山下メロやました・めろ
1981年生まれ、広島県出身、埼玉県加須市育ち。平成が終わる前に「平成レトロ」を提唱し、『マツコの知らない世界』ほかメディア出演多数。著書に『平成レトロの世界』『ファンシー絵みやげ大百科』がある。
記憶の扉のドアボーイ・山下メロです。さて、通称「大麻グミ」と呼ばれる大麻成分に似た合成化合物を含んだ食品が社会問題になっています。
そこで思い出されるのは90年代後半あたりから露店で〝観賞用〟として売られていたマジックマッシュルーム。当時は違法性がなく〝脱法ドラッグ〟と呼ばれ話題になるも、これは2002年に規制されました。
その一方で、〝少しでもトリップの雰囲気を体験したい〟という一部のユーザーに支持された「平成の代替文化(合法)」を振り返りたいと思います。
キノコの後に出てきた脱法ハーブ(危険ドラッグ)も含め、その時点で合法だとしても、不明瞭なブツを体に入れるのは恐怖しかありません。もちろん、売り手側も危ない橋は渡りたくない。
というわけで、1993年に『Mの暗号:ドラッグ絵本』(メディアファクトリー)が登場します。こちらはアナログな紙の本でしたが、当時一般的にも知られるようになってきたCGによる視覚的なトリップ効果を意識したものでした。
その翌々年の95年には『ザ・マリファナCD』(デラ)が発売。こちらはCDプレイヤーでデジタルサウンドを再生すれば、安全に聴覚的トリップが体験できるとうたった商品です。
電子的な視覚・聴覚トリップには長い歴史があります。平成時代には、それらを制作するためのパソコンやクリエーティブ用途のアプリが急速に普及し、その進化が顕著だったのです。
そして、もっとライトなところでは、大麻の葉っぱの絵を乱用したアパレルやアイテムがあふれていました。絵柄だけなら合法ですので、お手軽かつ安全にアウトローを気取れるアイテム扱いだったのです。
中には「なんなのかわからないけど、葉っぱの模様がはやってるから買いました」というラスタカラーの歴史や文化の知識ゼロで着用する人もいたほど。
大麻グミが社会問題化する今こそ、〝葉っぱの絵を見るだけ〟〝音を聴くだけ〟といった安全安心の「平成の代替文化(合法)」を思い出すべきではないでしょうか。
1981年生まれ、広島県出身、埼玉県加須市育ち。平成が終わる前に「平成レトロ」を提唱し、『マツコの知らない世界』ほかメディア出演多数。著書に『平成レトロの世界』『ファンシー絵みやげ大百科』がある。