レトロ遺産を掘り返す山下メロ氏 レトロ遺産を掘り返す山下メロ氏

記憶の扉のドアボーイ・山下メロです。記憶の底に埋没しがちな平成時代の遺産を今週も掘り返していきましょう。

さて、以前LDのレーザーカラオケを紹介しました。LDと覇権を争ったVHDとともに業務用だけでなく家庭用のカラオケシステムも販売されていましたが、何しろ価格とサイズがあまり現実的ではありませんでした。

そんな中、平成になって画期的なカラオケマシンが発売されます。それが平成元年にエプソンが発売した「マメカラ(mamekara)」です。

マメカラは銀や白に加え、ソニーのSONY SPORTSシリーズ風の黄色と黒のデザインも マメカラは銀や白に加え、ソニーのSONY SPORTSシリーズ風の黄色と黒のデザインも

まず、家庭ではレーザーカラオケのような大型システムを導入するのは難しく、8トラやカセットテープという小型メディアが中心でした。カラオケを楽しむには、手本になるガイドメロディや歌と、演奏との音量を調整できる「音声多重」に対応したテープ音源と、対応する再生機が必要です。

そしてアンプとスピーカーにマイク。映像メディアの場合は歌詞を表示するブラウン管モニターも必要で、家庭では歌詞や楽譜の本を見ながら歌うのが定番でした。

サックス型 サックス型

再生機とアンプ、スピーカーが一体型になった家庭用カラオケ機器はありましたが、マイクは手に持って動かすためにケーブルでつながっています。

音量を犠牲にしていくら小型化しようにも、必ず足元のカラオケ機器と手元のマイクとなるのですが、それを強引に手元に集約してしまった画期的な発明がマメカラでした。

マイクに音声多重カセット再生機とスピーカーを合体させて手で持てるようにしてしまったのです。しかも電池駆動ですから、家庭用カラオケ機器で必須だった電源からも解放されました。

ペンギンぬいぐるみ付きなど他社の変わり種は、ミキハウスやMy First Sonyのような色使い ペンギンぬいぐるみ付きなど他社の変わり種は、ミキハウスやMy First Sonyのような色使い

特にマメカラが活躍したのは、お花見などのアウトドア、そして観光バスの中など。カラオケ機器を備えていなくても、どこでもカラオケができるのです。スピーカーのサイズによる音量の限界や、片手で持つにはやや重いなどの弱点がありつつも大ヒットし、他社から類似商品もたくさん発売されました。

カセットブームが再来している今、マメカラ片手に紅葉狩りなどいかがでしょうか。

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山下メロ

山下メロやました・めろ

1981年生まれ、広島県出身、埼玉県加須市育ち。平成が終わる前に「平成レトロ」を提唱し、『マツコの知らない世界』ほかメディア出演多数。著書に『平成レトロの世界』『ファンシー絵みやげ大百科』がある。

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