「辺野古埋め立ては沖縄の誰とも合意していない！」鈴木宗男氏（左）と佐藤優氏が沖縄の問題に迫る！
鈴木宗男・新党大地代表と、元外務省主任分析官で作家の佐藤優氏による対談講演会「東京大地塾」。
今回のテーマは緊迫が続く中東情勢、特にイランとサウジアラビアによる核拡散の危険性。そして沖縄の辺野古移設問題だ。
訪米を前に翁長沖縄県知事と会談した安倍首相だが、結果は平行線で解決とは程遠い。このままいけば国と沖縄による、さらに大きな激突は避けられない！
（前編記事⇒「中東ばかりか韓国にも核武装の可能性が？」）
■辺野古埋め立ては沖縄の誰とも合意していない
佐藤 で、イラン問題がこんな事態になっている中で、日本は沖縄の問題が非常に先鋭化しています。
４月１日付で外務省は又吉進という前の沖縄県知事公室長を参与に任命しました。外務省参与って結構重い立場で、有力国の大使経験者がやるほどのポストなんです。先生、地方公務員が外務省参与になるというのは前代未聞ですが、かつてありましたか？
鈴木 ないですね。
佐藤 その又吉さんは、一昨年１２月２６日に仲井眞前知事が辺野古沖の埋め立てを承認するまでは、反対派の中心に立ってアメリカにロビー活動していた。そういう人を引き抜いて、官邸や外務省は翁長知事がアメリカでロビー活動するのを全部潰（つぶ）そうとか、県庁の中で誰が翁長さんに最後まで忠誠を誓いそうかとか、誰が反旗を翻しそうかとか、課長以上を全部チェックしようとしているわけです。
外務省、官邸が又吉さんを引き抜いて、こんなことをやる意思を鮮明にしたわけだから、沖縄としては対抗措置を取らないといけない。
今後、中央政府は地方交付税交付金を受けてる県に対して「国の政策と異なるところに日本国全体から集めた税金を使うのはどうなのか」と、おそらくこういう論点から攻めてくる。それに対抗するために東京都が尖閣諸島を買う話が出た時に募金をしたのに倣（なら）って作ったのが、４月９日に記者発表した「辺野古基金」です。
今の沖縄の問題は官邸が仕掛けたこと
東京都が沖縄に属する尖閣諸島を買うために金を集めることができるのなら、沖縄が自分たちの意思を表明するために金を集めることはなんの問題もない。しかも民間の人たちが趣旨を明確にして集めて、県に渡してきちんと基金化する。こういう形で動いていってるとはどういうことか。これは沖縄県はもう後ろには退かないっていうことです。
辺野古がいやだったら普天間固定化を望むんですか、という話が出てくるけれども、これ自体、翁長さんも言ってるように政治の堕落を示すものです。沖縄の基地は原発と違いますから。一度も民意の承認を得てやったことはないわけです。
それから１９９７年、市長職を辞任することと引き換えに、普天間飛行場の辺野古移設を容認した当時の名護市長だった比嘉鉄也さん、その後を受けて市長になった岸本建男さん、あるいは稲嶺恵一知事が了解した頃の普天間基地の移設先は、辺野古沿岸を埋め立てたＶ字滑走路じゃありませんから。この移設容認は鈴木先生のやられた仕事ですが、当時の合意事項はキャンプ・シュワブの滑走路を伸ばし、しかもそれは１５年以内に返すっていうことだったんです。
それが今や、辺野古沖を埋め立てて、Ｖ字滑走路を造って、航空母艦も着岸できる基地を造るという。こんな発想は稲嶺知事も岸本市長も誰も合意してないんです。これを強行しようっていうのはどだい無理な話です。
繰り返して言いますけど、今の沖縄の問題は官邸が仕掛けたこと。又吉氏を引き抜くことをしなければ、事態はここまでは悪化しなかった。沖縄の緊張はこれから相当高くなっていくし、おそらく今の安倍政権は力で押し切る方向でいくでしょう。そうすると力比べ、ガマン比べみたいなことになる。
同時に国際情勢、特に中東が急速に悪化していく中で、今の政権が外務省含めて情勢を正確に把握し、的確な政策を取れるのか。このあたりの基礎体力が問われる状況だと思います。事態は非常に悪くなっています。私からは以上です。
鳩山さんの「海外、最低でも県外」は間違ってなかった
鈴木 はい、佐藤さんから貴重なお話をいただきました。佐藤さんが言ってる通り、翁長さんはしっかりと沖縄県の民意、声を主張すれば、ますます求心力は高まります。
私は沖縄の団結力を軽く見ちゃいけないと思いますね。キャンプ・シュワブ前で反対活動してるのも、みんな純粋に自分の意思でやっている。この重みを中央政府はもっともっと考えないといけません。
佐藤 しかしこれ、いつからこんな話になってしまったんですかね。民主党政権の時はここまで無神経じゃなかったと思うんですけど。
鈴木 民主党政権といえば、鳩山由紀夫さんが「海外、最低でも県外」と言ったのは間違ってなかったんですよ。私は鳩山さんをかばうわけじゃないですが、鳩山さんは去年、沖縄で行なわれたフォーラムで正直に言いました。
「外務省、防衛省にも辺野古以外の移転先を探すように指示したけれども役人が動かなかった。当時の岡田外務大臣、北澤防衛大臣らも結局は役人の言いなりになってどうにもならなかったし、誰も自分に協力してくれるものがいなくなって、最後はああいう形になって申し訳なかった」と沖縄の皆さん方の前で言ったんですよ。
そしたら、同席してた野中広務先生がこう言いました。
「鳩山さん、そうだったのか。私は今まであなたのことをいい加減なやつだと批判してきたけれども、今までの批判はすべて取り消しておわび申し上げる」と言って、鳩山さんに向かって頭下げましたね。
残念だったのは、私が鳩山さんにオバマ大統領との会談の時、「辺野古移転は自民党政権と共和党政権で決めた話。日本も政権交代した、アメリカも交代した。だから１年間、時間を貸してくれ。必ず沖縄の納得の得られるいい解決策を考えるからって言いなさい」と伝えたんです。
鳩山さんは「わかった」と言っていたけれども、なぜかそれをオバマさんにきちっと言わなかった。これはちょっと残念だったなと思ってますね。
（撮影／五十嵐和博）
●鈴木宗男（すずき・むねお） １９４８年生まれ、北海道出身。新党大地代表。２００２年に国策捜査で逮捕・起訴、２０１０年に収監される。現在は２０１７年４月公民権停止満了後の立候補、議員復活に向け、全国行脚中！
●佐藤優（さとう・まさる） １９６０年生まれ、埼玉県出身。外務省時代に鈴木宗男氏と知り合い、鈴木氏同様、国策捜査で逮捕・起訴される。外務省退職後は大宅壮一ノンフィクション賞を受賞するなど、作家・評論家として活躍
■「東京大地塾」とは？ 毎月１回、衆議院第二議員会館の会議室を使って行なわれる新党大地主催の国政・国際情勢等の分析・講演会。鈴木・佐藤両氏の鋭い解説が無料で聞けるとあって、毎回１００人ほどの人が集まる大盛況ぶりを見せる。次回の開催は５月２８日（木）。詳しくは新党大地のホームページへ