山下メロやました・めろ
1981年生まれ、広島県出身、埼玉県加須市育ち。平成が終わる前に「平成レトロ」を提唱し、『マツコの知らない世界』ほかメディア出演多数。著書に『平成レトロの世界』『ファンシー絵みやげ大百科』がある。
記憶の扉のドアボーイ・山下メロです。記憶の底に埋没しがちな平成時代の遺産を今週も掘り返していきましょう。
さて、今年はパリ五輪もありましたが、甲子園の高校野球大会も重要でした。試合に敗れた球児が泣きながら甲子園球場の土をかき集め持ち帰るのは風物詩となっています。
しかし、新型コロナの影響で2020年は大会が中止となり、全国の高校3年生の野球部員に甲子園の土が入ったキーホルダーが配布されるということもありました。
今回はそんな甲子園球場のキーホルダーなどお土産を紹介します。それは、昭和末期に誕生したファンシー絵みやげキーホルダーです。
ファンシー絵みやげとは昭和末期から平成初期に全国の観光地の土産店や施設の売店で売られていた子供向けの雑貨土産。日本語をローマ字で書き、人や動物を2頭身の漫画タッチで描き、実用的なアイテムにプリントした商品が特徴です。
甲子園のファンシー絵みやげは2頭身のかわいい球児が描かれ、まれに球場が背景に描かれています。球場の売店でなく、周辺に出店する露店や駅前の商店で〝球場非公式〟に販売していた可能性が高いでしょう。
同じく甲子園を本拠地に試合をするプロ野球の阪神タイガース風イラスト入り商品もありますが、こちらは少数派。そもそも、球団公式グッズが充実しており、虎党がお土産として買う需要は少なかったのでしょう。
対する高校野球にも公式グッズはあるのですが、文字だらけのシンプルデザインがほとんどで、全国から応援に訪れる高校生や出場する球児には少し渋すぎました。ゆえにファンシー絵みやげが売れ、多数作られたのでしょう。
当時の高校野球観戦は外野席無料で、ほかの席も格安でお金もかかりませんでした。「じゃあ、せめてグッズでも」と家族連れが子供に買い与えたり、家で待つ子供に土産として買って帰ったりするのにも適していたのです。
この夏、甲子園の土じゃない土産のキーホルダーなどを「実家ディグ」で文字どおり「発掘」してみましょう。
1981年生まれ、広島県出身、埼玉県加須市育ち。平成が終わる前に「平成レトロ」を提唱し、『マツコの知らない世界』ほかメディア出演多数。著書に『平成レトロの世界』『ファンシー絵みやげ大百科』がある。