「親の介護はまだ先」だと思いがち。しかし、44歳以下で、すでに3人にひとりは介護が始まっていたりと、意外と身近な話。そして突然襲いかかってくる介護トラブルは、時に家族の絆(きずな)さえ容赦なくむしり取り、精神的にも経済的にも疲弊させていくのだ。具体的にどんな問題があるのか。典型的な〝介護のリアルガチな話〟を専門家の解説と共に見ていこう。

【トラブルケース】子供の優しさが〝当たり前に〟

父が亡くなり、足が悪く身の回りのことができない母(75歳)のために月に1度、車で片道2時間半かけて帰省。その交通費が原因で夫婦間は大いにもめ、今は冷戦状態に。

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「弱った母を見かねて、思わず『毎月帰ってくるよ!』などと言ってしまいがち」だと話すのは、30年近く介護の現場を取材している介護・暮らしジャーナリストの太田差惠子(さえこ)さん。

「往復の高速代やガソリン代も積もればバカになりませんが、それを老いた親に『払ってほしい』とは言い出しづらい。弱っている親に寄り添いたくなる気持ちもわかります。

でも、一時の情に流されて大風呂敷を広げてはいけません。親はすぐに〝子供がやって当たり前〟という気持ちになります。かたや、子供も撤回できない。優しい人ほど損をして、自滅しやすいんです」

実際、このケースでは親に交通費をもらうよう妻から助言されたが、今も「長男だし弱音は吐けない」と根拠なきプライドが邪魔している。

「介護はどのくらい続くかわかりません。だからこそ、介護にかかる費用は身銭を切らず、親のお金の中からきちんと使う。自分の家庭や生活を守るためにも、ボーダーラインはまず最初に決めるべきです」

★他にもさまざまなトラブルケースが
・40代ですでに始まる"親の介護" 無知がゆえに家計破綻の危機も!
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