メンズヘルスクリニック東京で診察を行なう「男性妊活」の専門家で、順天堂大学医学部付属浦安病院泌尿器科の先任准教授の辻村晃先生

「同棲していて、避妊しなかったこともしょっちゅうあったのですが、一度も子供ができたことがない。俺、タネなしなんですかね…」

そう話すのは、ある30代男性。将来、子供が欲しいと思っているので、そろそろ検査にいこうか、でももし自分の体に問題があるとしたら立ち直れない気もすると躊躇(ちゅうちょ)…。同じ思いをしている人も少なくないのではないか?

最近では、不妊の原因が男性側にもあるというのは知られてきている。1998年に世界保健機関(WHO)が調査したところでは「女性に原因」が41%、「不明」が11%で「男性に原因」が24%、「男女ともに原因」が24%と、実に50%近くが男性側の原因だというのだ。

卵子は加齢とともに質、量ともに低下し、妊娠しづらくなることが広く知られているが、精子はどうなのか? そして問題がある男性はどうすれば?

そこで、男性のブライダルチェックが受けられるメンズヘルスクリニック東京で診察を行なう「男性妊活」の専門家で、順天堂大学医学部付属浦安病院泌尿器科の先任准教授の辻村晃先生に話を聞いた。

辻村先生は来院した男性にはまず精液の検査と問診を行なうという。

「最初に患者さんに聞くのは『あなたの睾丸は小さくないですか?』ということ。睾丸の大きさはとても重要で、逆にペニスの大きさはあまり関係がありません。ペニスが小さくても生殖能力のある場合はいくらでもあります。

睾丸は大きいほうが一般的に精子の数は多く、運動性などの状態もいいと考えられています。また柔らかいより、しっかりと硬いほうが精子数は多いです」

だが、患者は自分の大きさが他の人より小さいかどうか、わからないケースがほとんど。中には「小豆サイズの人もいる」(辻村先生)というが、睾丸の小ささを自覚できる人は少ないという。

そこで先生が見せてくれたのは睾丸の模型。大小様々の卵型の見本が並んでいる。大きいほうからふたつ目くらいまでのサイズが理想的だが、4つ目くらいまででも生殖能力は十分。それ以下になると、精細胞があまり作られていない可能性が高くなっていくという。

テストステロンと精子の関係とは

「袋、つまり陰嚢(いんのう)としてはある程度の大きさがあっても副睾丸や精管、血管もあるので睾丸そのものは小さいというケースもあります」(辻村先生)

睾丸にはふたつの働きがある。ひとつはテストステロンという男性ホルモンをつくること。もうひとつは精子をつくることだ。

テストステロンは男らしさの源であり、男性ホルモンの95%を占める。精子は精細胞が、テストステロンはライディヒ細胞がつくっているが、

「普通に考えると、睾丸が精子をつくる機能だけすごく悪くて、男性ホルモンをつくる機能だけ非常に優れているというアンバランスなことはありません。テストステロンの値が高いことと精子の数や質が高いこととは、全く一致しているとはいえませんが、結果的に関係があるといえる」と辻村先生は語る。

それならば、テストステロンをたくさん投与すれば、いい精子をつくりだすことができる? …だが、実はこれは不正解。

「テストステロンは注射や塗り薬で投与することができますが、長期間投与を続けると睾丸は委縮してしまいます。なぜなら自分自身でつくる必要がないと体が判断し、睾丸全体が働きをやめてしまうから。つまり精細胞の分化も低下し、精子もつくられなくなってしまうのです」(辻村先生)

医者でさえ、投与すればよいと間違えて考える人も多いそう…。だが、テストステロンと精子の関係はそう単純なものではないのだ。

●この後編は明日配信予定。妊娠させる力をチェックし、精子を元気にする10ヵ条とは?

(写真/永澤真奈、取材・文/栗秋あや)

■辻村 晃(つじむら・あきら)順天堂大学医学部附属浦安病院 泌尿器科 先任准教授メンズヘルスクリニック東京 男性更年期専門外来、男性妊活外来担当。兵庫医科大学卒業。国立病院機構大阪医療センター勤務後、ニューヨーク大学に留学し細胞生物学臨床研究員を務める。大阪大学医学部泌尿器科准教授などを経て、順天堂大学医学部泌尿器科学講座先任准教授。特に生殖医学、性機能障害の治療に注力し、不妊に悩む数多くの夫婦を助ける。日本泌尿器科学会専門医・指導医、日本生殖医学会生殖医療指導医でもある