東京駅の昔のひらがな表記。きゃわいい東京駅の昔のひらがな表記。きゃわいい
『週刊プレイボーイ』で連載中の「ライクの森」。人気モデルの市川紗椰(さや)が、自身の特殊なマニアライフを綴るコラムだ。今回は、市川紗椰が全国の「あざとかわいい駅名」について語る。

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前回は弘南鉄道の「田んぼアート駅」のトンチキ英語表記「TAMBOĀTO」の魅力を語りましたが、「ĀTO」に気を取られてそもそも「田んぼアート」という駅名について考えてませんでした。この駅名、ど直球だし個性的だし、何よりもかわいい。

そこで今回は、かわいい駅名を語らせてください。全国には、あざといまでにかわいい駅名がたくさんあります。そんな"あざかわ駅名"を意識したら、通勤の移動が楽しくなるかもしれません。

まずは鉄道ファンによく知られている「おもちゃのまち駅」。ただでさえおとぎ話に出てくるような名前を、さらにオールひらがなで表記する、駅名界随一のあざとさを誇ります。

実際は東武宇都宮線の素朴な駅で、メルヘンな雰囲気は皆無ですが、玩具メーカーのタカラトミーきっかけで命名された玩具製造関連会社が集まる「おもちゃ団地」が近いことに由来しているそう。おもちゃ団地が出てくるおとぎ話、読んでみたいです。

果物やお花系も定番です。JR中央本線・長野県の「すずらんの里駅」、JR奥羽本線・山形県の「さくらんぼ東根(ひがしね)駅」、静岡を走る天竜浜名湖鉄道「フルーツパーク駅」、香川県にあるJR高徳線「オレンジタウン駅」など、名産を打ち出したあざかわ駅名は日本各地にあります。

中でも、JR富良野線の「ラベンダー畑駅」が私の推しです。近隣にある人気お花畑の「ファーム富田」に由来した名前ですが、農園の名前を取り込まないで、ざっくり「ラベンダー畑」とにおわせるところがいい。

固有名詞や地名がなく、そのままただラベンダー畑なのが、シムシティ感があるというか。夏季と秋季にしか止まらない臨時駅なので、駅の素っ気なさもオススメです。駅舎はなく、ホームと仮設トイレだけがポツンとある感じで、駅名と相まって(仮)な感じが好きです。

続いてはあざかわ駅名・人名編。まずは、JR武蔵野線の「吉川美南駅」。よしかわみなみちゃんはきっと、どんな人にも優しい、明るい元気な子。クラスで、よしかわみなみちゃんのクシャッとする笑顔にほれている人多数。みなみを「美南」と書くのにも加点。

JR湖西線の「近江舞子駅」はしっとりしてて素晴らしい。おうみまいこちゃんは、凜(りん)としていて上品なはず。でも一番モテそうなのはJR奥羽本線「井川さくら駅」。いかわさくらちゃんのクラスのマドンナ感、半端ないです。

特別部門はJR石勝線の「トマム駅」。声に出して言ってみてください。と、ま、む。「ト」で丸く口をすぼめさせ、「マ」で無邪気に口を開いてからのアヒル口で締める「ム」。どんな人も「トマム」と言うときは強制的にかわいさが炸裂(さくれつ)します。

JR宗谷本線の「比布(ぴっぷ)駅」や「蘭留(らんる)駅」、JR留萌(るもい)本線「真布(まっぷ)駅」など、北海道は声に出したいあざかわ駅名が多数あります。 

海外だと、イギリスがあざかわ駅の宝庫です。「Elephant & Castle(ゾウさんとお城)駅」や、「Crystal Palace(水晶宮殿)駅」など、ファンタジー感あふれるメルヘンネームには惹(ひ)かれますが、いざ行くと、どこもめちゃ地味だった記憶があります......。

●市川紗椰
1987年2月14日生まれ。米デトロイト育ち。父はアメリカ人、母は日本人。モデルとして活動するほか、テレビやラジオにも出演。著書『鉄道について話した。』が好評発売中。意味は別として、一番かわいい日本語は「にっかぽっか」だと思っている。
公式Instagram【@sayaichikawa.official】

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