志位委員長との面談が叶ったちきりん氏。ブログ『Chikirinの日記』では、05年10月に「日本共産党綱領」、11月に「共産“趣味”」、08年8月には「よど号メンバー9名の記録」という記事を書いている

昨年末の選挙で大躍進を遂げた共産党

でも、これから国会で存在感を示せるのか? 建設的な提案はできる? 志位和夫委員長は何を考えているのかを共産主義フリークの社会派ブロガー・ちきりんさんに突っ込んでもらった。

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―ちきりんさんは、バブル全盛期に証券会社で働き、その後アメリカに留学してMBAを取得。長く外資系企業で働くなど、「グローバル資本主義の先兵」のような経歴です。

しかし、10年前から共産党の綱領(こうりょう)をブログで取り上げ、「今、一番飲みに行きたいのは志位委員長!」と公言するなど、これまでも熱い視線を向けてきました。

そこで、昨年の総選挙では18年ぶりに衆議院で議席を増やし、勢いに乗る共産党のトップ、志位さんへ、その人となりや政策について突っ込んでいただけたらと思います。

ちきりん 私は必ずしも共産党の主義主張に共感しているわけではないんですが、ずっとスゴク面白い政党だなと思っていたんです。

志位 ありがとうございます。

ちきりん というのも、共産主義の党なのに、ほかの党よりマーケティングがうまいんですよね。特に「たしかな野党」というコピーには感心しました。与党になりたくて離合集散を繰り返す、ほかの野党への皮肉が利いていて素晴らしい。

「戦前から戦争に反対してきた唯一の党」も、共産主義の色を消し、反戦を前面に出したうまいコピーです。ほかの政党のように広告代理店に依頼して作ってるんですか?

党名を変えていたら現在の躍進はなかった

志位 キャッチフレーズや政見放送の制作など、全部自前でやってるんですよ。

ちきりん 全部党内で? それはすごい。あと、党名を変えなかったのも賢い判断ですよね。「IBJ=日本興業銀行」という、歴史もあり海外でも通用していた名前の価値が理解できず、「みずほ銀行」なんてアホな行名に変えてしまった民間企業より、共産党のほうがよほどブランドの価値を理解しています。旧ソ連の崩壊時など、党名を変更すべきという議論もあったんですか?

志位 ないですね。党をつくって93年。戦前の非合法だった時代からの歴史がギュッと詰まった党名ですから。資本主義は人類最後の体制ではない、私たちはもっと先へ行けるんだと、そういう理想を体現している名前ですしね。

ちきりん 最終的に目指しているのは、やはり共産主義的な社会なんですか?

志位 そうですね。ただ、旧ソ連みたいに国民を抑圧したり他国を侵略するような社会は断固として拒否します。けれども、私たちの理想とする社会を体現した党名ですから。

ちきりん 最近、ワケのわからない名前の党ができましたが、もし共産党が党名を変えていたら現在の躍進はなかったと思います。ソ連の崩壊と二大政党制の流れで「共産党はもう終わり」といわれた時期もあったのに、2004年に党の基本方針である「綱領」を変え、「庶民を守る党」というポジションにうまく転換されました。

私はこれを「二段階革命論(*)」を援用した巧(たく)みな立ち位置のシフトだったと思いますが、マーケティング的に百点満点の成功事例だと思います。

*二段階革命論とは、【封建主義社会→ひとつ目の革命→人民中心の資本主義→ふたつ目の革命→共産主義】という二段階の革命を経て、共産主義を実現しようという思想のこと

志位 初めて聞きました。党名を変えないことをこんな褒(ほ)められたことはなかったので、困ったな(苦笑)。恐縮です。

共産or公明、ピケティ支持層を取り込むのは?

ちきりん で、ここでうまく利用すれば、さらに大きなチャンスになるのがトマ・ピケティ教授の『21世紀の資本』(みすず書房)だと思うんです。

昨年末に邦訳出版され、6000円近くする本が13万部も発行されて、ちょっとした社会現象になってます。政策的な格差是正が不可欠というピケティ氏の主張に同調する人を、共産党と公明党のどちらが取り込むか。これは今後の党勢に大きく影響してくると思うんですけど。

志位 ピケティさんの本はまだ読めていないんです。ただ、格差拡大は世界でも日本でも大問題です。12月に出たOECD(経済協力開発機構)の『格差と成長』というリポートがありますよね。格差拡大は各国の経済成長を損なっているという。

ちきりん トリクルダウンは起きないという話ですね。

志位 ええ。大企業が儲(もう)かれば、いずれは庶民に回ってくると安倍さんは主張していますが、そんなことは起きなかったし、これからもない。実質賃金は17ヵ月連続のマイナスで、消費はますます冷え込んでいる。

2014年度の実質GDPはマイナス0.5%になるだろうと政府も認めていますよね。アベノミクスは大失敗です。

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(撮影/高橋定敬)

●志位和夫(しい・かずお)1954 年生まれ、千葉県出身。1979年、東京大学工学部物理工学科卒業、日本共産党東京都委員会に就職し青年学生運動を担当。1990年に書記局長に就任、1993 年の衆議院選挙に出馬し初当選。2000年に日本共産党委員長に就任。著書に『戦争か平和か 歴史の岐路と日本共産党』、『綱領教室』全3巻(ともに新日本出版社)などがある。公式HP【http://www.shii.gr.jp/】

●ちきりん関西出身。バブル期に証券会社に就職。アメリカの大学院で経営学を学び、外資系企業に転職。2010年末に退職した後は、文筆活動に専念している。2005年に開始したブログは、匿名にもかかわらず異例の月間200万PVを誇り、『多眼思考』(大和書房)、『「自分メディア」はこう作る!』(文藝春秋)など著書も多数。ブログ『Chikirinの日記』【http://d.hatena.ne.jp/Chikirin/】