引き続き「#おうちたび」ということで、昨年の旅の続きをお届けしたいと思います。
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念願のパフィンを拝み満足した私たち。結局その夜も車中泊をしたが、さすがに大の大人が4人で2夜連続はキツイ。
車内は1日目以上の二酸化炭素にあふれており、苦しくて目覚める。ブラックビーチの朝靄の中、各々が亡霊のように朝の支度を整えると、アイスランド車旅・最終日が始まった。
ここからは復路。運転は最後まで19歳のイドリス少年がしてくれたのでありがたや。日本から来たナオミちゃんは、さすがにお疲れモードか朝はテンション低め、アイスランドに住む26歳の学生クマは相変わらず行きたいところを主張していた。
「僕は絶対にここに行きたいぞ! みんなは? そんな興味がない? なぜなんだ!」
クマが熱望していた場所は「DCー3飛行機の残骸」。1973年にアメリカ軍のDCー3飛行機が燃料を使い果たし墜落した所で、今でも実物が残っている。ジャスティン・ビーバーのPV撮影地になったことでも有名だ。
現場へは駐車場から徒歩1時間かシャトルバス。きっとユニークな写真が撮れるだろうが、アイスランドの大自然を満喫していた私はそこまで興味が湧かず。意見が分かれ、結局クマとナオミちゃんが見に行き、私とイドリスは近くのカフェで待つことにした。
旅では観光だけでなく、現地でゆっくりぼーっとするのも醍醐味だ。それにずっと車中だったので、カフェで椅子に座りテーブルでコーヒーを飲み、きれいなトイレでテイクマイタイム。束の間の普通の生活が心地良かった。
集合時間にふたりを迎えに行き、旅は続行。お次はスコウガフォス滝だ。アイスランドは滝だらけで、ナオミちゃんもお腹がいっぱい。こんな感想をいただいた。
「滝、いっぱい回りました。名前は全くわかりません。滝がたくさんあるんです。しかも、突然現れるんです」
そんな中でもこのスコウガフォス滝は、滝フェチにはたまらないアイスランド最大の滝。幅25m、落差約60mからの落下水は迫力があり、見る者を興奮させる。滝のほうへ近づくと細かい水しぶきが飛んできて気持ちいい! そして虹のアーチも出現した!
天気も最高で、私たちは青い空の下、ランチをとることにした。ダンボールのようなまずいクラッカーも、少しは美味しく感じる!? 食後は芝生の上に大の字で寝そべって、車内泊の体の疲れを癒しながらしばしお昼寝タイム。ZZZ......。
リフレッシュした私たちはさらにリフレッシュするため、国内最古のプール「セリャヴァトラロイグ温泉プール」へ向かった。山の麓にある無人の施設でシャワーなどはないが、プールと更衣室は無料開放されている。
駐車場から15分ほど歩いていくと、特に壁や柵もなく、むき出しのプールが突然現れた。
古びたプールはお世辞にもきれいとは言えない状態で、水は淀み、隅には苔やヘドロのようなものが浮かんでいる。入るのをためらう。クマは墜落機の時とは反対に冷めた様子で、ナオミちゃんもちょっと引いている。泳いでいるのは数人の西洋人だけだった。
「マリーシャ、入りなよ(笑)」
まじか。今度は私とイドリスがやる気を出した。それぞれが更衣室で水着に着替えると、恐る恐るプールに足を入れてみた。
ヌルリ......。
嫌な感触だ。なんて体に悪そうなんだろう。変な病気にならないといいが。
温泉といっても妙にぬるい水温は快適なことはなく、緑に濁った液体がただただ不快(笑)? 床のヌルヌルとした感触が気持ちが悪いので、泳いで浮かんでみるか、なるべくつま先で歩いた。顔がつかないように気をつけていると、イドリスが私に水をかけてきたのでさっさと上がることにした。
全くリラックス効果はなかったが、貴重な体験ができたということにすれば良いだろうか。服に着替えて落ち着くと、さすがに2日間お風呂に入っていなかったせいか、意外にもさっぱりした感じではあった。
「もう時間だ! 早く行こう! 最後にケリズ火口湖へ行こう? みんな異議はない?」
クマのかけ声で、この旅最後の場所へ。ケリズ火口湖は約3千年前の噴火でできたもので、直径200~270m、深さ55mほど。地球にとってはニキビ跡くらいなもんだろうけれど、人間がそこに立つとなんとちっぽけなんだろう。火口の縁に立ち、壮大な景色の前で「この旅も終わりか......」と感傷に浸っていると、クマが満足げな顔してこう言った。
「どうだい? 正解だったろ?」
「ふふっ。やるじゃん(ウィンク)!」
今思えばクマは旅の行き先を提案してくれるしタイムキーパーとしても良い働きであった。ありがとう。2泊3日をともにした即興の旅のチームは、ほんのりと小競り合いや温度差もありながら、一緒に困難(は車内泊だけ?)を乗り越えてきた結束感が心地良い。
夏のアイスランドの車旅は、もちろんオーロラは見れなかったが天気は良好で爽やか。風が吹くと時々凍えそうな時もあったが、総合的に満足度の高い快適な旅ができたと思う。
「私たちは"晴れ女"なの。サニーガールズだよ!」
と言っても、英語ではその表現がないため、ボーイズはまた何か変なことを言っているくらいにしか思っていなかったけれど、晴天は私とナオミちゃんのおかげでもある(はずだ)。
ところで、映画『天気の子』の英題は「Weathering with you」だが、「Weather」という言葉には「嵐を乗り越える、困難を乗り越える」という意味もあるそうで、「君と、僕たちと、何か大きなことを乗り越える物語」でもあると新海誠監督がインタビューで語っていた。バックパッカーの旅もそれだよなぁ、なんて思ったり。
現地で見知らぬ仲間とともにした旅について、日本からきたナオミちゃんはこんな感想をくれた。
「賢い若者たちが色々調べてくれたので、たくさんの美しいところに行けました。私は日本にパワーを持って帰らなきゃいけないから、目を開けてしっかり見てたくさんパワーを吸収したよ。『私の主張はパフィンが見たい』だけだったけど、無事見れたし、本当に来れて良かった!」
★旅人マリーシャの世界一周紀行:第283回「アイスランドの真面目な秘宝館『ペ○ス博物館』の驚愕コレクション」
●旅人マリーシャ(旅人まりーしゃ)
平川真梨子。旅のコラムニスト。バックパッカー歴12年、125ヵ国訪問。地球5周分くらいの旅。コラム連載は5年間半を超える。Twitter【marysha98】 instagram【marysha9898】女子2人組ユニット「地球ワクワク探検隊」としても活動。YouTube配信や国内外各地のPR活動、旅先のお酒やお話を提供するイベント「旅するスナック」を月2回、東京・虎ノ門で開催。【https://www.youtube.com/channel/UCJnaZGs8hyfttN9Q2HtVJdg】