要介護1と介護の負担が少ない人が、不慮の転倒によるケガなど、ささいなことで要介護3になるなど、要介護度が一気に変わることも。必ずしも緩やかに重くなるわけではない
「親の介護はまだ先」だと思いがち。しかし、44歳以下で、すでに3人にひとりは介護が始まっていたりと、意外と身近な話。そして突然襲いかかってくる介護トラブルは、時に家族の絆(きずな)さえ容赦なくむしり取り、精神的にも経済的にも疲弊させていくのだ。具体的にどんな問題があるのか。典型的な〝介護のリアルガチな話〟を専門家の解説と共に見ていこう。

【トラブルケース】介護離職が原因で恨まれる可能性も

ひとり暮らしの母(63歳)が脳梗塞(こうそく)で倒れた。兄の自分は遠方に住んでおり、独身の妹から「仕事を辞めてお母さんの面倒を見る」と言われた。解決したように思えたが、後々、妹の生活が不安定に。

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「兄弟任せの介護はリスクが高すぎる」と警鐘を鳴らすのは、30年近く介護の現場を取材している介護・暮らしジャーナリストの太田差惠子(さえこ)さん。

「『妹に介護を押しつけられる! ラッキー♪』なんて思ってはいけません。むしろ反対です。介護をする人が独身の場合、仕事を辞めると、親の年金に頼る生活になるかもしれない。経済的に困窮する上、出会いの機会も逃す可能性もあります。

介護が終わったときには『孤独な自分は兄の犠牲になった』と、恨まれるかもしれません」

介護からは逃れられても、将来長期的に妹の生活費を工面したり、精神的なフォローが必要になることもある。

「介護に関わらないなら、せめて妹の交通費を持ったりして負担を減らすこと。このケースでは、本人も行政への問い合わせや介護方針を決めるなど、妹や自分に負担がかからない介護を模索されているようですが、そのマネジメントはすごくいいと思います」


また、「介護は決してひとりで抱え込んではダメ」と太田さんは続ける。

「介護は、介護が必要な人の近くで日常生活のケアをする〝主たる介護者〟と、ケアマネジャーらと交渉をしたり、家族の意見を調整する〝キーパーソン〟が存在しますが、実は主たる介護者が家族内にいなくても成り立ちます。

『親の面倒は子供が見るもの』ではなく、直接的なケアはプロに任せるべき。子供の介護帰省や立ち会う時間を最小限にするなど、負担を限りなく減らす。介護はお世話ではなくマネジメントなのです」

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