ほぼ毎日シュウマイを食べ続け、日本シュウマイ協会を作るに至ったシュウマイ潤氏 ほぼ毎日シュウマイを食べ続け、日本シュウマイ協会を作るに至ったシュウマイ潤氏

連載【日本シュウマイ協会会長・シュウマイ潤の『みんなが知らない、シュウマイの実力』】第9回

宇都宮、浜松、宮崎が"餃子日本一"を競っているが、シュウマイは横浜が一強。しかし、それに迫る地域がないわけではない! シュウマイ研究家のシュウマイ潤が注目のエリアを紹介します。

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シュウマイより餃子がメディアに出る機会が多い理由のひとつに、「餃子日本一エリア論争」があります。

この論争の主役となる、餃子の街として知られる栃木県宇都宮市、静岡県浜松市は、「家計調査二人以上の世帯 品目別都道府県庁所在地及び政令指定都市ランキング」(総務省統計局)の餃子消費量1位、2位を常に争っているからです。

近年、その論争に宮崎県宮崎市が加わりましたが、まさにそのランキングで宇都宮市、浜松市を上回りました。

一般的に争いはないに越したことはないですが、スポーツなど一定のルールのもとで特定の個人や団体を傷つけない争いは、人の興味関心を集め、それを見越してメディア等で取り上げられます。

一方で、シュウマイもランキング項目自体は存在しているのですが、餃子との最大の違いは、横浜が絶対王者であること。私が統計を確認する限り、常に1位が横浜市です。しかもその数値は圧倒的で、2021~2023年平均ランキングでは、全国平均のシュウマイ年間消費額が1093円に対し、1位の横浜市は2428円。倍以上の差があるのです。

ちなみに2位は川崎市で1813円。3位は相模原市で1589円。トップ3がすべて神奈川県......。県民のシュウマイ好きは、数字でも証明されているのです。

争いがないシュウマイは平和主義であり、それはそれで良いことなのですが......メディア等で取り上げられ、注目を集めるきっかけを逸しているとも言えます。

では、横浜神奈川以外の聖地はないかというと、そんなことはありません。現地を食べ歩いた研究家目線で、"ポスト横浜"になりうる注目エリアをご紹介します。

①東京都渋谷区

おそらく、シュウマイ提供店の数では、東京が他県を圧倒しています。そしてその中でも、比較的老舗中華が多いエリア、町中華が多いエリア、新たなシュウマイ店が多いエリア......と、それぞれ特徴が見られますが、こうした要素がバランスよく集結した、新旧のシュウマイの魅力が詰まったエリアが渋谷なのです。

渋谷駅周辺では、老舗町中華の「兆楽」や、ちゃんぽんや皿うどんなど長崎料理の老舗店「長崎飯店」などがあり、表参道エリアでは「蓬莱」や「だるま」などの昔ながらの中華料理店で、そこでしか食べられない昔ながらのシュウマイを味わうことができます。

シュウマイは横浜だけにあらず! その別エリアの代表格のひとつが渋谷。写真はウーロンハイと焼売の店「kamera」 シュウマイは横浜だけにあらず! その別エリアの代表格のひとつが渋谷。写真はウーロンハイと焼売の店「kamera」

渋谷は昨今のシュウマイのニュースタイルが本格的に始まった場所。写真は焼売酒場 小川 渋谷は昨今のシュウマイのニュースタイルが本格的に始まった場所。写真は焼売酒場 小川

一方で、従来の中華料理の枠にとらわれない、ニュースタイル「第七世代」シュウマイ店が多いのも渋谷の特徴。前回配信した「シュウマイ酒場が増えている理由は?」でも紹介した、「kamera」と「焼売酒場 小川」はどちらも渋谷にあり、他にも中目黒から生まれた「焼売酒場なかめ」の姉妹店「焼売酒場道玄坂」をはじめ、"シュウマイ飲み"ができる酒場が続々と出現。渋谷グルメの新たな選択肢のひとつになりつつあります。

②大阪府大阪市

横浜一強の影響から関東の印象が強いシュウマイですが、関西にも独自文化があり、特に大阪の中心地である難波、本町、天満エリアなどは、実はシュウマイの名店がひしめくエリアです。

老舗系で言えば、関西方面のお土産の定番のひとつ「551蓬莱」のシュウマイ。豚まん(東京でいう肉まん)が代表的ですが、実は毎日同じぐらいの数のシュウマイが製造販売され、地元大阪でも豚まん派とシュウマイ派に分かれるそうです。

基本の肉シュウマイは、大振りジューシー系ながら価格もリーズナブル。豚まんしか食べたことのないの方は、ぜひ味わって欲しいです。

もうひとつは難波の「一芳亭」。地元では、551よりもこちらを大阪を代表するソウルシュウマイと推す声が多い印象です。

特徴は豚とエビ、玉ねぎが練り込まれた具材が薄皮卵で包まれ、その優しい甘さと旨味のコントラストは、中華の王道シュウマイとも違う、幸せな気持ちにしてくれます。ちなみに、私はこれを「幸せの黄色いシュウマイ」と呼んでいます。

大阪の「第七世代」代表格のひとつ、「大阪焼売珍」の季節限定の「枝豆焼売」 大阪の「第七世代」代表格のひとつ、「大阪焼売珍」の季節限定の「枝豆焼売」

一方、前出の渋谷「第七世代」のようなニュースタイルも続々登場。「焼売酒場なかめ」のように多店舗展開する「だるま焼売」のほか、難波の「大阪焼売珍」、天満の「シュウマイ天国」が誕生。しかもシュウマイ自体の質も高く、個性もある、非常に楽しみなエリアです。

③栃木県鹿沼市

横浜はもちろん、渋谷や大阪と違い、鹿沼市はシュウマイを町おこしの食材として取り上げた、全国的にも珍しいエリアです。

崎陽軒の初代社長の出身地が鹿沼市であることをきっかけに、崎陽軒のバックアップのもと、シュウマイで町おこしを開始。2021年9月、JR鹿沼駅前に「シウマイ像」が完成したことを皮切りに、市内の飲食店やスーパーなどでオリジナルシュウマイを開発。現在60店舗以上でシュウマイが提供され、今でも増加中のようです。

崎陽軒のサポートの元、シュウマイで町おこしを行う栃木県鹿沼市。写真は、そのパイオニア的存在の「笑福シウマイ」 崎陽軒のサポートの元、シュウマイで町おこしを行う栃木県鹿沼市。写真は、そのパイオニア的存在の「笑福シウマイ」

JR鹿沼駅前には「シウマイ像」が。シュウマイに見えない? JR鹿沼駅前には「シウマイ像」が。シュウマイに見えない?

ちなみに、餃子の町・宇都宮市に隣接していることから、「シウマイ餃子ライン」というバスも運行。餃子ファンをも取り込む意気込みは、ある意味、自己主張が苦手?なシュウマイらしからぬアグレッシブさで、横浜と肩を並べるシュウマイのまちになりうる可能性があると、個人的に期待しています。

と、今回は3箇所を紹介しましたが、他にも"ポスト横浜"となりうるポテンシャルを持つエリアはあります。それはまた、別の機会に。

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