トランプ就任演説の隠されたメッセージとは? 鈴木宗男氏(左)と佐藤優氏が解説する!

鈴木宗男・新党大地代表と、元外務省主任分析官で作家の佐藤優氏による対談講演会「東京大地塾」

今回のテーマは、新大統領トランプ。メキシコ国境での壁建設や核戦力の増強の宣言など、就任早々、強大な権力を行使しているが、彼がそもそも過激な行動・発言を繰り返す理由はなんなのか? 

就任演説で引用した旧約聖書のフレーズに、そのヒントはあった!

* * *

鈴木 今日はですね、佐藤さんから、1月20日に就任したトランプ米大統領の分析をお願いしたいと思います。

佐藤 まず就任演説で、私が一番気になった部分について、NHKから引用します。

「私たちは古い同盟関係を強化し、新しい同盟を作ります。そして文明社会を結束させ、過激なイスラムのテロを地球から完全に根絶します。

私たちの政治の根本にあるのは、アメリカに対する完全な忠誠心です。そして、国への忠誠心を通して、私たちはお互いに対する誠実さを再発見することになります。

もし、愛国心に心を聞けば、偏見が生まれる余地はありません。聖書は【神の民が団結して、生きていけることができたら、どれほど素晴らしいことでしょうか】と私たちに伝えています」

この【 】部分は旧約聖書の『詩編』の133編の一節を引用したものなんです。この133編の詩は、聞く人が聞けば何を意味しているかがわかる。それはイスラエル中心主義です。

詩編133編のトランプが引用した部分から後はこう続きます。以下、聖書の日本語訳から引用です。

「香しい油が頭に注がれ、衣の襟に垂れるアロンの髭に滴り、ヘルモンにおく露のようにシオンの山々に滴り落ちる」

油を頭に注ぐというのは、王様になるということ。シオンというのは、イスラエルのこと。要するに、ユダヤ教徒とキリスト教徒が信じるヤハウェの神に基づく世界支配は、イスラエルから広められると言っているんです。

そしてここで重要なのは、トランプが、キリスト教徒のみが聖典としている新約聖書からではなく、キリスト教徒とユダヤ教徒の両者が聖典とする旧約聖書からあえて引用したという点です。

そうすることによって彼は、イスラエルと全世界のユダヤ人に「私はあなたたちと価値観を共有しています。私はユダヤ人の味方です」とメッセージを送っている。

つまり、トランプ政権の外交は、親イスラエル政策を基調とし、イスラエルと組んでイスラム過激派を根絶するというものになるんです。

『週刊プレイボーイ』8号(2月6日発売)「東京大地塾レポート(26)」より

★続編⇒強権派のトランプを突き動かすものとは? 信仰する宗教から読み解く“選ばれし者”の意識

●鈴木宗男(すずき・むねお)1948年生まれ、北海道出身。新党大地代表。衆議院議員時代から長年北方領土問題の解決を目指し奔走している。現在は今年4月の公民権停止満了後の立候補、議員復活に向け、全国行脚中!

●佐藤優(さとう・まさる)1960年生まれ、東京都出身。外交官時代は、主任分析官として対ロシア外交の最前線で活躍。外務省退職後は大宅壮一ノンフィクション賞を受賞するなど、作家・評論家として活動中

■「東京大地塾」とは?毎月1回、衆議院第二議員会館の会議室を使って行なわれる新党大地主催の国政・国際情勢などの分析・講演会。鈴木・佐藤両氏の鋭い解説が無料で聞けるとあって、毎回100人ほどの人が集まる大盛況ぶりを見せる。次回の開催は2月23日(木)。詳しくは新党大地のホームページへ

(取材・文/小峯隆生 撮影/五十嵐和博)