連載【日本シュウマイ協会会長・シュウマイ潤の『みんなが知らない、シュウマイの実力』】第5回
中華料理店はもちろん、和食、洋食、居酒屋などでも、シュウマイがある店はほぼ間違いなく飲食店として名店。前編で紹介した「中華料理店」に続き、今回はそれ以外のジャンルの名店をシュウマイ研究家のシュウマイ潤が解説します。
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シュウマイあるところに、名店あり――それは、前編で配信した中華料理店以外にも当てはまります。
そもそも、中華料理店以外にシュウマイがあること自体が珍しいわけですが、ここ数年は「シュウマイ酒場」スタイルの飲食店が増えており、そのなかの名店については、第3回のコラムでも触れました。
ですが、「シュウマイ酒場」でなくても、シュウマイがメニューにある名店酒場は存在します。
日本の酒場の基本は居酒屋。その多くは和食を中心に構成されており、中華料理があっても炒め物。あとはシュウマイの兄弟分(?)である焼き餃子で、調理の中心は「焼く」「揚げる」に集約されています。
シュウマイを出す店はごく少数で、それでもあえてメニューに入れるということは、シュウマイを出したいという強い思いと、味に自信がある証拠です。
その良例のひとつが、東京・吉祥寺の「いせや」。焼き鳥と大衆酒が気軽に味わえる人気の老舗居酒屋ですが、実はシュウマイが隠れた定番メニュー。大ぶりで肉感があり、皮もしっかりしていて、胡椒が強めな味付けで酒が進みます。
また、東京・早稲田の「源兵衛」もシュウマイを出す代表居酒屋のひとつです。
和の居酒屋に対して、洋の要素が強い「バル」でも、最近、シュウマイをよく目にします。
これは前出の居酒屋同様に、わざわざシュウマイを調理する環境を作らなければならないのと同時に、ワインなどの洋酒にも合う仕上がりが求められます。ただ、それでもメニューに入れているということは、それが形にできる技術と確信があるからに他なりません。
東京・永福町の「日常酒飯人」は、ナチュラルワインやクラフトビールが豊富に揃う気鋭のバルですが、そこで出されるシュウマイは、ワインやクラフトビールにも合うように肉とスパイスを調和させ、見事な完成度に仕上げられていました。
その細やかな調理のこだわりは、オードブルや他の料理にも表れており、まさに"シュウマイあるところ名店あり"を実感できました。
他の飲食ジャンルでは、とんかつ屋にもこの法則は当てはまります。特に、シュウマイがあるとんかつの名店は、中華料理店と同様に老舗であることが多い傾向です。
そもそも、とんかつ屋には「メンチカツ」という、シュウマイと中身が類似した豚挽肉料理があります。そうしたなかで、あえて「揚げる」のではなく「蒸す」のですから、どちらの調理でもおいしい豚挽肉料理ができるという、店側の強いメッセージとも受け取れます。
我が家の近所にある、千歳船橋の老舗とんかつ屋「とんとん」は地元では知られた名店で、とんかつや豚汁はもちろん、小ぶりの優しい味わいのシュウマイは絶品です。
また、横浜・野毛の「かつ半」も地元に愛される老舗で、素朴な味わいのシュウマイは、他の揚げ物料理を邪魔しない名脇役です。
「おでん」の名店にも、シュウマイを提供する店があります。そのシュウマイにはふたつのタイプがあり、ひとつはいわゆる通常の「蒸しシュウマイ」が、そのままおでんつゆに浸されているもの。もうひとつは、シュウマイをさつま揚げで包んだタイプです。
シュウマイに和風だしは合うのか?と思われるかもしれませんが、それが不思議と融合するんです。ただそれは本来、おでんでは使用されない肉の要素を共存・調和させる高い技術があるからで、だからこそ名店と言えるのかもしれません。
大概の店は、ふたつのタイプのどちらかを出していますが東京・麻布十番の「福島屋」は包んだタイプはだし汁に、そのままのタイプは出汁に入れずにいただく形で提供しています。
と、他にも紹介したい「シュウマイある店」はあるものの、今回はこの辺で。私の嗜好で、今回は酒と和食に偏ってしまいましたので、洋食屋やカフェめしなどの名店を、ぜひ別の機会にご紹介できればと思います。
それまで待てない!という、シュウマイ愛あふれる読者のかたは、ぜひシュウマイの存在をヒントに、名店の開拓を楽しんでみてください!