タイの若者を中心に人気に火がつき、東南アジア中でブームになっている鍋料理「ムーガタ」。実は今まさに、日本国内でもムーガタ提供店がじわじわと増殖中だ。
「ムー」は豚肉、「ガタ」は「鍋」を意味するタイ語で、直訳すると「豚肉の鍋」。ジンギスカン鍋に似たドーム上の部分で肉や魚介類を焼き、その周りに注がれた熱々の出汁の中で好みの具材を茹でて食べる。焼肉もしゃぶしゃぶも楽しめるというカジュアルな鍋だ。
今、なぜムーガタを食べられる店が日本で増えているのか? っていうか、ムーガタってジンギスカン鍋なの? 素朴な疑問を、都内でムーガタ専門店「MOOKATA」を3店舗経営する竹下大介さんに聞いてみた。
――タイでは昔からメジャーな鍋なんですか?
「発祥は諸説あるんですが、約30年前にイサーンという地方から広まったと言われています。日本のジンギスカン鍋がイサーンに持ち込まれて、そこからじわじわといつの間にかタイ都市部に広がっていったようです。ただバンコクでムーガタ店が現れたのは10年くらい前で、大きな街でも2、3軒ある程度でした。ここ2~3年くらいで明確に流行ってきまして、どの街にもあるし、そこら中で提供されています」
――だからムーガタの鍋はジンギスカン鍋に似ているわけですね!
「中国から持ち込まれたという説などもあるんですが、私はジンギスカン説が有力だと思います。
ただジンギスカンに似て、現在の焼肉としゃぶしゃぶの融合のような形になったのも、この10年くらいなんです。それ以前のムーガタ鍋は、逆にスープが多く、焼くエリアが今より少ないスタイルでした。20年ほど前は『タイスキ(タイのしゃぶしゃぶ)』がものすごい勢いで流行っていたので、どちらかというとすき焼きやしゃぶしゃぶに寄せていたのかも」
――ところでなぜこの2、3年で流行ったんですか?
「流行った理由は新型コロナですね。バンコクのムーガタ屋が鍋自体を無料で配って『家に材料を配達します!』とアピールしたそうです。そこからどんどんとムーガタデリバリーが広まって、SNSでムーガタを食べる様子が拡散されたんです。そこで知名度と人気が高まりました」
「だから年配のタイ人や、もっと昔からタイに住んでいる日本人にはなじみがなく、タイ料理の中でも新顔なんです。しかも屋台でワイワイと食べる鍋だったので、富裕層は食べない料理でした。それが今ではバンコクの高級ホテルエリアのレストランでも提供されたり、富裕層にも広がってタイ国民なら誰もが知る料理に格上げされたんです」
――屋台料理からすごい飛躍ですね。
「それだけでなく、バンコクでの大ヒットを受け、今ではミャンマー、ラオス、カンボジア、ベトナムなどでも出店が増えています。東南アジアは食文化も似ていますからね」
「具材はビュッフェ式で自分の好きなものを取り入れられますし、煮たり焼いたりと調理方法に選択肢がある。みんなで囲む鍋といっても、自分が好きなように食べられて自由度が高いのも人気の秘密だと思います。日本人のお客さんにも、これからますます広がっていくと思います」
――タイ料理といえば「トムヤムクン」や「タイカレー」が定番だったのが、「ムーガタ」もそこに加わりそうな予感が。
「今までムーガタを出していなかったタイ料理屋でも、ムーガタをメニューに取り入れる店が増えていますね。何より、日本でムーガタを出したいという飲食店オーナーさんがうちによく食べに来ています(笑)。僕が把握している範囲では、30軒くらいのお店がムーガタを出したいと考えているみたいですよ」
「タイの国営放送で、美味いムーガタを出す店が東京にあると放映されたんですよ。その影響だと思います。
今でこそ日本人のお客様も少し増えてきましたが、開店当初は99%タイ人のお客様で、関東だけでなく、名古屋や沖縄、北海道など各地の在日タイ人の方々がいらっしゃっていました。日本旅行に来たタイ人の方もうちに寄っていきます」
「タイそのままの味付けで、食材は日本品質の美味しいものを使っているので、認められたのかと思います。実は日本国内だけじゃなくて、世界各国からもうちの店を視察しに訪れてるんです。先日も、ハリウッド、ニューヨーク、マレーシア、シンガポール、そしてもちろんタイからもいらしてます。だからムーガタは世界に伝播していくんじゃないかなと!」
――ガチ中華ならぬ、「ガチタイ」の波が来ているとは! 「流行の味」の発信地が東京発とは、鍋以上に熱い話です。ありがとうございました!
●MOOKATA新宿店
東京都新宿区西新宿1-14-16 114 BLDG. B1
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