ほぼ毎日シュウマイを食べ続け、日本シュウマイ協会を作るに至ったシュウマイ潤氏 ほぼ毎日シュウマイを食べ続け、日本シュウマイ協会を作るに至ったシュウマイ潤氏

連載【日本シュウマイ協会会長・シュウマイ潤の『みんなが知らない、シュウマイの実力』】第4回

中華料理店はもちろん、和食、洋食、フレンチ、居酒屋まで、シュウマイがある店はほぼ間違いなく飲食店として名店。まずはその代表格である中華料理店について、シュウマイ研究家のシュウマイ潤が解説します。

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シュウマイあるところ、名店あり――私がシュウマイを食べ歩いてきた結果、行き着いた結論のひとつです。今でこそシュウマイを専門的に話す機会が圧倒的に増えましたが、シュウマイを本格的に研究する前から、食を中心とした取材執筆を行うライター&編集者でありまして。

もちろん、その食を専門とする関係者さんほどではないにせよ、話題の飲食店には行く機会が多く、その経験を重ねるごとに、名店と呼ばれるところを判断する「法則」のようなものが、ぼんやりとではありますが分かってきました。

そんな中、シュウマイ研究を始め、訪問数が100店舗を超えた2年を過ぎたあたりでしょうか、シュウマイを出す店自体が、飲食店としても名店である確率が高いことに気づき始めました。

そしてこの法則は、主にシュウマイが所属(?)する中華料理の飲食店はもちろん、和食、洋食、フレンチ、居酒屋など、あらゆるジャンルが当てはまります。

ただ、その根拠は中華料理店とその他の飲食店だと若干異なりますので、本項ではまず前者の法則について、私なりの分析を述べさせていただきたいと思います。

1918年(大正7年)創業の横浜・山手の老舗中の老舗「奇珍」。残念ながら現在は閉店してしまったそうだが、小ぶりのシンプルなシュウマイのほか、「バンメン」や「竹の子そば」など名品が並んでいた 1918年(大正7年)創業の横浜・山手の老舗中の老舗「奇珍」。残念ながら現在は閉店してしまったそうだが、小ぶりのシンプルなシュウマイのほか、「バンメン」や「竹の子そば」など名品が並んでいた

シュウマイのある中華料理店が名店である理由――。それは、3つの根拠が挙げられます。ひとつは、シュウマイを提供する中華料理店の多くは、老舗中華店であることが多いからです。

老舗であるからといって、どこでもいい店とは必ずしもいえませんが、その大半は長い歴史を経て食べる人に支持をされてきたわけで、最近の「町中華ブーム」で紹介される名店の多くが、老舗中華料理店であることからもお分かりいただけるでしょう。

そもそも今日、中華料理店の中でシュウマイを出す店は決して多くはありません。研究家の私の実感としても、全体の1割程度でしょうか。その代わりに、ほぼ100%メニューに載るのが焼き餃子。

第二次世界大戦前は、焼き餃子という料理は中華料理店には存在せず、実はシュウマイのほうが一品料理として定番だったと推測できます。裏を返せば、今でもシュウマイを出す中華料理店の多くが、第二次世界大戦前から続く「老舗中の老舗」であるのです。

また、戦後直後、10年ぐらいの間に生まれた店も、その名残でシュウマイを提供する傾向が強いです。

そうした店で提供されるシュウマイは、現在よりも食材や調味料の選択肢は少ない中で、調理、味付けが行われていたためか、昔ながらの丁寧な手作りの傾向にあります。結果、シンプルかつ素朴な美味しさはシュウマイの醍醐味とも言え、同時に、日本の中華料理文化を伝える貴重な存在でもあります。

横浜中華街の人気店「海員閣」。こちらも「奇珍」同様、戦前の1936年(昭和11年)創業の老舗であり、昔ながらの素朴かつ肉感あふれる大ぶりシュウマイのほか、「豚バラ煮込み」などの人気メニューも 横浜中華街の人気店「海員閣」。こちらも「奇珍」同様、戦前の1936年(昭和11年)創業の老舗であり、昔ながらの素朴かつ肉感あふれる大ぶりシュウマイのほか、「豚バラ煮込み」などの人気メニューも

戦前から続く中華街のもうひとつの名店「安記」(創業1932年/昭和7年)。一般的には中華粥の有名店だが、小ぶりながら旨味ぎっしりのシュウマイも絶品 戦前から続く中華街のもうひとつの名店「安記」(創業1932年/昭和7年)。一般的には中華粥の有名店だが、小ぶりながら旨味ぎっしりのシュウマイも絶品

もうひとつは、調理環境に手間を惜しまない姿勢が感じられること。中華料理店関係者が声を揃えて語るのが、中華料理は他の料理に比べて火元(コンロ)を多く使うのが特徴。そのため、スペースが限られた飲食店では、火元の数が限られ、調理の選択肢も限られる傾向にあります。

先にも触れた通り、現在は焼き餃子が大半の中華料理店で提供されており、その調理環境は焼き餃子を前提に設計されていると推測できます。

一方、シュウマイは蒸し器を常時置くために、火元をもうひとつ使わなければならず、焼き餃子を優先することを考えると、設置を見送ることになるのも仕方ありません。

そんな焼き餃子中心の今日において、あえてシュウマイを提供している店は、その火元とスペースをわざわざ確保しているということです。

それだけのことをしてまで提供するのですから、シュウマイにそのお店の思いとこだわりが詰まっている可能性が高いことは、容易に想像できると思います。

某番組で、餃子の専門家とともに「餃子もシュウマイも美味しい店」として紹介された、川崎「成喜」。チャーハンや焼きそば、シンプルながらまた食べたくなる名品を提供 某番組で、餃子の専門家とともに「餃子もシュウマイも美味しい店」として紹介された、川崎「成喜」。チャーハンや焼きそば、シンプルながらまた食べたくなる名品を提供

最後は、シンプルかつ丁寧な料理の技術を持つ証明になるということ。中華料理店のシュウマイの大半は、基本の豚が中心のシンプルなスタイル。数ある中華料理の中でもクラシックかつシンプルな料理とはいえ、その中で美味しさをしっかりと表現できるということは、一定以上の調理技術があることにつながると言えると思います。

シンプルなものほど難しい。逆に、シンプルなものが作れれば、どんな料理でも美味しくできるというわけです。

この3つの根拠に、まだ疑問を持っているかたもいると思います。最後にダメ押しの根拠を。

先にも触れた、昨今の町中華ブームの火付け役と言われている番組「町中華で飲ろうぜ」(BS-TBS)で紹介される名店のなかに、シュウマイが登場する確率は高いです。

ちなみに、私が代表を務める「日本シュウマイ協会」が制定した「シュウマイの日®」(2月26日)に合わせた放送では、シュウマイを出す店を特集で組んでくれました。

それでもまだ疑問を持たれた方は、中華料理店選びにシュウマイの有無を是非、参考にしてみて下さい。私の法則が、あながち的外れでないことがお分かりいただけるはずです。

ただ、それ以前にシュウマイそのものが、中華料理店には少ないという厳しい現実に直面することになりますが......。

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