昨年10月に日本に上陸してからというもの、日本でも超ロングラン上映中の、その熱い友情物語と脳汁ドバドバな映像美にしびれる人が続出中のインド映画『RRR』。
その代表的な劇中曲で、主人公のふたりが歌って踊る『ナートゥ・ナートゥ』がインド映画初のアカデミー歌曲賞を受賞! これは踊れるようになって祝うしかない!
■シンプルなのに高難度なダンス
――激アツインド映画『RRR』の代表的なナンバー『ナートゥ・ナートゥ』(以下、『ナートゥ』)のダンスを教えてくれるこのふたり、なんとラージャマウリ監督と主演のおふた方が本作のプロモーションで来日した際にも、目の前で踊ったとか! ズバリ、このダンスの特徴は?
KAKETAKU ラージャマウリ監督が手がける作品はエネルギッシュなダンスが多く、体力をかなり消耗します(笑)。その中でも『ナートゥ』は、写真でも伝えられるくらい振り付けがシンプルなのが特徴。
カッコいいダンスを作ろうと思うと難しい動きを入れたくなるものですが、『ナートゥ』は単純な動きだけで構成されています。にもかかわらず、見る人をガツンと魅了するのが、このダンスのスゴいところですね。
まよ 『ナートゥ』のダンスは、振付師が監督に動きを100案提示し、その中から選んで作ったそうです。監督自身、「頑張ればギリギリ踊れるラインにした」と話していましたので、やはり難しいと思います(笑)。その証拠に、「踊ってみた」動画もそこまで多くないんです。
――「踊ってみた」動画?
まよ インドでは、YouTubeショートやインスタグラムのリール動画などの短い動画が流行していて、その中の一大ジャンルとなっているのが「踊ってみた」動画なんです。インド映画業界もその波に乗ろうと、踊りやすいダンスナンバーを作り、多くの人に踊ってもらうことでバズらせようと工夫しています。
KAKETAKU ダンスシーンだけ、映画公開の3ヵ月前に出すこともあるほど。『ナートゥ』も、映画の公開に先立ってリリースされ大きな話題になりましたが、「踊ってみた」動画が増え始めたのは本当に最近のことです。
――そんな『ナートゥ』が、インド映画初の米アカデミー歌曲賞を受賞しました。これはインド映画界にどのような影響を及ぼすのでしょうか?
まよ ここ5年くらい、ヒップホップやラップなど、欧米の音楽を取り入れたインド映画が増加傾向にありました。しかし、そんな中で『ナートゥ』は、伝統的なインドの楽器も使用し、インドならではの精神を歌詞に入れるなど、自国の伝統的な文化を前面に押し出しました。
劇中での曲の始まり方もそう。イギリス植民地時代(1920年代)のインドで、イギリス人の男性が「おまえらインド人はダンスなんか踊れないだろ?」と主人公をあおったところに、「サルサやフラメンコは踊れないけど、俺たちのダンスはできる」と、『ナートゥ』が始まります。
映画自体、インドの誇りを大事にし、独立を目指して戦う物語。もちろん、これまでにもトラディショナルな映画や楽曲も数多くありましたが、『ナートゥ』がアカデミー賞を受賞したことで、今後はよりインド文化に誇りを持った作品が生まれていくと思います。
――ちなみに『ナートゥ』って実際にジャンルとして存在するダンスなんですか?
まよ いえ、映画オリジナルです。もともと「ナートゥ」とはインドの南東部で話されるテルグ語で「田舎」や「土着」という意味。「私たちの土着の踊り」ってイメージですね。最近は南インドで製作された映画がアツいので、『RRR』からぜひインド映画にハマってほしいです!
★『ナートゥ・ナートゥ』完全マスター解説
★ダンスの動画版はこちらから!【https://youtube.com/shorts/qDZZbMPfQTc】
●まよ
ヒンディー語の能力を生かして、インドの魅力を発信中。インド向けのYouTubeチャンネルの登録者数はなんと250万人以上!
●KAKETAKU
ダンス、振り付け、映像製作など、幅広くこなすエンターテイナー。1年前に『RRR』のダンス映像を見て映画を含むインド文化のとりこに