山下メロやました・めろ
1981年生まれ、広島県出身、埼玉県加須市育ち。平成が終わる前に「平成レトロ」を提唱し、『マツコの知らない世界』ほかメディア出演多数。著書に『平成レトロの世界』『ファンシー絵みやげ大百科』がある。
記憶の扉のドアボーイ・山下メロです。記憶の底に埋没しがちな平成時代の遺産を今週も掘り返していきましょう。
今や、ネット上などの文字を使ったコミュニケーションにおいて重要なのが「絵文字」です。
絵文字の利点といえば、例えば「明日☕?」(明日お茶行く?)のように、イラストを文字として文章中に配置できること。これにより1文字のスペースで情報が多く伝わります。絵文字はカナ文字が送れるようになった平成前期のポケットベルにも少し採用されました。
ポケベルのカナ変換は2桁の数字ごとに1文字に変換されます。そのため00~99までの100通り。
例えばドコモのセンティーシリーズでは拗音、促音の小さいカナを除くカタカナ46音と濁点、半濁点で48、英文字が大文字だけで26。アラビア数字が10。記号が―#*¥/↑↓!?&()と空白の13種。
ここまでで97を消費しており、残りは3枠だけでしたが、少ない文字数しか送れないポケベルでは重要なので、そこに3つの絵文字が入りました。それが電話番号や電話することを意味する☎、時間を示す⌚、そして♥だったのです。
しかしドコモはネクストサービスに移行した際、♥を削除しました。それにより、顧客が競合のテレメッセージ系列に大量流出。つまり、当時の♥はユーザーが感情を伝える手段として多用されており、キャリアを移動するほどの重要事項だったのです。これは、後に〝ドコモのハートマーク事件〟と呼ばれました。
それもあって、ドコモのiモードでは、小さい画面に多くの情報を表示させるため、多様な絵文字を搭載することがひとつの開発テーマになっていました。ここで、ハートマーク事件の反省が生かされ、なんと初期176種の絵文字のうち5種ものハートが用意され、その後も増えていったのです。
今では「Emoji」として国際的に通じる言葉となり、ニューヨーク近代美術館にも収蔵された絵文字。日本語が国際語になっているとおり、日本で発展した文化。そこには意外なドラマがあったのです。
1981年生まれ、広島県出身、埼玉県加須市育ち。平成が終わる前に「平成レトロ」を提唱し、『マツコの知らない世界』ほかメディア出演多数。著書に『平成レトロの世界』『ファンシー絵みやげ大百科』がある。