山下メロやました・めろ
1981年生まれ、広島県出身、埼玉県加須市育ち。平成が終わる前に「平成レトロ」を提唱し、『マツコの知らない世界』ほかメディア出演多数。著書に『平成レトロの世界』『ファンシー絵みやげ大百科』がある。
記憶の扉のドアボーイ・山下メロです。記憶の底に埋没しがちな平成時代の遺産を今週も掘り返していきましょう。
さて、平成時代には昭和のリバイバルブームも起こり、昭和風のデザインが一部で人気となりました。そこで忘れてはならないのがJAバンクのマスコットキャラクターだった「ちょきんぎょ」です。平成8年のキャンペーンで「ちょちくちょきんぎょ」という名前で、がまぐちから始まり人気となりました。
モチーフとなったのは明治時代末期に誕生したブリキの金魚玩具。これは昭和でも販売され続け、懐かしい玩具のイメージでもあるでしょう。本来は、お風呂に浮かべる玩具で、シャワー口のついたじょうろタイプもあります。
また金魚は、中国で幸運と富を招くものとされ、風水で災難を防ぐ力があるとされるなど、貯金や貯蓄において、御利益ある象徴でもありました。
「ちょきんぎょ」グッズは、基本的に一般発売ではなく定期預金や定期積金の契約によってもらえるプレゼントという扱いでした。少し懐かしいブリキ玩具の金魚がモチーフということで昭和リバイバルの流れにも乗り人気となり、次々と新しいキャンペーンアイテムが作られたのです。
初期の「ちょきんぎょ」こそ、赤を基調としてレトロテイストを前面に押し出したデザインが主流でしたが、だんだんと現代風にアップデートされました。
最終的には「ちょきんぎょ」がシルエットになって模様の中になじんだり、赤以外のパステルな色使いのアイテムが増えるなど、パッと見で「ちょきんぎょ」グッズとわからない普段使いしやすいものに変化していったのです。
「パッと見でわからないのなら『ちょきんぎょ』じゃなくてもいいんじゃない?」......となったかどうかはわかりませんが、平成24(2012)年からは後任のJAマスコットキャラクター「ちょリス」に道を譲ることになりました。
平成時代の昭和レトロともいえる「ちょきんぎょ」。家のどこかに眠ってる人は、今こそ探し出して再会しましょう。
1981年生まれ、広島県出身、埼玉県加須市育ち。平成が終わる前に「平成レトロ」を提唱し、『マツコの知らない世界』ほかメディア出演多数。著書に『平成レトロの世界』『ファンシー絵みやげ大百科』がある。