山下メロやました・めろ
1981年生まれ、広島県出身、埼玉県加須市育ち。平成が終わる前に「平成レトロ」を提唱し、『マツコの知らない世界』ほかメディア出演多数。著書に『平成レトロの世界』『ファンシー絵みやげ大百科』がある。
記憶の扉のドアボーイ・山下メロです。この連載では平成レトロ時代に忘れられ、記憶の底に埋没しがちな遺産を、皆さんと一緒に掘り返していきます。
さて、今回は平成の幕開けを彩った観光地や球場のお土産と、それに近い商品たちを紹介します。日本が平成に改元した1989年にベルリンの壁が崩壊し、翌年に東西ドイツが統一されました。
その際に壊された壁の破片を、なんと〝お土産品〟として販売したのです。このような〝ご当地の現物〟をお土産にしてしまうアイデアと商魂のたくましさは、昭和から平成の日本各地の観光地でも行なわれていたのです。
まず、平成が始まる前年の1988年。この年には、当初「BIG EGG」という愛称だった東京ドームが完成。ここでは、グラウンドの土を封入したキーホルダーが販売されました。敗退した高校球児が持ち帰る甲子園の土を意識しているのでしょうか。平成に取り壊された旧広島市民球場の土というアイテムもあります。
同じく1988年には青函トンネルも開通し、青森と函館で地方博「青函博」が開催。その中で青函トンネルの開通工事中に出た石も瓶詰で売られました。つげ義春さんの漫画『無能の人』ほどではないですが、単なる石も売り物になっていたんですね。
ほかにも、昭和から平成にかけては「富士山の空気缶」「高原の空気缶」といった、ただその場所の空気が入った缶詰が売られていました。こちらは令和に復活。映画『翔んで埼玉』のBlu-ray特典で「埼玉の空気」の缶がありました。
さらに海外旅行先として人気が過熱したオーストラリア。コアラのふんをアクリルの人形に閉じ込めたキーホルダーは、新婚旅行のお土産として人気に。結婚式の引き出物として使えるペアのタイプまでありました。
このように、かつては土や石、空気など自然に存在するものが平然と販売され、なんなら壊した壁も、ふんまで売っていたのです。今こそ平成リバイバルとして、何か売れるものを探してみましょう。
1981年生まれ、広島県出身、埼玉県加須市育ち。平成が終わる前に「平成レトロ」を提唱し、『マツコの知らない世界』ほかメディア出演多数。著書に『平成レトロの世界』『ファンシー絵みやげ大百科』がある。