みなさん、サインバイノー(モンゴル語の挨拶)!
モンゴルは次の旅先(126ヵ国目)に狙っていたエリアだったんだけど、コロナのおかげでお預けになったまま。
「大草原を馬で駆け巡ったり伝統的な移動式住居に泊まりながら、羊とのんびり遊牧民体験してみたいなぁ......」
そんなモンモンとした思いを胸に、今回は東京・神楽坂にオープンした内モンゴルの草原料理のお店「草原の料理 スヨリト」へ行ってきましたー!
神楽坂の駅から徒歩5分。羊のイラストが目印のお店は3階まであり、私は1階のカウンター席に着席。目の前の調理場ではオーナーシェフのスヨリトさんを中心に、たくましい腕の店員さんたちが忙しそうに働いていた。
スヨリトさんは内モンゴル自治区(中国領土)出身。標高1000mのモンゴル高原で放牧生活を営んできたモンゴル民族である。羊飼いの父を持ち、14歳で初めて羊をさばいたという羊歴を持つエリートだ。
日本では、ドラマ『孤独のグルメ』にも登場した名店「羊香味坊」で長年働き、ついに独立。羊料理ファンの間で話題のグランドオープンである。
名物は炭火で焼いたカタマリ肉で、中でも目玉なのが「1頭丸焼き」(要予約)。羊1頭は約10~18kg(20人前)から頼むことができるが、あいにく私はおひとり様。今回は「孤独のグルメェ~」を楽しむことにした。
お通しは羊串。ラムのショルダー肉を「タマリスク(紅柳)」という木の串に刺して焼いたもので、羊肉の野生的な味はもちろん、串にも独特な香味があり、いきなりの本場感に気分が上がります。
おつまみメニューには「干豆腐冷菜」「糸切りじゃがいもの酢和え」「草原で育った砂ネギの和物」などの前菜や、お酒に合いそうな「ラム胃袋のラー油和え」などが並び、どれも美味しそうだ。
さらにメニューを見渡すと、目に飛び込んできたのはなんと「ラムのちん◯ん」。さらに、
「あ、きん◯ま......」
先日のネパール料理屋でも山羊のソレに遭遇したばかりであったが、今年は金運でも上がるのかしら......。これまでは手を出したことはなかったけれど、なんだかご縁があるみたいなので無視できず。今回はいただこう......。
「ちん◯ん、ください。あと、きん◯まも......」
ちん◯んはクニャクニャとした食感でホルモン(コプチャン)のような印象。きん◯まは白子のような感じかと思いきや、しっかりした質感のお肉みたいで違和感なく食べられる。ほど良いスパイスにより、臭みもなくペロッといただけた。
「羊のちん◯んてヒョロっと細くて長いんだなぁ......。そしてきん◯まよりも安いのか...(←そこ?)」
初めて食べる羊のアソコだがこんなに食べやすいものかと感心していると、目の前にやってきたのはなんと焼く直前の羊丸ごと1頭の姿! 頭は落とされ両手足を広げた姿が「ワイルドだろぉ~!」と言わんばかりのド迫力です!
「デカー! こりゃ現地でだってパーティーや祝事でもなけりゃ食べないでしょ?」
店員さんにそう尋ねると、
「いえ、牧場にはたくさん羊がいるので、普通に毎日食べますよ。私たちは肉が大好きです。野菜はあんまり......(笑)」
メニューに野菜があるのは主に日本人向けだそうで、さすが遊牧民! 超肉食!
1頭丸焼きの仕込みは3日がかり。肉を野菜類(トマト、ピーマン、セロリ、生姜、スイカの皮など)で48時間漬け込んだ後、ホエイやネギ油、モンゴルバターを塗り、針金で土台に固定。現地で特注した専用窯で2時間半以上炭火焼きにする。食べる頃には、外はパリパリ、中は肉汁が滴るジューシーな焼き具合に!
厨房の奥にある釜を特別に見せてもらうと、縦に設置された羊が炭火に焼かれながらグルグルと回っていた。インパクトのあるこの様子、店頭に置いて皆んなに見せたいと思うのは私だけ?
「ははは。場所がないんです。この釜をお店に搬入するときは、サイズが大きいので窓から入れて設置までに3時間かかりました。羊の丸焼きは月に4~8頭くらい注文が入ります。釜は2頭まで同時に焼けるので、注文が重なれば一度に焼くこともありますよ!」
貴重な仕込みに立ち会い大満足な私ですが、他にも頼まずにはいられないのが手作り水餃子「バンシ」。餡は発酵白菜、パクチー、セロリなど5種類から選べ、自家製の生地で包まれた肉は、ひき肉ではなく手切り。ゴロゴロとした食感が食べ応えありで、こりゃ美味しいに決まっている!
また、お店の推しである「香りの良い脂で焼いたラムの腎臓」はしっかり臭みをとる処理がされ柔らかく、旨みのある「モンゴルの血のソーセージ」も必食だ。ちなみにワインは数件先のワイン屋からセレクトでき、持ち込みも可能(有料)。
それから私が気になっていた「胃袋で包んだ肉団子」は、まるで流行りのスイーツのような、そそられる見た目。フワフワの白い胃袋の皮にナイフを通すと、中の肉は綺麗なピンク色で、隙間から肉汁が輝いている。だ、断面映え......!
「うんメェ~!」
シメは、平たいおやきのような「ラム肉のミートパイシャオルビン」と、お肌プルプル間違いなしの乳白色をした「ラムの骨肉でとったコーラーゲンスープ」で決まり。
羊の肉はL-カルニチン豊富でヘルシーにもかかわらず、店主のテクニックで胃のもたれない脂も楽しめ大満足。お酒にもピッタリのメニューが豊富で、おひとり様の迷える子羊にも最高に楽しめるお店でした!
そして羊1頭という大胆な料理は、グルメマニアだけでなく、多くの人に感動と喜びを与えることでしょう! 「草原の料理 スヨリト」で本場・内モンゴルの味をぜひご賞味あれ!
★羊一頭丸焼きの窯をYouTubeでご覧ください
●旅人マリーシャ(旅人まりーしゃ)
平川真梨子。旅のコラムニスト。バックパッカー歴12年、125ヵ国訪問。地球5周分くらいの旅。2014年より『旅人マリーシャの世界一周紀行』を連載。
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