『週刊プレイボーイ』で連載中の「ライクの森」。人気モデルの市川紗椰(さや)が、自身の特殊なマニアライフを綴るコラムだ。今回は市川紗椰が気に入った「無用な発明」について語る。
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前回はピザに関連する発明について語りましたが、それからいくつか、「これを作った人は天才? それともあほう?」と疑ってしまう無用な発明に出会いました。全然いらないのにすごく画期的、というお気に入り発明品を紹介します。無用は素晴らしい。
まずはLOL確認キーボード。「lol」は、日本語の「(笑)」に当たる英語のネットスラングです。「声を出して笑う」を意味する「laugh out loud」の頭文字を取った略語で、爆笑を表現したいときに「What are you talking about lol」=「何言ってるの(笑)」と文末に加えます。
英語圏の掲示板やSNSでは最も多く目にするスラングのひとつですが、日本における(笑)や(爆)と同様、実際にゲラゲラ笑ってなくても「上機嫌ですよ」と伝えたい場合に使われることがほとんど。別に面白くなくても、文章だけだと淡泊すぎるときにとりあえずつける感じでしょうかね。
このたび、そんな風潮に一石を投じる発明が誕生! ブライアン・ムーア氏が作った「LOL Verifier」を使うと、ユーザーがlolと入力するたびに、デバイスに内蔵されたマイクを通して本当に笑ってるかどうかAIが判断。もし、本当は声を出して笑ってないのにlolと打っていた場合、lolが自動的に「that's funny(面白いね)」などに変換されます。
それだけではなく、「クスッ」や「むふふ」と笑った場合は「クスッ」「むふふ」と表示されるそう。高度な音声認識技術を使用して、免罪符としてlolを使う自分に自主的に課すナゾ制限。日本語版が出るとしたら、家庭菜園で草が生えてこないと「草」や「www」が表示されないという判定を組み込んでほしいです。
続いては、誰もが知っている地味な痛みを武器にしたレゴ発射ロボ。使用される凶器はレゴブロックです。レゴみたいな小さいおもちゃを裸足(はだし)で踏んだときの痛み、わかりますよね? そんな痛みはもちろん、小指を角にぶつけたときに近い妙なイライラもセットで襲ってきます。
このレゴ発射ロボは、ターゲットの足元を認識し、動いてる足の着地点を計算してレゴブロックを発射。単に足にレゴを当てるのではなく、緻密な計算によってターゲットにレゴを踏ませるという機械です。めちゃくちゃ地味な痛みだけど、ダメージは大。開発者のアダム・ビードル氏自身のユーチューブチャンネルで制作過程も見られるので、興味ある方はご覧ください。角が小指を目がけて襲ってくるテーブルもありかもしれません。
同じように、意外なものを撃つ武器だと、台湾出身のアーティスト、イーフェイ・チェン氏が作った「Tear Gun」。こちらは文字どおり、涙の銃。顔に採取用マスクをはめて目から流れる涙を集め、そのまま銃弾の形に冷凍。原材料=涙でできた銃弾を、泣かした人に食らわせます。ふざけているようだけど、言葉にできない悔しさを具現化してくれる発明品。うまく怒ることができない人や、声を上げられない人の涙を力に変える、深いアイデアかもしれない。真鍮(しんちゅう)をあしらったデザインもすてきです。
●市川紗椰
1987年2月14日生まれ。米デトロイト育ち。父はアメリカ人、母は日本人。モデルとして活動するほか、テレビやラジオにも出演。著書『鉄道について話した。』が好評発売中。今までで一番ゾッとした発明は、パンに直塗りできるスティック状のアボカド。公式Instagram【@sayaichikawa.official】