山下メロやました・めろ
1981年生まれ、広島県出身、埼玉県加須市育ち。平成が終わる前に「平成レトロ」を提唱し、『マツコの知らない世界』ほかメディア出演多数。著書に『平成レトロの世界』『ファンシー絵みやげ大百科』がある。
記憶の扉のドアボーイ・山下メロです。記憶の底に埋没しがちな平成時代の遺産を今週も掘り返していきましょう。
今回は平成初期に、局地的に流行していた文具「エスパークス」です。こちらは「リラックマ」や「すみっコぐらし」など現在も人気のキャラクターを輩出し続けているサンエックスから平成元年に発売されました。
勉強に関係ないものは持ち込み禁止の学校に〝いかに遊べるツールを文具に擬態して学校に持ち込ませるか〟というコンセプトの商品は昭和の時代から脈々と続いていましたが、さすがバブル絶頂期だけあってエスパークスはぶっ飛んでいます。
基本となるアイテムは学習ノート。ほぼ全ページに漫画が印刷され、これが各ページの4分の1ほどのボリューム。その弊害として文字を書くスペースが少なく、ページによっては上下にも漫画が配置されています。さらに全体にスゴロクが描かれたページもあり、もはや学習ノートとして機能していませんでした。
規格外なのはこれだけではありません。描かれている漫画はフルカラーで、かつ全ページ違う内容のRPG風のストーリー漫画なのです。
普通のノートは全ページ同一の罫線で1色刷りが基本なところ、エスパークスはフルカラーで全ページ違う内容を掲載。全ページに別の版が必要になる高コスト商品ながら、わずか120円ほどで販売されました。
書き込めるスペースが少ないだけでなく、授業中に漫画が読めてしまう。スゴロクも遊べてしまう。これでは授業に集中できるはずもありません。というか、学校側にしたら〝漫画やゲーム〟という認識。
よって、教師にバレて取り上げられ、放課後の職員室で叫ぶ「文具店で売ってるノートだよ!」という主張もむなしく〝校内持ち込み禁止〟となった例も多かったようです。
しかし、ストーリーの続編となるノートは何冊も発売され、鉛筆、消しゴム、下敷き、カンペンからビデオゲームまでさまざまな商品が誕生していきました。令和でも電子書籍版が読めますので、ぜひ漫画だけでも味わってください。
1981年生まれ、広島県出身、埼玉県加須市育ち。平成が終わる前に「平成レトロ」を提唱し、『マツコの知らない世界』ほかメディア出演多数。著書に『平成レトロの世界』『ファンシー絵みやげ大百科』がある。