年の旅の続きをお届けしたいと思います。

* * *

アイスランドの車旅。私たち4人(私、ナオミちゃん、イドリス、クマ)は少々旅疲れが出ていた頃であった。女子たちが夏のアイスランドのシンボル鳥である「パフィンが見たい!」とヒスを起こしたのを最後に、車内は沈黙となった。

運転中のイドリスのiphoneからは音楽が流れているが、そこに日本語のラップミュージックが聞こえてきた。サビがなんとも印象的で

「♪英語ワカリマセン、英語ワカリマセ~ン」

と連呼している。すると、イドリスが私に聞いた。

「What does it mean?(これどういう意味?)」

「I don't understand English(英語わかりません)」

私がそう答えると、

「え? これ英語じゃなくて日本語でしょ?」

「ああ(笑)、えっとね、"I don't understand English"って意味を日本語で言ってるってこと!」

説明が若干ややこしかったが、車内は和んだ。たまにあるこういった言語の誤解は面白い。それにしてもこの曲、頭から離れない(NY在住の日系アメリカ人ラッパー・MIYACHIの曲らしい)。

疲れて寝ているクマとナオミちゃん

その後、私たちは目的とは関係ない場所でも、何か気になるものが目に入れば車を停めて、アイスランドを自由気ままに楽しんだ。

溶岩原らしきところへ着くと、その一帯は一面苔のような植物に覆われていて、地面が割れていたり大きな穴が空いていたりと不思議な光景。宇宙のどこか知らない星に降り立った気分だ。

溶岩原といえばこの辺りで有名なのはエルドフロイン溶岩原であるが、地図や画像と照らし合わせてみるとここはちょっと違うような。一体ここはどこ? 場所がワカリマセ~ン。

有名なエルドフロイン溶岩原の周辺と思われるが不明

何ここ、サイヤ人が戦う場所かな?

まるで『Dr.スランプ』アラレちゃんの「地球割り」

大きな穴にナオミちゃんが吸い込まれませんように!

それから私たちは渓谷へ。多分Fjadrargljufur渓谷であろうが、読めない。カタカナで書けない。アイスランド語ワカリマセ~ン。

アイスランドのドライブ旅は数kmおきに見所が出てくるし、夏休みだというのに有名観光名所以外では人もほとんどいないので、まるで地球を貸切りしたかのような優雅な旅ができる。

渓谷。アイスランド語が読めないが、Fjadrargljufur渓谷だろう

なんだかんだ仲の良い今回の旅メンバー

大自然に癒され、メンバーの調子が乗ってきた。本日の最終目的地レイニスフィヤラビーチに到着すると、そこには黒い砂浜のブラックサンドビーチが広がり、火山島特有の奇岩(六角柱の玄武岩)が断崖絶壁にパイプオルガンのように並んでいる。海が好きで岩フェチの私にはたまらない景色だ。

レイニスフィヤラビーチの奇岩

そして天に向かって伸びる奇岩を見上げると、ついに時が来た!

「え......!? あれ、パフィンじゃない!?」

夏のアイスランドの象徴・パフィン様が、ついに姿を現したのだ!

断崖の上空に、コウモリのように空を飛び交う何かが見えた。だいぶ小さくて目視が難しいがその体とくちばしの色は紛れもなく、

「パパパパ、パフィンだーーー!」

体長30cmほどの小さなパフィン

パフィンが見れたうれしさで小躍りするナオミちゃん(右)

パフィンを観察できるのは6~9月。普段は海上で暮らし、陸に来るのは産卵して雛を育てる夏の間だけ。海岸の崖に沿って営巣するのだそうだ。体長は30cmほどなので、飛んでいる姿は豆粒サイズであったが......まいっか、とりあえず私たちは目的を達成したっ!

満足気分で近くのディルホゥラエイという名の断崖の岬を歩いていると、気づけば午後9時だというのに明るいアイスランドの空。白夜に浮かぶ黒いビーチは幻想的であった。なんだかエモい(私はこういう景色好き)。

ディルホゥラエイ側から眺めるブラックサンドビーチ

崖の上のマリーシャ

吸い込まれるようにその景色を眺めていると、再びパフィンが空を飛ぶ姿が視界に入った。そしてなんと、人が歩いていける草むらに着地したではないか! 実はその辺りはパフィンのコロニーのポイントだった。急いでその方向へ向かうと、

「しーっ!!」

人々が固唾をのんで草むらを覗いている。するとそこに、陸を歩くパフィンを発見! まさかこんな至近距離で見れるとは! 予想もしていなかったのでうれしさ倍増だ!

「顔、きゃわわ~! さすがアイドル!」

ディルホラエイにあるパフィンのコロニー

ペンギンのような配色とピエロのような愛嬌のある顔。よく見ると、目は三角の模様に囲まれていて、くちばしはオレンジだけでなく黄色い縦線が入っていたりとお洒落でユーモラス。なんとなくアメリカの駄菓子キャンディーコーンを思い出してしまうのは私だけ?

じーっとしている姿はまるでお土産屋に売られていた人形みたいな感じであったが、紛れもなく本物の野鳥である。驚かさないように静かにバードウォッチングするこのドキドキ感。ガラパゴス諸島でアオアシカツオドリ探してた時を思い出すなぁ。

私もナオミちゃんも無言で写真を撮りまくり、夏のアイスランドの醍醐味を堪能! 期待以上の結果でミッションクリアなり!

至近距離のパフィン

ところでアイスランド料理ではパフィン肉を使ったジビエがあるそう。た、食べるのか......。グゥ~。いや、これは決してパフィンを見て美味しそうだと思ったわけではなく。

今日も夢中で旅をして腹が減ったのだ。私たちは今夜も車内でダンボールのような不味いクラッカーをかじると、そのまま眠りについた。車中泊2夜目。

ほら、いちおう一緒に写真撮れるくらい至近距離

●旅人マリーシャ(旅人まりーしゃ)
平川真梨子。旅のコラムニスト。バックパッカー歴12年、125ヵ国訪問。地球5周分くらいの旅。コラム連載は5年間半を超える。Twitter【marysha98】 instagram【marysha9898】女子2人組ユニット「地球ワクワク探検隊」としても活動。YouTube配信や国内外各地のPR活動、旅先のお酒やお話を提供するイベント「旅するスナック」を月2回、東京・虎ノ門で開催。【https://www.youtube.com/channel/UCJnaZGs8hyfttN9Q2HtVJdg】

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