海外の屋台メシは不安っていう人もいるかもしれませんが、
「安心してください、は(吐)いてませんよ! とにかく明るい旅人です!」
私は世界で数々の屋台メシにお世話になってきましたが、体調を崩したことは一度もありません。それよりも現地の人に混じって同じものを食べることは旅の醍醐味であり、人生経験として豊かなことこの上なし。
というわけで、今回は世界の屋台メシから推しメン(麺)3選を紹介したいと思います!
■タイの伝説の30円ラーメン
屋台メシといえばやっぱりタイ。定番はパッタイですが、かつて首都バンコクにある旅人の聖地カオサンエリアには「伝説の10バーツラーメン」というものが存在しました。
激安メシを求める旅人の胃を支えた「ミスター・ワッタナーのラーメン屋」の10バーツラーメンです。私が食べた当時のレートでは日本円でなんと約30円(2023年のレートだと約40円になっちゃうけど)。
このコスパは世界でも最強クラスだと思うのですが、チロルチョコもビックリのそのラーメンは透き通ったスープに卵麺と青菜や肉が入ったもので、味はシンプルながらちゃんと美味しく、路上の安い屋台メシとはいえ丁寧に作られていました。
他にも汁なしの和え麺、白米麺、ワンタン入りのメニューなどバラエティがあり、ミスター・ワッタナーの心意気を感じたものです。
「食べ◯グ」にもひっそりと口コミのあるこちらのお店は、世界を巡るバックパッカーたちの間で伝説として受け継がれてきましたが、残念ながらついに閉店。長年値上げせずに踏ん張り続けていた店がとうとう無くなったかと思うと、寂しい気持ちでいっぱいです。
その後、跡地には別の人が経営する20バーツのラーメン屋ができたそうですが、こちらも閉店。次は30バーツラーメン屋の開店なるか......、もしくはミスター・ワッタナーがどこかで営業を再開してくれればうれしいのですが。
今や無き店となってしまいましたが、「伝説の店が存在した事実を記録として残しておかねば!」という旅人の使命を果たすため、ここに記します。
■新聞紙に巻かれたインドのヘルシー駄菓子
続いて紹介したいのがインドの屋台メシ「ベルプリ」。チュルムリと呼ばれるライスパフ(米のポン菓子)やラーメンスナック、トマトやタマネギなどの野菜に豆類を混ぜ合わせ、マサラ(スパイス)やレモン汁をかけた軽食です。
路上の屋台では新聞紙などの上に具材が乗せられ、それらをシャッシャッと宙に浮かすように軽やかに混ぜ、最後はその新聞紙でクルリと巻いて提供されます。新聞紙の衛生状態は気になりますが、作られたものはサクサク食感が美味しくてクセになる!
この料理の起源は明確ではないが、発祥地はムンバイという説が濃厚。今やインド全域で食べられているそうです。パフライスを使うことからシリアルの一種として考えられていたり、またはフレッシュな野菜のおかげでサラダ的要素もあり、お菓子っぽいけど意外とヘルシーフードの扱いなのかも。
私がこれを経験したのは北インドのヨガの聖地リシケシでしたが、ここに修行に来ていたベジタリアンの欧米人は「ポテチは野菜」と豪語していたので、パフライスやラーメンスナックもそれに近い感覚なのかもしれない。
ちなみにパフライスといえば、日本でも駄菓子屋を知る世代に刺さるポン菓子「にんじん」がありますが、パフライスの起源は1901年ミネソタ大学の研究者が穀物の研究中、米を試験管に入れて熱する工程で誤って破裂させ、そのガラスの破片の中から発見されたそうな。
アメリカ生まれという意外な歴史(?)にも驚きですが、そんなポン菓子を使ったオリジナリティあふれる屋台メシにインドで遭遇することになるとはつゆ知らず。
ラーメンスナックもまた駄菓子の「ラーメン屋さん太郎」「らあめんババア」(今思うとすごいネーミング)など、今でいう「ベビースターラーメン」的なものを彷彿とさせ、この軽食はどこか日本人のノスタルジーに刺さります。
■ラオスの夜と朝を飾る定番ヌードル
麺料理といえば、やっぱりアジアが強い。内陸国であるラオスには、タイやベトナム、ミャンマーなどの近隣諸国と似ている麺料理が多くあります。
ラオス北部やタイ北部の代表的な麺類といえば「カオソーイ」。実はミャンマー生まれだったり地域や店によってタイプが違ったりとややこしいですが、ラオスではスープに平打ちの米麺、大豆の発酵食品と挽肉を唐辛子やニンニクなどで炒めたピリ辛肉味噌を乗せた麺料理。
お好みで香草類やライム汁を加えていただきます。ナイト・マーケットに集まる現地人とラオスビール「ビア・ラオ」で乾杯!
カオソーイがビールのお供に最高ならば、二日酔いに最高なのがラオスの国民食である「カオピヤック・セン」。
透き通ったスープはあっさり鶏だしが一般的で、麺は米粉とタピオカ粉を混ぜたもの。鶏肉や豚肉、揚げニンニク、ネギなどのトッピングと、お好みでもやしやミント、揚げパンを入れて食べるのが定番です。ラオス人は朝食やランチに食べることが多いのだとか。ちなみに「カオピヤック・カオ」というと麺ではなくお粥になるので要注意。
麺はモチモチとした食感で、日本人向けには「ラオスのうどん」として紹介されていることが多い。起源はベトナムで、ラオスを経てタイ東北部に入ってきたそうな。「国民食といえど、これまたラオス発祥じゃないんかい」と、内陸国らしさをヒシヒシと感じます。
仏教国ラオスの名物といえば僧侶の托鉢(僧が鉢を持って経文を唱え、米や金銭の施しを受けて回ること)。空がまだ薄暗い早朝に起きて托鉢見学をした後に食べるカオピヤックの味は、素朴な出汁が身に染みて自分も修行僧のような気持ちになったりして。
とういうわけで今回は奥深き麺の世界から3選紹介いたしましたが、日本の夏の推しメン(麺)と言ったらやっぱりクールな素麺か冷やし中華よね。皆さん、今年も暑いですが熱中症に気を付けてー!
●旅人マリーシャ(旅人まりーしゃ)
平川真梨子。旅のコラムニスト。バックパッカー歴12年、125ヵ国訪問。地球5周分くらいの旅。2014年より『旅人マリーシャの世界一周紀行』を連載。
Twitter【marysha9898】
Instagram【marysha9898】
YouTube『旅人まりーしゃの世界飯 Traveler Marysha』